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【映画本】もぎりよ今夜もありがとう

ごきげんよう。雨宮はなです。
一日中雨だとわかっていると、元気よく前向きにひきこもることを決めて楽しんでしまう癖があります。映画を観て過ごすのはもちろん素敵なのですが、雨の音の中で静かに読書をするのもオススメです。

今回私が紹介する書籍は「もぎりよ今夜もありがとう」です。

知って、

何を観に行った時だったかは覚えていませんが、キネカ大森の売店で見かけたのです。
石原裕次郎主演映画と同名の楽曲『夜霧よ今夜も有難う』にちなんだネーミングに「へえ、洒落てるなあ」と思い、ついつい見本に手を伸ばし、目次と最初の文章をだーっと読み終わるころにはこの面白い本を絶対に入手するぞと決めたのでした(ちなみに本を読むまで曲名でしかないと思ってた、まさか映画だったとは)。

なぜその場で買わなかったのかって?それは結構な雨が降っていたからです。映画を観に外出する元気はあっても、下手したら雨で本をダメにしてしまうかもしれない可能性のある日に購入する勇気はありませんでした。

読んで、

本の題名と同じように様々な映画作品の名前をもじりながら、作品をなぞらえながら映画館を軸にエピソードトークが繰り広げられる…そんなエッセイは読んでいるとその光景が映像になって脳内に流れ込んでくる、まるで文字化した映画作品のようでした。
ただ、ほっこりエピソードばかりが並ぶわけでもなかったのが印象的です。

私が衝撃を受けたのは「女性が映画館でひとりで鑑賞するのは危険だった」という記載でした。ピンク映画の劇場でもないのに、まさかそんなと驚きました。ですが、この本を読んでしばらく経ち、そんな話も忘れたころに思い出さざるを得ない出来事が起こりました。

それこそ、キネカ大森で映画観賞をしていたときのことです。法律と人種差別を扱った作品だったため、私はメモを取りながら鑑賞していました。すると、空席の向こうから体を伸ばしてきた中年男性に腕を触られ「うるさいよ」と言われ睨みつけられたのです。
隣にいた友人に終演後「さっき何があったの」と聞かれたので話すと、「それ、触る必要あった?」「難癖つけて触りたかっただけ」と、自分では全く思いつかなかった指摘がなされたのです。「隣にいた自分がうるさいと思わなかった、音なんて全然立ってない」と。

確かにモヤモヤしていたので、友人からの指摘はそれを解消する材料になりました。ただ、考えすぎだったとしても、見当違いだったとしても「女性がひとりで劇場鑑賞するのは危険なのかもしれない」と思ってしまう体験をしたことが衝撃的でした。

楽しんで

もともとは雑誌での連載記事であるため、ひとつひとつのエピソードは短く、ただ読むだけならそんなに時間をかけずに読むことができます。電車の中でも読みやすいです。
ただそんな文章をじっくり味わって読もうとすると、不思議なことにいつまでも楽しむことができる不思議な力があります。

エピソードが面白いのはもちろん、もじられた(紹介された?)映画作品との出会いも嬉しいです。選ぶ基準があるのかはわかりませんが、国内外問わず様々な映画作品が紹介されているので今後の楽しみが一挙に増えます。

私はこの本で出合った作品のうち、まだ『おくりびと』しか観ていませんが、もともと気になっていた作品たちがいくらかいたのでそれを優先し鑑賞するつもりです。ちなみに『夜霧よ今夜も有難う』はまだ観ていません。何よりも優先すべき作品なのに。

紙にしっとりと馴染むような言葉が並び、その様子はまるで老舗シアターの古くとも上質な布地を張られた椅子のよう。いつまでも座っていたくなる、そんな一冊をゴールデンウィークのお供にぜひいかがでしょうか。

今回も最後まで読んでくれてありがとうございます。
ではまた次の記事で。ごきげんよう。

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