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【短編小説】失われた妖精

凶暴な恐竜が暴れる時代は終わり、世界は楽しくルンルンと素晴らしい世界になった。
しかしその世界は、跡形も無く、何も残さずに全て透明に消えていったので、人々は全く知らない。だが、確かに存在していた。

ピンクと黄色のボーダー柄の羽根を持った妖精。頭からは黄色の触角を生やしている。その妖精が、世界に50億は居た。
それは恐竜絶滅からかなりの時間を経た後、突然一匹現れ、そしてポンッ!ポンッ!という音と共に何匹も現れ、2時間くらいで50億にまで増えた。
そして、三年したら、バシュッ!バシュッ!という音と共に、一匹、また一匹と、消えていくのであった。

その妖精達は、先に金色に光った球が付いている棒を持っていて、それを振り回して遊んでいた。
棒を回すと音が奏でられ、様々な色の光が世界に散らばった。
妖精達は、みな朗らかで、憎しみを持つ事や、妬みを持つ事無く、優しい寛大な気持ちと共に、皆で生きていた。

妖精は、言葉を持たなかった。
だから、表情、行動、棒を回して鳴らす音などで、コミュニケーションを取っていた。

この話が、男は駅のトイレの便座に座ってる時に、天から聞こえてきた。大声で聞こえてきた。
男は、幻聴か!?と思ったが、確かにしっかりと聞こえた為に、本当の事だと信じた。
しかし、誰にも言わなかった。頭がおかしいと思われるからだ。

天使にも、イタズラ好きな奴も居る。
暇を持て余した天使は、たまに、地上に向かって、さっきの話を降り注ぎ、人を困らせていた。
さっきの話は真実なのだが、頭がおかしいと思われるのを恐れ、人々は皆、誰にも伝えず、結局真実は広まらずに終わった。
この、天使のイタズラは、「失われた妖精」という昔話として、ずっと先の天国で、広まっていた。その頃、地上は人類が滅び、AIが搭載された機械だけが動いていた。
妖精が居た時代は、結局、ほとんどの人々は知らずに人類の時代が終わった。

こうやって、同じく天から声が聞こえた僕が真実を語っても、どうせ誰も信じないだろう。
失われた妖精の中のエピソードとして、この小説も語られるんだ。

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