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子育てパニック 金銭感覚

 スーパーのコロッケが一個110円だった。真愛が、小学校3年生の時はコロッケ2個で10円だった。50年で22倍になったのだ。
 1個5円のコロッケは、薄い紙の小さな袋に入れてくれた。温かくて直ぐに食べたがったが、それはお弁当用で昼までには冷たくなっていた。
 もちろん、お弁当の中身は麦ご飯と梅干しだけ、アルマイトのお弁当の蓋を立てて、見せないように食べた。貧しい子の得意技だ。
 真愛の幼い頃の朝食も夕食も肉は滅多に出てこない。(兄が中学生になってからは、兄には肉がついた。真愛は肉に慣れず肉嫌いだった。)
 更に、遡ること数年。
 小さな真愛が初めてお小遣いをもらったのは、5円だった。家から100メートルも無い駄菓子屋さんにほしいお菓子を買いに行った時だったと思う。
 3歳ぐらいの時だったと記憶しているので、なかなかのおしゃまさんだったのだ。
 きっと母の葦編「海苔を貼り付ける四角い葦簀」の内職金がもらえたので、一緒に歩いて行ったご褒美だったのかもしれない。
 五円を握りしめ、駄菓子屋さんで砂糖菓子を買った。
 初めてのお小遣い。
 初めての一人での買い物。
 ウキウキ・ルンルン気分だったのだろう。駄菓子屋さんの横にあるどぶ板を飛び越えたが、3つでは、足が足らなかった。
 側溝の端におでこを撃付け流血!
 100メートルの道を血を垂らしながら、五円のお菓子を握って帰って、驚く母にお菓子を見せて言ったそうだ。
「こんなになっちゃった。」
「こんなになっちゃたのは、
 真愛ちゃんのオデコでしょ?」
 真愛は、5円で買った砂糖菓子が壊れて、血だらけになってしまった事が悲しかったのだ。
 あんな痛ましい事件はないと思っている。

 傷口を塩で消毒され、手拭いでキツく縛って、知り合いのおじさんの自転車の後ろに乗って病院に行ったが、あいにく先生が往診中で不在。
 先生が帰って来た時は、真愛は虫の息だったらしい。直ぐ縫合するので麻酔をかけてる暇はない。そこで先生は真愛に言った。
「真愛ちゃん。
 ちょっと痛いけど、泣かないでいたら、
 前のお店でペコちゃんの飴買ってやるぞ。」
それを聞いた真愛は、手術中、飴欲しさに自分の唇を噛んで泣かなかった。


 オデコの傷で熱も出たが、唇もオデコも腫れ上がり、ひどい顔だったらしい。
 小学一年の兄が、真愛の顔を見て「真愛が可哀想。」と泣いたそうだ。
 当の本人は、戦利品のペコちゃんの飴を抱えて笑っていたと言う。


(何年経っても性格は変わってなさそうだ。)
 さて、その頃のペコちゃんの箱飴は50円だった様だ。
 3歳の真愛には、下唇を噛み切っても貰いたい飴だったのだ。金銭感覚は最高だったと思う。
 そんな真愛も母になり、息子にいつお小遣いを渡すのか悩んだものだ。
 教師でありながら、こと子育てについては至らない事が多かったと思う。
 小学校に入学した頃に、欲しいものがあると親に相談してから買う様にさせた。
 4年生でこの地域に転校してから、友達と遊ぶにしてもお小遣いが必要だったので月極めで600円だった気がする。
 お店が少ない地区だったので、それで済んだが中学校になって色々と必要になったのに、あまり渡さずにいたのが、申し訳なかった気がする。

 さて、子どものうちから金銭感覚を養う事が大事なのは
⓵現代社会において、大人がお金を使っている姿
 を見る機会が減っているから
⓶社会構造が変化しているので、バランスの取れ
 た金銭感覚やお金の知識が必要である。
⓷金銭トラブルが低年齢化をしている。
 ゲーム課金悪徳商法の相談が多くなっている。
 難しい事ではなく、親が知っている範囲のことを伝えてやりたい。
・働いたら銀行にお金が振り込まれる。
・収入以上にお金を使ってはいけない。
・スマホ画面をタップしただけでお金は支払われ
 る。etc。

