2020年の中日ドラゴンズのドラフトを考える④

竜の恋人はやはりあの男だった!?

中日は14日に開かれた今年最初のスカウト会議にて、栗林良吏(トヨタ自動車・投手・右投)高橋宏斗(中京大中京・投手・右投)ら12名を1位候補にリストアップした。その顔触れは以下のとおりだ。

高橋宏斗(中京大中京・投手・右投)

中森俊介(明石商・投手・右投)

高田琢登(静岡商・投手・左投)

来田涼斗(明石商・外野手・左打)

早川隆久(早稲田大・投手・左投)

山崎伊織(東海大・投手・右投)

森博人(日本体育大・投手・右投)

牧秀悟(中央大・二塁手・右打)

佐藤輝明(近畿大・三塁手・左打)

元山飛優(東北福祉大・遊撃手・左打)

栗林良吏(トヨタ自動車・投手・右投)

松本竜也(Honda鈴鹿・投手・右投)

この顔触れに大きな驚きはない(あの選手は含まれていないのかと思うところは大なり小なりあるが・・・)。また、個々の寸評についてはここでは割愛する。その一方、スポーツ報知に掲載されていた米村明チーフスカウトの発言は大きなインパクトのあるものだった。

「ファンの皆様に愛されてこその球団だと思っている。地元密着というか、地元の選手を大切にしていきたい」

「どこまでも遠くに飛ばすだとか、足がとても速いとか、一芸に秀でたものを持っている選手も推していきたい」

特に二つ目の発言は、今後の中日の野手の指名において大きな意味を持つことが予想される。この発言をまともに受け取るならば、短所があったとしても、それを補うだけの長所があれば積極的に指名するとも考えられる。そのなかでも、スラッガータイプの選手の動向には注目したい。その理由は2つある。

①これまでの同タイプの選手は外国人選手に依存していたこと。

②ナゴヤドームにテラス席が設置された場合、「ドーム野球」からの転換を球団が目指す可能性があること。

①は何年もの間、解消されない課題となっており、石川昂弥の指名もこの影響を受けていると考えられる。②に関しては、ナゴヤドーム移転に伴い、いわゆる空中戦の野球とは決別したが故、打撃偏重型の選手が軽視されてきた側面もある。最下位に沈んだ1997年オフの大豊泰昭の放出はその象徴といえる。その後、中日において打撃偏重型選手よりも、守備力や走力を兼ね備えた選手が重宝されるようになったのは言うまでもない。その結果、わずか2年後の1999年にリーグ優勝を果たし、2004年からの落合政権でドーム野球が大輪の花を咲かせたのは紛れもない事実だ。しかしながら、2013年から7年連続Bクラスによって、広い本拠地を味方につけた野球からの脱却を目指すべきという声は無視できなくなっている。そこで出たのがソフトバンクやロッテ、楽天が先駆けて行ったテラス席の設置だ。

テラス席設置が現実となった場合の影響として、本塁打・被本塁打の増加が議論の的になっているが、忘れてならないのが外野守備の負担減少である。設置に伴い、守備範囲の縮小と二・三塁打の減少が予測される。そうなった場合、これまでよりも外野手の脚力や守備力が問われなくなり、守備面のリスクをが足かせとなっていた打撃偏重型選手を躊躇うことなく指名できる。具体名を挙げるならば、西川僚佑(東海大相模・外野手・右打)のような、守備面・走塁面に課題を残す選手の評価に変化が生じるかもしれない。

清宮幸太郎(日本ハム)や村上宗隆(ヤクルト)らが指名された2017年以降、野手の上位指名が目立っている。これまでは上位で優秀な投手を確保することに重きを置いていたが、一転、中心となる野手を揃えることがチーム強化の肝と考える球団が増えてきている。もはやお目当ての野手がいた場合は、上位指名をしないと買い手がついてしまっている時代に突入した。

球界全体におけるドラフト戦略の大転換期において、取り残されないためにも野手の指名はますます重要になってくる。如何せん、昨年の両リーグの優勝チームの4番打者は、いずれも中日が軽視していた打撃偏重型選手なのだから・・・

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