ワクチンに反対をしている方の講演に行ったときのこと

私が活動を始めたばかりの頃、もう10年以上前の話ですが、何度か、予防接種に反対をされている方の講演に行ったことがあります。すでに自ら小児科の先生と講座を開催するようになってからの話なので、接種することや、その有効性に迷いがあったわけでは、全くありません。

では、なぜ行ったのか?
怖いもの見たさ!?なんて聞かれたこともあるのですが、当時の私はかなり真剣に

医学を何年も学んで医師になった以上、何かしらの根拠をつかんで、そういうお話をされているのではないか?と思っていたからです。

あるとき、小児科の、反ワクチンでは有名な先生のお話を聞きに行きました。

そのとき、「インフルエンザ脳症のようなお子さんは、うちには来ません。もう随分診ていない。だからインフルエンザの予防接種は必要ない」とおっしゃったのです。
これには、驚きました。

インフルエンザ脳症のお子さんは救急外来、あるいは2次救急、重症度によっては3次救急の医療機関に行くので、この先生がされているようなクリニックには、通常、行きませんよね。

しかも、これまで来なかったとしても、これから来るときのことを全然考えていない、打たずにかかる可能性がある子のことを全然考えてない姿勢に驚きました。

この出来事を機に、私は反対派の講演を聞きにいくことを辞めにしました。こんな根拠があるんだ、と納得できたお話は、ありませんでした。そこには、素人の私でも見破れる嘘やごまかしがありました。けれども、お話はとても巧妙なので、小児科医による講座を受ける前だったら、私もその場では信用してしまっていただろうな、と思います。

私は、打たないことを推奨している反対派の先生が、重症化したら私のところへ来なさい、責任をとるから何かあったら私のところへ来なさい、と話してくださるのではないか、と思っていたのです。そこまでの覚悟を持って、やってらっしゃるのではないかと。

現実には、そんな方はいませんでした。

当時、いわゆる大勢いらっしゃる普通に接種を勧奨する先生方と反対派の先生とで、議論できる場を設けようとしていたことすらあります。企画も、立ち上げていたのです。このこと(うちには来ません。随分診ていません、の先生のお話)を聞いたあとで実施することは辞めました。無意味なことなのだと知ったからです。無知でした。

反対派の先生は全体から見ると、ごく一部です。
小児科の先生ならば全体で1万7321人(2018年。なのでもっと増えていることと)、反対派の小児科の先生方は、全国で18人くらいでしょうか。(別に内科の先生が22人くらいですかね。ネット上から予防接種に反対している自然派の医師、で数えましたが他にもいるかもしれません。)
どれほどごく一部の先生方の主張なのか、とわかるかと思います。

以下にも書いたように迷う親御さんにはこれまでもこれからも精一杯耳を傾けようと思っていますが、予防接種の有効性を否定し根拠のないことを広めようとする医師・看護師・助産師には、当時、かなり怒りを覚えていました。今は、怒りはなくて、ただ、迷う方にこそ確かな情報を伝えたい、その一心です。

この記事は医療者向けに書いたものなのですが、一般の方から予防接種についての不安やそれを解消できたことなどがかなり寄せられました。とても勉強になりました。ありがとうございます。

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