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永遠に乾かない夜と。
「ほんまにね、悲しいことってたくさんありますよ。生きてりゃそりゃ。で、まあ、じゃあ死んだら悲しいこと無くなるのかっていったらそんなのも分かんないじゃないですか。死んでた頃のこと忘れちゃったし。でも、そんなの全部置いといてね、わたしは今どうなのか。そうです。わたしは今、悲しい。家にあるバスタオルが全部、すべて湿ってて悲しい。濡れたバスタオルで濡れた体を拭いても、何も変わんないから。濡れたバスタオルで
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お葬式から同居人が帰ってきた。
前日に「あした葬式だから帰ってきたら塩かけてくれ」と言われていたので、もうすぐ帰るよという同居人からの連絡を合図に塩を食器棚から取り出して袋ごと持ち、玄関で待ちかまえていた。
がちゃりとドアが開いた瞬間、ひとつまみした塩を豆まきと同じ投球ホームで同居人にふっかけた。
そのあと、おかえりとただいまを言い合いながら2人でいっしょに家の中に入った。
人は、死ぬらしい
でも別にポテトサラダは作る
「手っ取り早いし、こっから飛び降りるね」って女の子が言った。規則正しく並んだ机たちの合間を縫って窓を覗き込む女の子のことは、どこかで見たことがある気もすれば全くそうじゃない気もする。名前は分からない。私も、女の子の隣に立って3階から眺める。たしかにここからなら確実だろうな、と思った。飛び降りるという行為に不穏な意味が孕まれていないことは、ここ最近では珍しく地に足ついた意識のおかげで既に分かっていた
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