ジブリ映画「かぐや姫の物語」考察 3

自称作家 あまおう まあお がDVD見て原作読んで全力で考えてみた!!

アニメとしての表現 脱色の秘密


 この映画、本当に絵が奇麗でしたね。筆で描いたようなタッチの柔らかい絵が質感たっぷりに動いて(重心の移動とかそもそもの体重の増加とかそういう表現!)、技術と資本の力を見せつけるような芸術的アニメです。

 色彩も美しくて和風の絵本のような色調。レイヤー構造になってる木漏れ日の表現。一体どうやって動かしているやら、想像すると気が遠くなります……!

 特に気に入ったのが、都に建てた竹取翁の屋敷の板張りの表現ですね。板張りがつるつるに磨かれていて人影が反射する影にが入っていました。赤い衣装は赤い影、青い衣装は青い影。一人ずつ、色影が設定されていてとても自然で奇麗でした。

 気になったのは宣伝にも使われていたのシーン。姫の衣装が濃いピンクで、桜が白っぽいピンクなんですが、その桜の花に明らかに「赤いガク」のような色が入っていてソメイヨシノっぽくなかったんです。

 どうもあれは花と一緒に赤い葉が出るタイプのヤマザクラを表現していたんじゃないかと思うのですが。現在八割とも言われるソメイヨシノは比較的新しい品種なので、姫のいた頃は桜と言ったらヤマザクラなのでしょうね。流石に細かい考証ですね。手がかかっています!

 その細かくも美しいアニメ表現の中で、ちょくちょく明らかに色遣いやタッチが「違う」ところがありました。色が抜けてしまうシーンです。具体的には

 一、姫が衣を脱ぎ捨てて月に向かって山を走るシーン+雪山で倒れるシーン(怒)

 二、泥棒をした捨丸が殴られた後、雨の中取り残されるシーン(悲)

 三、大伴御行が龍の首の玉を取りに海へ行くシーン(恐)

 四、姫が一瞬、御門から姿を隠すシーン(怒)

 五、回想・月の都の天女のシーン(悲)

 六、姫の昇天 月へ連れてゆかれて色が抜け落ちる→振り返ると青い地球・色が復活→月へ視線を戻すとまた脱色(諦)

 このうち二と三はそうでもないのですが、は明らかに「月の魔力」と関連があります。

 姫は月の天人ですから、姫の感情が一定以上に振り切れると月の加護がはたらくようなんですよね。刑期の途中で死なれたら困るということでしょうか。が分かりやすいと思います。普通の女の子はあんなに速く長距離走ったりできませんよね。怒りに我を忘れて力が暴走しているのですが、あまりにも大きすぎる月を描いて、明らかに月と関連がありますよと言っている感じがしますね。

 消失もそうです。これも実は原作準拠です。

「かぐや姫、きと影になりぬ(かぐや姫はさっと消えてしまった)」

「げにただ人にはあらざりけり(ほんとに普通の人間じゃなかったんだ!)」

 だそうです。月のパワーを感じますね。

 では地球が青々と丸く輝き、月は白くぼんやりしていて、月へ連れて行かれる姫の感情が潮の引くように消えてゆくのが美しく表現されます。これも月の魔力の一種。月へゆくと地球人のような「穢れた」感情は消え失せるのですよ。浄化、のことでしょうか。月のお迎えの皆様のお顔を見ていると「悟り」なんて言葉が頭をよぎりますね。

 ここので地球の表現がほぼ同じであるのは非常に重要です。

 この物語を紐解くのに見落とせない重要表現です。覚えておいてくださいね。この鮮やかすぎるほどの青色。地球の生命力をあらわしてるだけでなく「ここテストに出まーす!」と言っているように感じます。

 それくらいに、この物語の色彩から「浮いて」みえます。私だけでしたか?

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