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月に寄せる波

仕事が終わると、真夜中。
やっとつくった自分の時間に、語学をやっていて
何やら綺麗な表現を見つけました。

달이 아름답네요
タリアルンダンネヨ
月が綺麗ですね

これは愛の言葉なのだ、という説明がありました。

昔、夏目漱石がイギリスにいる時、I love you を「月が綺麗ですね」と訳したそう。
そういえばそんな話、いつか聞いたことがあるような。


どうやら都市伝説のようでもあるのですが、
日本では「好きです」「愛してます」という言葉を、おいそれとは使わないものだ、と漱石が言ったとか言わないとか。

一緒に月を見上げ、それが美しいことを告げることで相手に愛情表現をするという、言葉ではなく、そんな表現と心こそが美しい、という説明でした。


夜空に月が見えるかしら、と思って窓を開けると、綺麗な中秋の名月とともに、暗闇に音が聴こえてきました。

家から歩いて1分のところにある海の音。
どどーん、と、波が岸を打つのが響きます。
肩をたたかれ、心をノックされるように感じて、一瞬、逃れるように星を数えてみたり。


そうしてしばらく波の音に酔い、少し肌寒くなって窓を閉めました。
それでもまだ音が耳に届く気がするのは海か、はたまた胸の鼓動か。


「波の音が響きますね」

これがもし愛の言葉になるとしても
こんな時間、誰とも共有できなそうで、ただ私の耳奥に残るだけでしょう。

파도소리가 울리네요
パドソリガ ウルリネヨ


ペンを置いてあくびを一つ。
もう寝ようか。
羊を数えるのを、今夜だけ波音に代えて。

真ん丸い光が、麻のカーテンをすり抜けて
両のまぶたをくすぐる夜。


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