ジブリ映画「かぐや姫の物語」考察 4

自称作家 あまおう まあお がDVD見て原作読んで全力で考えてみた!!

五人の求婚者(+あと二人ほど)


 原作にないキャラクターの話をする前に、原作準拠のキャラクターにも軽く触れておきましょう。

 原作の研究ではこの五人、実在の人物がモデルじゃないかと言われているそうですが、この映画がその説を採用しているのかどうかは分かりません。高畑監督のことですからきっと調べてはおられたと思いますが、あくまでも原作とDVDから分かることだけ述べようと思いますのでその件には触れません。

 私は素人だし、流石に話が長くなりますしね。気になる方はプロの研究をご覧になることをおすすめいたします。

 五人の貴公子たちのエピソードはだいぶ、原作と違うところがあります。まず出てくる順番が違うし、一人ひとりに託された役割も違っているように感じます。

 大筋はまあ「金持ちのクソ野郎が姫に難題ふっかけられてフられました」というだけなのですが、そもそも原作は語源譚の性格を持っているので、五人の貴公子にもそれぞれダジャレ的なオチを持たされるのですが、それはこの映画では語られていません。

 そのかわり、五人それぞれ「性格に問題がある」ことが色々な角度で表現されているように思うのですが。
 五人の紹介の順番は映画の順番に従いましょう。宝物持ってきた順です。

 僭越ながら、ここからは自分が女の子どころかもう姫になったつもりで、合コン目線で語らせていただきますね。さて、どいつを選べば、幸せになれるかなっと。個人の趣味を多分に含みますが、ご了承いただければと思います! 

 是非、あなたも姫の立場で選んでみてください。

 一、庫持の皇子(蓬莱の珠の枝)

 この方、なかなかイヤなヤツでしたね。大筋は原作準拠なんですが、原作での語源は「たまさかる」です。魂離る、で、たまさかる。と蓬莱の「」がかかっているわけですね。魂が抜けたように惚けている、の意だそうです。原文はわりと辛辣で、かぐや姫にフられた後、行方不明になった皇子にしれっと「御死にもやしたまひけん」(あいつ死んだんじゃねえの)とか書いてあるんで、笑ってしまいました

 原文では、ニセ枝作った職人ボッコボコにして金巻き上げてるんで、この言われようも仕方ないですね。
 アニメの方でも顛末はだいたい一緒なんですけど(職人ボコしてはいないですね。枝持って逃げてますけど)、「たまさか」っている感はあまりなく、気になるのはこの方の「」ですね。

 姫の前で嘘八百並べ立てるときの、なんですけど……あきらかに目の向きがおかしいですね。斜視とも取れるのですが、他のシーンで全部そう見えるわけでもないので「嘘ついてます」という目なんでしょうね。ちょっとこわいですが。

 この方は嘘つき以上に、ずうずうしくて。翁の想定以上に姫に近寄っているというのが座布団の位置で表現されていて、コミカルかつなんだか、イヤなヤツでしたね。全面的に彼の発言は嘘なんですが、気になるのが「ひと枝折ってまいりました」とか言う割になぜか鉢植えで持ってくるというところでしょうか。枝なのかそれは? 原文には鉢植えとは一言も書いてないと思うんですが。まあなんかこの方気持ち悪い感じ出てて、そういうヤツなんだなあと思います。あ、個人の感想です

 二、阿部の右大臣(火鼠の皮衣)

 この方は個人的にはお気に入りですが。声優さんも伊集院光さんで、なかなか素敵でしたね。この方はお笑い担当でしょうか。お公家様的風貌でデブ枠で、金だけは持っていますという方ですね。

 原文の方ではデブとは書いてないですが「宝豊かに家ひろき人」だそうです。お話の筋はほぼ一緒で、金にモノを言わせたが掴まされた皮はニセモノでした、めらめらと燃えました、という感じです。この方、烏帽子つけてるんでよく分かんないですが、後ろから見たショットが明らかに他の方より「薄い」と思いますがいかがでしょう。これはずしたらきっと……。いや、名誉毀損はよくないな。そんな予感がした、ということにしておきます。

 語源は「あへなし」でこれが「阿部」と掛かっているということですね。意味的には「がっかりだよ」くらいでしょうか。映画の中でも「元も子もなくしてしまった……」と言っているのが、原文の名残を感じました。

 この方はすすんで嘘を言っているわけでもないんですけど(騙されてニセモノつかまされたんじゃないでしょうか?)他の方は身体はって(ないヤツもいたが)るのに金でなんとかしようとするあたりがイヤらしいところでしょうかね。個人的にはそんなに悪いことはしていないと思いますし、経済力も魅力のひとつと思うんですが、まあ、姫は金持ちですからね。金では買えないということなんでしょう。

 三、大伴大納言(龍の頸の珠)

 この方は「もののふ」という設定ですが。馬に乗ってたし。原文では大納言としか書いていないのですが「大伴氏」というのがどうも軍事的にも優れた(まあ、そういう意味なんでしょう)有力豪族のお名前ということで、ああいうキャラになったのでしょう。