 お小遣いについて
 本物のおかねを管理したり、欲しいものを買ったり、貯める大変さも味わだたりする中で、お金の重みを学ぶことになる。
 スタートは小学校入学から4年生ぐらい。親子でコミュニケーションを撮りやすい時期が良いそうだ。
 渡し方は、定額制と報酬制をミックスした形が良い。加点式の報酬制にすると家事の手伝いも喜んでしてくれる。ただし、本来のお手伝いは、家族として当然のことで、「お母さんには、報酬を渡してない事。」報酬ではなく愛情として行っていることにも気づかせたい。
 真愛は、小学校教育で「家計簿」なんて話をしたが、しっかりとした「お金の教育」をしてこなかったと思う。
 お金の使い方の練習として、校外学習の時に話をした。
 お金を貯める練習として、日々のお小遣いの使い方を考え直させた。
 しかし、お金を生かす練習をさせた事がない。 
投資の話もしなければ、人のために未来の地球のために使う話もしなかった。
 日本は「お金を貯めるもの」として教えるそうだ。
 海外では「お金は増やすもの」と学ぶそうだ。
 真愛の様な見識が狭く、お金を投資で稼いだ事がない教師では、「増やす事」の意味も方法も語れない。
 最近では、高校の家庭科で、「資産形成についての授業」で、株や債券・投資信託について学んでいるそうだ。

 最後に、金銭感覚を身に付けさせるためには、失敗から学ばせることも大切である。
・お金の貸し借りで失敗することも
(真愛も息子も友達とのお金の貸し借りで、
 手痛い思い出がある。
 だから、他人から借金をする事が無い。
 とても良い経験をしたと思う。)
・お金をあげても、もらってもいけない事。
(預かって置いて!と頼まれたお金が、
 親の財布から剥き取ったものだった
 なんて失敗もした。)
・お小遣いを使いすぎて、一時の誘惑に負けず
 お金を使う時には考えることも失敗すればこそ
 のことだ。

 子どもがよく使う手で、
「みんなが持ってるから、買って!」
と要求する。そんな時は、
「みんなって誰と誰ですか?」
と名前を挙げさせると良い。
 大体、皆んなではなく、自分の友達だけである。
 大事なことは、親の金銭感覚が子供の金銭感覚に影響するということだ。
 お金を生かす使い方ができる人の子は、必ず、貯めるだけではなく、「人の幸せのために使える財力」を持つみたいだ。

 欲しい物のために、唇を噛み切っても我慢をする幼い頃の真愛の凄まじいエネルギーを持ち続けていたら、人生は大きく変わったかもしれない。
 でも、浪費家で家に給料を入れなかった厚洋さんのお嫁さんではいなかったと思う。
 真愛は、「お小遣いが足らないのに…。」と言いながら、コーヒーとケーキを食べてしまう。
 厚洋さんに似た金銭感覚で、幸せだと思う。
 そうそう、占いの友達によれば、真愛は
「正財」で、
 正財は四柱推命の星の中で最もお金に困らない星と言われているそうだ。
 真面目で安定的な収入が得られる環境を好むので継続したお金がコツコツ入るという。
(公務員だったから、その通りだね。)
 また貯金なども好むためお金がたまりやすい星と言われているそうだが、どうも貯金をしないタイプだ。
「江戸っ子だい。
 宵越しの金はモタねぇぜ!」
って、3代続いた江戸っ子気質がいけないんだろうねえ。

 御酉様で、熊手を買っても貯まりません。

ありがとうございます。 愛しい亡き夫厚洋さんに育てられた妻「真愛」として、読み手が安らぐものが書ける様頑張ります