華厳の滝【怪奇なミステリーゾーン】


 華厳の滝は風光明媚な景勝地として知られていますが、この滝には裏の顔があります。それは自殺の名所という顔です。
 この滝で最初の自殺が起こったのは、明治36年で、藤村操という18歳の青年が滝壺に身を投げました。そして身投げする際 彼は滝が落ちる近くの大木の皮を剥ぎ、そこに黒の墨でもって「厳頭之感」という題の遺書をしたためました。
 以下はその全文。

悠々たる哉天壌
遼々たる哉古今
五尺の小躯を以て此大をはからむとす
ホレーションの哲学ついに何等のオーソリティーを値するものぞ
万有の真相は唯一言にしてつくす
曰く
「不可解」
我この恨を懐て煩悶終に死を決す
既に巌頭に立つに及んで胸中何等の不安あるなし
はじめて知る
大いなる悲観は大いなる楽観に一致するを

 当時、彼の自殺は世間に大きな衝撃を与え、彼の後に続こうとする若者が次々と華厳の滝を訪れたそうです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?