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セナのCA見聞録 Vol.42 バリ島でクルー仲間とパーティーバケーション その4(最終編)

パーティーバケーション最後の晩

最後のディナーには皆、黒か白の正装を着用することとなっていました。

ドレスアップをいやがる女性はあまりいません。私も、前にパリで一目惚れして買ったソワレ用の黒いロングドレスを着る機会ができて、ウキウキ気分。

私と久美子は次の仕事のフライトを二日後に控えていたので、この晩9時過ぎの飛行機で成田へ帰ることになっていました。ディナーは7時スタートで、空港までの移動時間を考えると、ほんのちょっとしか参加できないのだけど、せっかくのブラックドレスを着る機会を逃すのも惜しい気がするし、まして久美子は宝探しで一位になったので、賞品を受け取ることにもなっています。

どうしようかと二人で相談した挙句、チェックインぎりぎりの七時半まで30分だけでも参加しすることにしました。六時半くらいから早めに行けば一時間くらいは過ごせるはずと、早めに荷造りを済ませて空港までのタクシーの手配もし、パーティー会場へと向かいました。

会場へ着くと、独身女性には左耳に、既婚女性には右耳にハイビスカスの花をつけてもらい、ウェルカムドリンクが配られました。

生バンドの演奏を余興に、ぞくぞくと人が集まってきました。私達はジョシュとソフィーとテーブルを共にし、楽しいバリ島での残りわずかな時間を過ごしました。

七時半はあっという間に訪れ、私と久美子はこのパーティーの主催者ライアンに「本当に楽しかった。こんな楽しいことづくめのパーティーを実行するなんて、あなたはパーティ作りの天才よ。これは私達からのお礼!」とライアンの両頬を挟むように軽くキスをしました。

「じゃあ、私達はこれから飛行機に乗らなくちゃいけないので、お先に失礼しま~す。」と会場の皆に手を振り、レストラン入口で預けたスーツケースを受け取って外に出ました。

「あれ、もう頼んだ時間5分過ぎてるのに。」

頼んだはずのタクシーはまだ来ていませんでした。「まあね、ここは何でもゆったりしているから。時間通りにと期待するほうが間違ってるよね。」と多少寛容にもう10分程待つと、ようやくタクシーがやってきました。

外まで見送りに来てくれたジョシュとソフィーにお別れのハグをし、「空港まで、大急ぎでお願いします。」と急いで乗り込むと、私と久美子は顔を見合わせてニコっと笑った。「この格好のまま空港でチェックインするの? 笑えるね。」

搭乗時間も迫っているなか、駆け足でカートを押しながら慌ただしくチェックインを済ませ、出国検査を済ませたところで、「はあ、よかった。なんとか間に合った。」と安堵の溜息をつきました。そして「ねえ、空港にこんなロングドレス着てチェックインしましたっていう記念写を一枚取ろうよ。」と私達は二人並んでラウンジ前で写真を取りました。それから近くのトイレで手持ちかばんの中に入れてきた洋服に着替えました。

飛行機が離陸しどんどん高度を上げていくなか、久美子は名残惜しそうに窓下の景色をいつまでも眺めていました。私は目を閉じて楽しかった時間を振り返っていました。

余談ですが、航空業界というのは実に巨大な集団です。

当社の場合でCAだけでも2万人以上います。世界中の航空会社全てを合わせたら何万人にのぼるかわかりません。そして彼ら彼女らのネットワークは実に幅広い。

テニス好きの人はテニス合宿のようなものからトーナメントまでを、このリゾート地でのバケーションパーティ同様、テニス三昧の一週間プログラムを計画し、世界中のテニスリゾート地を使って毎年同好会のようなことをやっています。私の同期でテニス好きの子が数人いますが、彼女達の話によると、トーナメントは航空会社別に競うそうで、年齢も国籍もバラバラだという話。彼女達は数年前、南アフリカまでテニスを楽しみに行ってきました。そこで観光しながらテニスを楽しむわけです。

スキー好きの人もしかり。去年はアラスカで、今年はオーストリアのアルプス、来年はアメリカのコロラドでと、しっかり毎年の日程表まで出来上がっています。

それぞれのイベント参加希望者は人は、事前にその期間をブロックして休暇を申請する徹底ぶりです。

仕事もプライベートも充実とはよく言ったもので、こういう趣味に熱中する人たちが企画実行するイベントは、それを仕事としている人たちに引けをとらない充実ぶりで、私などはただただ頭が下がるのみ。イベント企画も実行力もツアー会社のプロ顔負け。

全く、元気な人は元気なことをどんどんしているものです。




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