国の広報〜何がどうなっているのか〜

人生会議のポスターは、要望が出されて発送が取り止めになりました。その後その要望への批判などもありましたが、関係者や委員へ再度意見を聞くなど良い方向に向かっているようで、今後良いものが出来上がってくることを期待します。

私自身、厚生労働省の広報に関わることがあるので、その中で感じていることを書きたいと思います。

いま現在は厚生労働省の『上手な医療のかかり方』に関わっていますが、その前に関わったことからお話します。

数年前に引き受けていた予防接種の検討会でのことです。
先月も予防接種のことでは呼ばれていましたが、その際のことではなくて、前回委員だった時代、つまり数年前の話です。

現在の接種票などには非常に難解な言葉が多く、わかりやすいものが必要だと発言しました。
『どんな病気なのか、そしてそのワクチンを接種することでどのくらいその病気を予防するか、効果と副反応についてわかりやすく書かれたものを』と発言しました。

そして、しばらくし、年度を明けてからですが、それぞれのワクチンのパンフレットが出来上がったことを聞きました。
当時の担当者の方には悪いのですが、出来上がったものを見ると、今度はわかりやすすぎる。肝心なことが抜け落ちていました。
そして、非常に悔やみました。
発言を受けて制作に入っているとは、その時の私は知らなかったわけですが、少しでも関与することができたら、と残念に思いました。
配布の方法(PDF版をウェブサイトに置いておくだけでした)や内容の中身を考えても、"これではない"ことは、明らかでした。実際、数年経ってもそのパンフレットは広まっていません。

そのとき、発言したことに安心して手を離してはいけない、最後まで関わらなくては、と痛感しました。

そして、数年経ち、昨年度のことですが、今度は『上手な医療のかかり方』を広めるための懇談会に参加しました。

通常の検討会とは異なり、『伝えること』のプロでもある様々な委員がいるこの懇談会では、啓発活動について、かなり意見が出ました。取りまとめがひっくり返ったこともありました。

どれも、なかなか厳しい意見でしたが、とても大切なものでした。通常、委員が関われるのはこれで終わりです。なぜか?それは、事業が単年度だから。
あとは、事務局側となる厚労省と受託先の事業者さんによって制作物が作られたりといったことが行われるのが普通です。

しかしながら、この懇談会では、昨年度の段階で、どの委員も引き続き関わらせてほしいことを要望していました。特に厚労省の中だけでホームページや動画を作ったり、そういったことが行われないように(わかりにくく、カタ過ぎるものが出来てしまうから)と要望しました。

そして、その願いは叶い、引き続き今年度も関われることになりました。事業も、5カ年の事業となり、単年度の事業とは違う大きな展開が期待できます。

受託先も決まり、委員への制作物のお披露目がありました。

意見を述べる機会となる第一回、とても楽しみに参加した私は、正直、絶句しました。これでは、伝わらないと。

これは、ないだろう、と。

けれど、受託先の業者さんが悪いわけでもありません。
懇談会は昨年度のこと。議事録や報告書を読んだとはいえ、この『不安を解消することを目的に、上手な医療のかかり方を伝えること』というこの文脈を読み解くのはとても難しいのだと、私自身この活動をずっとやってきた者として思います。

医師の働き方ガー!医者は大変だー!だから、受診を控えてー!
では、誰の心も動きません。行動を変えることも、不可能です。
もちろん、窮状を訴えることも大切です。けれども、順番があります。あなたの、あなたの家族の、あなたの子どもの命を守るためにやっていることだということを先に伝えるということ。これが大切です。

その意見を述べる場では、委員の皆さんから、ボロクソと言えるほど、ダメ出しが行われました。
気の毒になるほどでしたが、私も、このままでは帰れないので、率直に上記の通りお伝えしました。

そして、2回目。
しっかり私達の伝えていることの趣旨をご理解いただいたのでしょう。バチーっと作ってきてくださいました。
それはもう、バチーっと。
さすがに広報のプロだなと、心底感心しました。
もちろん細かいところで、こうしたほうが、とは意見を言いましたが、大筋文句なしでした。

これで、決定だと思われました。
委員も厚労省も双方OKでした。
それでも、ダメでした。今度は別のところからNOが出ました。

なんと、難しいことかと思いました。いえ、過去ではなくて、現在も思っています。

まもなく、皆さんに見ていただけるものが、続々と上がってきます。CM、動画、パンフレット、ウェブ広告、記事、など。

委員が関与したものが、これ?と言われるのではないかと正直、心配もあります。伝えた意見が通ったものも通ってないものも、あります。外の方から見たら、言い訳に聞こえるとは思うのですが。。。

上記はポスターや動画についてですが、『上手な医療のかかり方』の母子保健事業について、もちろん私はこれがメインで、携わっています。
連日大量のメールを送り、東奔西走しております。

もちろん、こちらは当会の長年の願いであったもの。
医療のかかり方は、たくさんの人が知ることが必要であり、そのためには自治体の母子保健事業で実施することが大切であること。
子どもを育てる間に医療にかかることが多いからこそ、この時期に学ぶことで、不安が解消されるのだということ。

とにかく乱暴な形で(受診抑制!とか)広まることがないように、きちんと大事なことが伝わるように(あなたのお子さんの命を守るための取り組みだと)と、しっかり内容を固め、必要な機関に繋ぎ、と動いております。

意見を言う場の委員会を終えてからもうどれくらい走り回ったかしれませんが、とにかく個人的なもので終わらせず、しっかりとした機関と繋ぎ、そして今年度はモデル事業止まりですが、次年度以降はしっかりと全国的に自治体で行われる道筋を作っています。

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