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東海地区・秋の陣

はじめに

プロ野球は6月に開幕し、高校野球も形を変えてではあるが、夏の大会を終えることができた。一方で社会人野球は、9月に都市対抗野球の予選が佳境を迎える。特に東海地区二次予選は、6つの代表権をかけて「日本一複雑なトーナメント」を戦う。

今年も東海地区には、昨年の都市対抗野球の準優勝チーム・トヨタ自動車(豊田市)を筆頭に多士済々のチームとドラフト指名も考えられる腕利きが出揃う。

ドラフト的注目選手

ドラフトの観点で今年の東海地区で最注目なのが、栗林良吏(トヨタ自動車・投手・右投)だ。150キロ近いストレートにカットボール、カーブを織り交ぜる投球で、昨秋の日本選手権では2試合で15回を投げて自責点はゼロと結果を残し、文句なしのドラフト上位候補となっている。

今年は大会の中止が相次ぐ異例のシーズンを送っているが、大一番で力を爆発させると思われる。今年のドラフト戦線は、各選手の力量をNPBの各球団が測りかねている面もあるため、戦力としてある程度計算できる大学生や社会人の選手が指名の中心と予想される。栗林としては、チームを東京ドーム導き、評価を確固たるものにしたい。

栗林以外の注目選手で真っ先に名前を挙げたいのが、同僚の逢澤峻介(トヨタ自動車・外野手・左打)だ。明大時代から走攻守のレベルが高い選手として注目されており、社会人で更に洗練された走攻守を見せることができるかがポイントだ。

他チームだと中野拓夢(三菱自動車岡崎(岡崎市)・遊撃手・左打)が内野手の層が薄いNPB球団の視線を集める。二遊間をこなすユーティリティー性と巧打が評価されれば、指名も十分にある。近年だと、木浪聖也(阪神)や山野辺翔(西武)の立ち位置になってくる。

昨年までのエース・瀧中龍太(楽天)が抜けたHonda鈴鹿の松本竜也(投手・右投)と森田駿哉(投手・左投)の両投手も忘れてはならない存在だ。高卒3年目の松本は中日の上位指名候補の報道もあったが、公式戦の登板が少ないだけに、大一番での投球内容を注視したい。高校時代は圧倒的な存在ではなかったので、社会人の3年での上積みした総合力に期待したい。一方、森田の高校時代は世代屈指の左腕として注目の的だった。法大進学後は故障のため足踏みが続いたが、社会人で高校時代の輝きを取り戻しつつあるだけに、つい期待を抱いてしまう。

激戦区の状況

選手の顔触れだと、栗林と逢澤が所属するトヨタ自動車は一歩抜けている。両選手に加え、ミスター社会人・佐竹功年(投手・右投)ら百戦錬磨の選手が揃う。とはいうものの、簡単に代表になれないのが東海地区の厳しさであり、面白さだ。初戦では東邦ガス(名古屋市)のベテラン・小椋健太(投手・右投)を中心とした投手陣を打ち崩す必要がある。

昨年の第一代表・ヤマハ(浜松市)は、矢幡勇人を筆頭とした野手陣とフェリペ・ナテルら個性派揃いの投手陣を擁しているし、大エースの近藤均(投手・右投)に加えて野手陣の円熟味が増している王子(春日井市)も実力のあるチームだ。

そして、事実上のラストイヤーの三菱重工名古屋(名古屋市)と永和商事ウイング(四日市市)の2チームを忘れてはいけない。いずれも都市対抗での実績もあるチームで、三菱重工名古屋に至っては2018年の日本選手権で優勝したばかりだった。過去には、最後のシーズンで都市対抗を制したチームもあるだけに、両チームの奮闘に期待するとともに、社会情勢に左右される社会人野球の厳しさを痛感する最後の機会にしたい。

おわりに

都市対抗野球の予選は、無観客開催の地区が殆どだ。それだけに、観客を動員して開催予定の東海地区の関係者各位には、最大限の敬意を払いたい。様々な制限はあるだろうが、岡崎に足を運ぶだけの価値はある。体調面や周囲の方を思いやった上で、くれぐれも無理のない範囲で通う方が一人でもいることを願うばかりだ。



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