
少年少女向けの「世界探検紀行集」が心底恐ろしかった
昨夜はこの記事を一生懸命書こうとしていたのだが、もう間に合わなかったので唐突によくわからないバレンタインの小ネタを入れたのであります。
こちらの記事で触れた、川端康成大先生加わっての責任編集による「世界少年少女文学全集」、これのまだ読んでいない奴を読んでみようとこころみてみる。
ツイートは文字数で書けなかったが、なご助に取ってもらったとき、↓これは「その赤本の中から」という条件つきだった。
「なご助、本棚から母が読んでなさそうな本一冊取ってくれ(無茶ぶり)」
— 悠 (@mwagtail30) March 16, 2020
「う~ん。なんかぜんぶ読んでそうだな」
一冊くれた。
ほんとに読んでないし、手に取らなさそうな奴だった。
マッターホルン登はん物語とか。
(あっシュリーマン入ってる)
このチョイスの仕方は面白かった。
他人まかせ pic.twitter.com/o0mkMel0Qi
不覚にも泣いてしまった💦
— 悠 (@mwagtail30) March 16, 2020
「南極探検物語」
アムンゼンに負けたスコットの話だった😭
中野好夫…
なぜこんな所に中野好夫が
反則だ😭
やられた pic.twitter.com/7Xr5RVx9Uo
この本、1956版であります。いちおう50年過ぎてるので、多少の写真での紹介はお許しください。
検索してみても、中野好夫の「南極探検物語」を読めるのは、国立国会図書館貯蔵のこの世界少年少女文学全集の赤本でしかなかった。
アムンゼンはひたすら南極点到達のみを目的とし、まい進した。スコットは到達と南極の研究、二束のわらじが致命傷だった…。だがその人柄、研究のすばらしい成果は評価されるべき。一人一人隊員が死んでいく悲痛な記録、彼はテントの中で仲間と横たわった姿で発見された…。
これは大人が読む本では??少年少女の誰が読むのか。
スコットの日記を的確に要所要所、正確に紹介していてすごい。(凍傷がどういう風に進んでいくのかよくわかります。)
川端康成先生は子供への期待が高すぎであります!はっきりいってちょっと期待が重いです!
しかし確かに、面白い!
・・・大人に。
つぎ。シュリーマンの伝記。
シュリーマンは伝記を読んだことがあるのでまあ、予定調和でうんうん、こんなだったね、とは思うのだが。
シュリーマンの外国語勉強法❗️
— 悠 (@mwagtail30) March 16, 2020
最初は英語だ
(とても参考になるとは思えないほどのあふれるパワーとやる気💦しかも極貧生活のなか) pic.twitter.com/HNRAYpBLVf
この「外国語をたやすくおぼえる方法」
シュリーマン!!おめーにしかぜってー、できねーから!!!
と思いました。(口が悪くてごめんなさい)
真打ち。
一見してマジかよ誰が読むのか、と思った「マッターホルン登はん物語」。
やばい。
マジでやばい。
いわゆる速読という奴で、昔はななめ読みと呼ばれているが、私はわりとこの読み方をする。
すべてをじっくり読みながらかみ砕いて読んで行くよりも、向いてるか向いてないか、また読み返したいかそうでないかを試しながらさーっと目を運んでいく。
やばい。
速読のおかげで3分後にはもう登ってるのだが、ここで釘付けになった。もう速読できない。文字を拾うしかない。なぜならば。
落ちた。
主人公が落ちた!
マッターホルンから。
あっちこっちにぶつかりながら転げ落ちていく様子が、ものすごく詳細に描写される。一人称なので「わたしは岩にぶっつかりました」という感じなのだが、「ぶっつかりました」は数えてみると4回も出た。結局、なんとかかろうじて岩にしがみつき、止まったのだが…。
「四メートルほど下にあった岩にぶっつかりました」
「七十メートルばかりのあいだを七、八へん投げとばされながら」
「二八〇メートルばかり一気に投げ飛ばされていたでしょう」
どうやってその距離測っとんねん!
はっ、もしかしたら今気づいたけど翻訳なのでヤードとかの距離をきちんとメートル法になおした結果、こういう表現になってしまったのだろうか。
とにかくすごくたくさん、ながいことおちた。
血もだらだらと出ている。「噴き出して止まらない」そうです。もうやばすぎる。雪を押し付けて止血をする。
どうなるのか目が離せない。
次は落石。
石なだれだ!!
急に頭の上で音がしましたので、上を見あげますと、三十センチもあるような大きな岩が、わたしの頭の上へまっすぐに落ちてくるのが見えました。わたしがあわてて首をちぢめて、安全な岩かげへはいこみますと、同時に、はげしいうなりをたてて、岩がとび去っていきました。これは岩なだれのまえぶれでした。
頭すれすれを落ちてきて下で砕け、硫黄の匂いがぷんと鼻をつく。
リアルすぎてこわい。今このとき、登ってるみたいにこわい。
スリリングすぎる。手に汗握る。
マッターホルン、下山………。
嫌な予感はしていた。
だって章のタイトルが「悲劇の下山」だよ。嫌な予感しかしない。
そもそも、この探検本、最初が死亡確定のスコットだったし。少年少女なら生きて戻ったアムンゼンを選べよ。(スコット、ものすごく良かったけど)
ほらやっぱり下山で死んだ!
仲間が落ちて死んだ!それもたくさん!!
ちょっと足をすべらせて、一人が一人にたおれかかったのが運のつきで、巻き込まれて次々に転がり落ちていく。もう本当にやばい。ちょっといやな汗をかいてしまった。
あとで死体を回収にいき、ロープを調べる。下の方の人たちはきちんとしたロープで体をつないでいた。しかし、途中で一か所、なぜか古いロープを使っていた。そこで切れたのだ…。
見つかった死体もあるが、見つからなかった人もいる。
さすが川端康成大先生の責任編集の名を冠するはずだった。
はんぱなく手を抜いてなかった。
これ、子供が読むものじゃないだろう。
こどもに現実を教えたい、という気持ちはわかる、わかるよ!!
探検とは、華々しいだけじゃないよね。危険と隣り合わせで命をかけて行うものだよね。気持ちはわかるんだけどね!!
しかも微妙に子供向きなので、すごく難しすぎずかみ砕いて頭に入るようにしている部分もあって、怖さがわかりやすすぎて余計に怖い!!
これでまだ、「南極探検物語」「シュリーマン」「マッターホルン」しか読んでいないのだが、やめられる気がしない。
まだアラビアのロレンスを残しているが、ほんとに大丈夫なんだろうな?
映画もまだ見ていないのだが。ロレンス死ぬんかな?(すっかり悲観的になって心の準備をしている)ぜんぜん、英雄的冒険譚である気がしないのだが。
北極漂流探検記も「漂流」っていう題名に嫌な予感しかしない。
しかしもう読みたくて仕方ない。
川端康成...!恐ろしい子!!
***
追記:
「マッターホルン登はん物語」の作者、ウィンパーのWikiのページ
こちらは岩波文庫で「アルプス登攀記」としてあるみたいです。訳者は浦松佐美太郎さん。わたしの読んだのは近藤等さんです。たくさん山岳系の話を訳されているみたいです。
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