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仕事をとりかえたおかみさん~旦那が主夫になりました その2


前回の記事


料理はできる


だんなは、料理はできる。
前々から土日に作ってくれていたし、そこは本当に助かっていた。

しかしだなぁ、毎日だときついよ?
たまにだから言わなかったけど、基本、だんなは自分の食べたいものを作るから、こどもらの口にあわず手をつけないことも多いのだ!
たとえばシチューならお野菜ゴロゴロが好きなので大きく切るのだが、こどもの口には大きすぎる。
食べづらいの。

上の子はひどい偏食なので食事には気を使うし、食べられないのが続いた後の日には、たらふく食べられるよう、からあげをどっさり作ったりしてバランスをとっている。
そういう配慮ができるのだろうか?

それに、エッセイ漫画で旦那をディスってるやつでよくある例に漏れず、作っても後片付けは全くする気配がなく、食べたら食べたでほうりっぱなし。

こっちはやたらと耳年増になってるので、そこにイライラすることは今までなかった。
北風と太陽のようにあたたかい大きく広い心で(自画自賛)、作ってくれるだけマシ!という心でいるよう努めていた。

だんなが一番嫌いなのは、たぶん洗濯で、次に洗い物。
この二つがなければ生活は成り立たないぞ。

どうなんだろうなぁ。
これらも、指摘するのに配慮した方がいいのだろうか。

しかし、時間は待ってはくれず、話し合いなどする時間もないまま、あれよあれよという間に、なしくずしで男女逆転、私が働き、だんなは家で主夫、という珍道中が始まった。


思ったよりやる


数日様子を見たが、思ったより頑張っている。
なんと子供たちのお弁当まで作ろうとしている!
これは予想外だった。せいぜい夕食を作るぐらいかと思っていた。

上の子「おおおお母さん、おおお父さんがべんとー入れてる!!」

もともと片付けなんてしない人なのに、自分なりに片付けている。

わたし「コンタクトが乾く。めがねだと曇る」
だんな「この目薬(ネルフ印のカヲル君型目薬)使うといいよ。すごく効く。あとめがねも、このくもりどめめがねふきを使うとくもらないよ」

わたし「下の子がわたしの裁縫セットを学校にもっていってしまった!」
だんな「この簡易裁縫セットをつかうといいよ。ボタンがとれた時に自分でつけてました」

あれこれ、今までだんなが会社で使っていた備品がすべてわたしにスライドされた。ざ、ちぇんじだ。

洗濯もやり始めた。
ただこればかりは、よくあることだが干し方がくしゃくしゃだ。
でもここで責め立てると良くないんだよね?そうなんでしょう?

わたし(優しく)「洗濯は自分でやるから」
だんな「ムキー!gえrgnうぇあmkえsdgl!!!」

困った。
何を言ってるのかよくわからないが、どうやら手を出すなと言っているらしい。しかし子供の服は特に気を付けて仕分けをしてネットにも入れ、きちんと洗わないといけない。そして変なシワがつかないように干さないといけない。子どもたちは敏感だし、まして下の子は女の子、女子の目は厳しい。

説明をすると、しぶしぶのばして干しはじめた。

歴史ファンで自分のことを亭主関白だと信じてやまないだんな。
文芸系ではないけれど、少しは名も知れてる出版社で部長まで務め、自分でも古い価値観の人間だと豪語していただんな。

友達にも、ご主人をすごく立てているね、と言われたことがある。
根が九州女の悲しさ、どうやら無意識に面目をつぶさないよう気を使って行動しているらしい。

忘れられないことがある。
結婚したとき、葛飾区のだんな実家(亀有近く)へ行って本当に驚いた。
一番上の叔母さんの鶴の一声でさっと親戚一同が皆立ち上がり、男女関係なく片付け、協力しあう姿……。衝撃だった。田舎ではありえなかった。
だから、だんなは本当の意味での亭主関白ではない。本人は信じきっているが、わたしは本場の亭主関白というのがどんなものかを知っている。する気もなく出来ない。そういう風に育っていないからだ。今はどうなんだろう。人とところによっては変化していると聞くけれど。

つまり一応、だんなにはそれなりの素養がある。でなかったら、多分この窮状(現在進行形)は乗り切れなかっただろう。おまえなんかエセだエセ。エセ亭主関白なんだよ。本物ナメんな。

だんな、進化する。


2週間目。
どうやら慣れてきたらしい。

見ていると、コンスタントにちゃんと洗濯もやっている。干し方もだいぶ改善された。
子どもらのはきちんと干されていて、自分の分だけ、おそろしくくちゃくちゃに干しているところにこだわりの怒りパフォーマンスを感じる。

わたしも「洗濯は自分がやる」などと言ったものの、やはり仕事をはじめたばかりで覚えることもたくさんあり、そこまで気を配るのは無理だった。

片付けもそれなりにやっている。

そして、ついに!
早めに家を出る私のお弁当まで作り始めた!
これはすごい。
そこまでやるとは思ってなかった。

かつて弁当を作り始めた時、同じようなことを旦那が言っていたのだが、弁当は本当に節約になる。家から出て、帰るまで、よほどの今必要なことがなければ財布を出さずに終わってしまう。
あ~、そんなこと言ってたけど本当だったわ。実感として感じられた。

自分で弁当作ってる立場だと、帰りにはガンガンに買い物をするし、そうなるとお菓子も買っちゃうし、あれもこれも必要なものあるし、あまりピンときていなかった。
そうか、これが「奥さんに家計を預ける」ということなんだな!そうかぁ!
(今までは、同一財布形式だった)

友達「最初だけだって!今は、珍しいからやってるだけだって!まあ見てらっしゃいよ、これが PTA の会合に出てとか、子供の面倒を見てとか言ってごらんよ。絶対やらないから」

それはやらないだろうな。
主夫を本気でやるならそこは本来、込みなんだけど、要はこっちもエセ主夫だ。しかし私もそれほど稼げるわけじゃなし、そこまで求めるのも酷だ。ていうか再就職してもらわないと困るから!


つづく


「しごとをとりかえたおやじさん」の紹介記事

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