戸田恵梨香さんという可憐なる演技の化身

『DNRオーダーは翼くんを死なせるって書類なんです!直美さんはすでに意思表示されていた。なのに、そんな書類にサインをさせろって言うんですか!?家族を死なせることに同意する書類に!?翼くんを救えなかった、、だったらせめて残された家族の悲しみに寄り添いたかった。私は、平気でそんなものにサインをさせる医者は狂ってると思います。』

ドラマ「コード・ブルー2」で当時わずか22歳の戸田恵梨香さんが見せた迫力にぐっと息を飲み、目頭が熱くなって何度も何度もそのシーンをなぞった。蘇生措置拒否(DNRオーダー)のサインを取らずに幼い子供の人工呼吸器を抜いてしまったことに対して、訴えを受けてしまう研修医が遺族や弁護士に想いをぶつけるシーンだった。戸田恵梨香さんがこのシーンで発したエネルギーは、自分が観てきたドラマや映画の中でも類を見ないほど強烈なものだった。

戸田恵梨香さんはLIAR GAMEの神崎直のような天真爛漫さからSPECの当麻の半狂気さまで、驚くほど幅広い役を演じられる数少ない本格派で、彼女を目的にドラマや映画を観る人も少なくない(自分もその一人です)。凄い役者さんなのは誰しもが知るところなのだが、その数々の名演の中でもこのシーンは特に印象的だった。その内から迸るエネルギーの根源は何なんだろうか、他の役者さんと何が違うのだろうか、などと当時からぼんやり考えていたことを覚えている。

7年間の時を経て、2017年にコード・ブルー3が始まった。新たに研修医・看護士役として新木優子さん、馬場ふみかさんが加わった。その二人が選ばれた最終オーディションで演技テストとして用いられていたのが、「あの」シーンだった。制作側としても思い入れのあるシーンであり、役者としての力量が図られるということなのだろう。人気シリーズの重要な役柄に選ばれるだけあって、お二人とも個性を出した素晴らしい演技をされていた。その上で戸田恵梨香さんが放ったエネルギーの圧倒的な凄まじさを改めて感じることにもなった。

あの可憐で華奢な体から放たれた一瞬の波動が、10年も経った今になって1人のにわかファンにつらつらとその想いを綴らせている。そんな生涯の記憶に刻まれる一瞬に出会えることを期待しながら、これからも役者さんの様々な演技(生きざま)に触れていきたいと思っている。

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