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友の会会員が選ぶ「今年の3冊」DAY.3

hiro 選:「今年の3冊」の著者宛に「出さなかった」手紙

私の「今年の3冊」は、以下の通りです。
1.『三体』
2.『「舞姫」の主人公をバンカラとアフリカ人がボコボコにする最高の小説の世界が明治に存在したので20万字くらいかけて紹介する本』
3.『パリ左岸:1940-50年』

以下は、「出さなかった」著者への手紙の一部です。

1.劉慈欣さま

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『三体』はとても面白かったです。日本でも前評判が非常に高かったです。私は、7月はじめに、「『三体』翻訳者 大森望さん×作家 藤井太洋さん トークイベント 劉慈欣著『三体』早川書房 刊行記念」に出かけて、その場で本を購入し、大森望さんのサインも貰いました。このような盲目的ファンを日本ではミーハーと言うのです。
私は、しばらくSF本の読書からは離れておりました。今年始めの、月刊ALL REVIEWS友の会のイベント後の雑談時に、ゲストの牧眞司さんから『三体』を直接勧められたのが、読むきっかけでした。

読後には、SFの世界にやっと復帰できたのだという喜びが湧いてきました。一方、続巻の翻訳はまだか、という「『三体』ロス」に悩まされています。東京の本屋街である神保町の中国書籍専門店で中国語の続巻を手にとりましたが、変な自制心が働いて、結局買わずに店を出てしまいました。スミマセン。

ALL REVIEWSには『三体』の記事が2つあります。
訳者、大森 望さんの解説。
https://allreviews.jp/review/3590
若島 正さんの書評。
https://allreviews.jp/review/3738

2.山下泰平さま

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『「舞姫」の主人公をバンカラとアフリカ人がボコボコにする最高の小説の世界が明治に存在したので20万字くらいかけて紹介する本』、こんなユニークな本は初めてです。題名が長すぎて、Tweetもしにくいし、書評も書きにくいらしく、残念ながら一般には知られていない可能性がある気がします。

私は紙本原理主義者ではありませんので、Kindle本で購入しました。この本の性格上、電子書籍がいいと判断しました。これは次の理由で正解でした。
明治期を中心とした昔の本の引用が、たくさん本文や注などに含まれております。それらを、国会図書館デジタルコレクションなどで、「原本」を参照しながら読むのがこよなく楽しかったのです。

この過程で派生して読みふけった昔の本、もちろん貧乏な私なので国会図書館デジタルコレクションでですが、それらの本の一部分たちを「OLD REVIEWS」と名付けて、自分の日記ブログにため込む。この、楽しい作業のきっかけを作ってくれた、『「舞姫」の主人公をバンカラとアフリカ人がボコボコにする最高の小説の世界が明治に存在したので20万字くらいかけて紹介する本』には感謝しかありません。でもやはり題名が長すぎます。

最後に。Twitterでもフォローさせていただいてます。こちらも楽しく読ませていただいてます。

3.アニエス・ポワリエさま

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『パリ左岸:1940-50年』、をやっと一昨日読み終えたばかりです。この本は月刊ALL REVIEWSの対象本でした。ご存知ですよね。ポワリエさんには、ビデオ収録現場でお会いできて光栄でした。

失礼ながらまだお若いポワリエさんが、すごいバイタリティーで資料を集め、関係者に話を聞き、そして驚きの構成力で作り上げた本なのだと感動しております。木村さんの翻訳もすばらしく、これは永久保管本だと思っています。

1940年から50年のパリを中心とした、ボーヴォワールやサルトルそしてカミュなどの「文化人」たちの群像の描写がスバラシイ。彼らが生み出した「実存主義」などの活動は、一時は「第三の道」を政治的にも押し出しましたね。政治活動としてはすぐに力を失うが、ヨーロッパ共同体に理想は引き継がれたし、哲学・文学・映画芸術などでは世界的な影響を与え続けている、というポワリエさんのご意見には全面的に賛同します。

私は、60年代終わりの学生運動の最中に、夜は徹夜でサルトルやカミュに読みふけり、昼は街頭デモに参加したりしました。そのエネルギーの源流はこの本に書かれたことのなかにあります。そして、それ以前、1946年前後の日本でもやはり、「第三の道」の動きが地方にもありました。これは、私の義父の経験と著書によって知っています。

『パリ左岸:1940-50年』に登場する、ほぼすべての人物やその著書は、今までの自分の読書生活の対象と符合しています。おかげさまで、読んでみたい本や再読したい本が新たに10冊以上出てきました。良い本を書いていただき、ありがとうございました。

P. S.貴書に関しての、ALL REVIEWSでの鹿島茂先生のコラムはここにあります。日本語ですけれど。
https://allreviews.jp/column/3838
同じく読書日記はここです。
https://allreviews.jp/column/3845


【記事を書いた人】hiro

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