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心の抽斗、記憶の欠片。 2

はじめに。
私の心の中には、大小様々な抽斗が存在している。
その大半には錠前がついており、きっかけとなる事柄 - 鍵 - を持ってしてその抽斗を開け、中にそっと仕舞われている「記憶」を取り出すことができる。
「記憶」の形も様々で、まばゆい光を放つものもあれば、錆びついたもの、中には、更に謎を解かねばならぬ「からくり箱」の様相を呈しているものもある。

これから綴られる文章は、本当のことかもしれないし、そうではないかもしれない。
でもそれは、この物語を読むうえで、さほど重要なことではない。
読む側の人間にとって、嘘か誠かなんてわからなくとも、「赤の他人のふとした出来事」として捉えられれば、それでよいのだから。
だからそう、事の真相を知っているのは、私だけで構わないのだ。
それを頭の片隅に置いた状態で、この先を読むかどうか、決めて欲しいと思う。
もし、読んでくれるのなら、その「ご縁」に感謝して。

天蒔 柊太郎


僕とラジオの話でもしましょうか。
いやね、「小林賢太郎がしゃべります 3」で、ラジオの思い話してたから。
僕も、話してみようと思って。
彼ほど実のある内容じゃないけれど。

僕がラジオを1番聴いていたのは、そう、中学生のときだったなあ。
「オールナイトニッポン」、皆が通る道だと思います。
AMだから、なかなか周波数が合わせられなくて。
加えて、中学生だった僕は、遅くまで起きていられなくて。
その番組は、23時30分から1時までの90分で、90分カセットテープの折り返し、つまり、45分までは、布団の中で録音しながらこっそり聴いて、テープをB面に変えたら寝る。
翌日起きてから、続きを聴く。
そんな生活をしていたっけ。
懐かしいなあ。
多分、今でも探せば残ってるはず、そのときのテープ。
残念なことに、聴く媒体がもうないんだけどね。
ラジオのいいところは(自分が聴いていたのは、ミュージシャンのANNね)、新曲をいち早く聴けること。
宇宙初OAって、彼はよく言ってた。
葉書職人ではなかったけど、ラジオの内容について、友だちと話し合ったりしてたなあ。
深夜番組だけあって、そのラジオで覚えた言葉も数知れず…。
当時はその単語の意味をわからないまま聴いてたけど、結構エグい話してたよな…なんて。
そうやって、人は、成長していくんです、はい。
ANNは土曜の深夜だったけど、彼はFMでも番組を持っていて。
それは、日曜の夕方4時、ちょうど、家族で出かけた帰り道に聴いていた思い出。
この人、自分の曲えらい推すなあ…なんて思いながら聴いてたっけ。
そのときはまだ、ファンじゃなかったからね。
このミュージシャンが誰か、知りたいですか?
ふふ、それは秘密です。
今の世の中、このくらいの情報があれば、きっと該当者が出てきますよ。


もうひとつ、ラジオの話をしましょうか。
これは、とある日の帰り道に、暗い夜道を走る車で聴いたことだけは覚えてる。
本人の番組だったか、たまたま流れたのかまでは覚えてないけど、このとき、電波にのって聴こえてきた曲の歌詞に、僕は感銘を受けた。

「ループ」坂本サトル。

ねえ ここから連れ出して
雨が降ったら それが合図

そのときの僕は、この歌詞のようなことを考えていたから。
自分ひとりでは身動きが取れなくて、でも、この場所から、逃げ出したかった。
申し訳ないことに、坂本サトルさんの曲は、これしか知らないんですけど。
「ループ」は、今でもよく聴きます。
自分が何者か、ここに居てもいいのか、わからなくなったときなんかに。
なんなら、今、聴きながらこの文章を書いてます。

ラジオ番組って、こういう、楽曲との運命的な出逢いというか、知らない世界へ足を踏み入れるきっかけになるというか。
発信する人がいて、それを受信する人がいて。
受け取り方は人それぞれだろうけど、ラジオがきっかけで救われる人も、きっといるはず。
「聴く」ことに特化している分、伝わることも、感じることも、ほかの媒体とはまた違った形になると思うし。
想像力を膨らませる、とでも言えばいいのかな。
ラジオドラマなんてのも、いいですよね。
聴いた人それぞれの世界が、生まれる。
それって、とても素敵なことだと思います。

という、僕とラジオの思い話でした。


「こいつに、飲み物一本買ってやるか」。そんな心持ちでご支援いただけたら、幸甚の至りでございます。