上坂すみれ「NEO PROPAGANDA」を聴いた

上坂すみれこそサブカルが生き残る道である

すみぺのアルバムももう4枚目なわけですが、相変わらず売れっ子声優のCDとは思えないインターネット文化とサブカル大集合なアルバムとなっております。三国志・ロシア・80年代アイドル・ユーロビート・東方アレンジ・メタル・オカルト・共産趣味・ゲルニカ風昭和歌謡と、よくもまあこうひねくれたオタクが好きそうなものばかり集めたもんだ。

ただ、すみぺの追っかけをしていて安心するのが、こういうサブカルちっくなところって、ともすればネタがベタになりがちなんだけど、上坂すみれは徹底して「形式の模倣」であって、その本質には距離を保ってるところなんですよね。

もちろんその距離が長すぎて反転した結果、「ネタからベタへ」が起きちゃったのがまさしく90年代からゼロ年代のインターネット文化の変遷である

わけだけど、そこまで過剰なネタ化ではなく、愛ある茶化しのラインをどのカルチャーにも保っている。実にクレバーだなあと。

多分、もしテン年代にサブカルが暗黒面に支配されることなく生き残れるとしたら、それはこの上坂すみれに学ぶしかないと、僕は本気で思っています。

まあ、それはおいといて、アルバムの曲の中で、気になった曲について。

気になった曲

MESSAGE

group_inou提供の曲。すみぺのラップが実に心地いいです。普段さんざんオタ話やらサブカル話やらしてるテンション高めの女の子が、夜の二時頃のカラオケボックスでこんな感じのチルアウトする曲を歌うと、オタ男子は十中八九落ちますね(なんの話だ)。

女神と死神

80年代アイドルポップス感全開な曲。本人作詞なんだけど「本人が作詞する歌詞が一番自意識がない」のが、上坂すみれっぽいなぁと。「80年代アイドルポップスに出そうな単語」を、もうワードサラダ寸前の意味連関のなさで繋げるという。上坂すみれの世界では、形式こそが本質に先立つらしい。

アウターモスト -超自然恋愛-

恋する図形(cubic futurismo)のときも思ったんですが、女の子に、本人は意味が分かってなさそうなニューアカチックな言葉を歌わせるのって、なんでこんなに気持ちいいんでしょうね。いや、上坂すみれは絶対意味分かってると思うんですが(上智大卒だもの)、いかにも「分かってないふうに歌う」んだこれがまた。

ネオ東京唱歌

まさしくゲルニカの戸川純という感じ。いかにもプロパガンダっぽい曲調なのに歌われるのはむしろそれに乗れきれない人たちの気持ちという、まさにメインでもカウンターでもないサブカルチャーの面目躍如。「全員団結」なるマジモンのプロパガンダがはびこる世の中、それに真っ向から反対するのもあるけど、僕はこういうネタ化もありだと思うんだがなぁ(と、いけないいけない、ついマジになっちゃった)。

上坂すみれ、最初に出てきた頃はまだ高校生と若く、共産趣味と軍事オタクを全面に押し出してたということもあって、「ちょっと危なそう」という見方もあったと思うんですが、長年の活動でそのバランス感覚はみごとに証明されたと思うので、様子見していた人、追っかけ始めるなら今だと思いますよ。

付録:リンク集

今回のアルバムについて、上坂すみれに聞いている記事を集めてみました。


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