そういった一目置かれた荒くれ一族の方が水難で龍を見てビビリ倒しているのが愉快ですねえ、という風刺的なお話なんですかね。口ほどにもない、というか。平素は威勢が良くてもイザというとき役に立たない男はなあ……ということでしょうか。この方はほとんど原作準拠です。個人的にはDV気質な方だったら困るなあという気がしましたね。いや、気のせいならいいんですが。

 語源は「あなたへがた」、うまくいかないもんですねえ、ということらしいです。原文の方では珠を持ってくる代わりに病気になって目が「李のようだ」とのことで、そんな李は「たべがたい」「(おかしくて)たえがたい」というクダリがあります。いや、さすがに酷いんじゃないかと思いますが、大伴氏どれだけ嫌われてたんでしょうかね、むしろそっちが気になってしまうんですが。この映画でも一瞬だけ、目が腫れているようなカットがありましたよ。若干かわいそうですね。


 四、石作の皇子(仏の御石の鉢)

 個人的にはコイツほんと嫌いですね。見た目的には一応イケてる部類だと思うんですが、二枚舌って言うかなんていうか、口のうまいイケメンなんて基本最悪ですからね。こいつは同情の余地ないですよ。

 原作はもう少しマシな人間です。ちゃんと仏の御石の鉢っぽいもの持って来ますから。ニセなんですけど。皮衣の阿部さんと違って、ニセだと分かってて持ってきます。姫に「これはニセじゃね」とか一蹴されてキレて鉢を捨てます。それで「はぢを捨つ」の語源となって、ご担当は厚顔無恥だそうです。

 厚顔無恥な感じは映画でもイヤというほど出ていますけどね。

 でも、稀代の女好きはコイツだけじゃないんですよね。五人全員なんです……「色好みといはるるかぎり五人」だそうですからまあ、どれを選んでも結局……って話なんですよね。だったら少しでもイケメンの方がいいのか? まあ私は遠慮しますが、そういう考えは否定しませんよ。恋人選びは個人的なことがらですからね。個人の自由を尊重します! どうせ変な男選んで苦労するのは本人なんだし。ただ私はノーサンキューですね、ええ!

 五、石上中納言(燕の子安貝)

 この方は不憫担当ですね。優男風というか、もやしっ子というか、インドアっぽいというかなルックスでしたね。個人的にそばかすが気になります。
基本的にがんばって燕の巣に手突っ込んでたりするし、性格が悪いという風にも見えませんが徹底的に酷い目に遭ってますね。映画だと頭から落ちて瓶っぽいのに思いっきり首突っ込んでるのに「腰の骨を折って死亡」という死因が疑問なんですけど、これは原作準拠です。

 他のひとが「子安貝とかないっすー」って言ったのを「探し方が悪いんだよお前は」とか言って自分で取った挙げ句が「燕のふる糞」でしたとのことで(映画では卵に変更)「かひなし」=貝なし甲斐無しの語源になります。

 気になる死因の詳細ですが、映画の描写は合ってます。「鼎(かなえ。だいたいあの絵の感じでいいと思われ)」の上に落ちて「御目は白目にて(白目をお剥きあそばして)」「からうじて息出で給へる(ギリで息はしてらっしゃる)」のですが「御腰は折れにけり(お腰は骨折なさいました)」で、寝たきりになってしまいます。貝は取れないわ、人々に笑われるわで精神的にも折れてしまわれたそうで。

 原文では姫からお歌をいただいて「すこしうれしき事をば、かひある、とは言ひける(すこしだけうれしいことを「甲斐ある」と言います)」とあるので(しかしやっぱり死亡)、流石に不憫だということなんでしょう。実際不憫ですからね、この方。

 ご同情申し上げたいと思います

 六、オマケ 御門の顎は原作準拠では勿論ない

 なぜか中国好きに設定されているのも、個性的ですね? 原作では流石にそこまでコケにされてなくて、一応かぐや姫も文のやりとりくらいはしてくれます。

 そうなると、姫があれほど顔芸してまで拒否してたのはやはり顎がアレなせいだったんでしょうか……。あまりにもインパクトが強いんで、全然頭に入ってきませんね。

 ナルシストで強引でイヤなヤツ、という話もききましたが、御門っていったら神みたいなものなので、彼の言い分はそんなにおかしくないと感じるんです。ただ姫の方がさらに身分が上やぞ、という話で。

 原作はそう言っていると思いますが、ただそれなら顎はこうする必要がないんですよね。面白要素なだけなのか、何か深遠な理由があったのかは分かりませんが、確かにこの顎ではフられてしまうのも無理はないと絵面の説得力がハンパないですね……。

 七、妻子捨丸 オリジナルキャラクター

 この方はとても重要で、ストーリー全体のキモなんですがこの方の話をする前に別の設定に触れておきたいので割愛します

 この方が倫理的にどうなのかという判断は各人の考えによると思いますが、私はこの方の気持ちはわりと理解できると思って、好意的に見ています。少なくとも顎尖ってないですし。何か悪いことをしているというようにも、見えないんですけどね?

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