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『Aqua Loop』の歌詞に関する個人的解釈とその周辺

2020/4/30 0:00に VTuber 式部めぐりの1st Single『Aqua Loop (feat. TEMPLIME)』がリリースされ、同日23:00にMVも公開されました。
この記事では、『Aqua Loop』の歌詞について筆者なりの解釈とその周辺をお話ししたいと思います。
※公式の解釈とは異なる場合がありますので、その点ご容赦ください。

楽曲情報

Aqua Loop (feat. TEMPLIME)
Vocal : 式部めぐり
Music/Lylic/Arrange/Mix : TEMPLIME [KABOSNIKKI / tempura]
Artwork : PEETAM
Movie : オニマル

式部めぐりとは

この曲の解釈をする前に、まず「式部めぐり」がどんな人であるか知っておく必要があるでしょう。

「式部めぐり」は2/8にデビューした新人VTuberであり、実はデビューからまだ3か月経っておりません。(記事執筆時点)
活動場所はYouTube,REALITY,SHOWROOMを主な拠点としており、特にYouTubeでは、以下に示すようなカバー曲の公開の他に、シーマンやクラッシュバンディクーといったゲームの実況も行っています。

またREALITYやSHOWROOMでは、イベントへの出演権等を賭けた、いわゆる「争奪イベント」の入賞歴も豊富で、記事執筆時点(5/4)において、
・バーチャルユニットフェス「VILLS」出演権獲得
 (※当該イベントは無期限延期)
・コンプティーク掲載 + SHOWSTAGE単独ライブ権獲得
・ゆうゆPによる楽曲提供(YuNi&鹿乃コラボ)最終審査進出
と、非常に輝かしい結果が並びます。
このあたりの話については、メルクマ氏のnote記事に詳しくありますので、良ければこちらもご覧ください。

このような彼女ですが、性格は意外にも内向的で、プロフィールでは自身のことを月🌓に例えています。それは、他人を明るく照らすような太陽ではないし、また時には影が落ちたりもする、ストリーマーとは真逆の人間的な印象を受けます。

また、『平安のこじらせ系文学少女』と表現しているように、平安時代の歌人・紫式部に自身を重ねたりもしています。(実際、この『Aqua Loop』でも紫式部の有名な和歌をイメージした部分が登場しています。)

紫式部はよく同時期に活躍した清少納言と比べられることが多いですが、「もののあはれ」と言われる一種の無常観的美感覚を著した他に、『紫式部日記』で見られるような陰キャな性格があり、これも式部めぐりをとらえる上で一つの大きな観点と言えるでしょう。

『Aqua Loop』解釈~主題

さて、本題の『Aqua Loop』を見ていきたいと思います。

まず結論から言うと、この曲は「式部めぐり」そのものでしょう。

というのも、彼女自身を歌った曲として歌詞を見てみると、なるほどその通りだなと腑に落ちる箇所があります。

「いつも上手く立ち回ってさ」
誰かのセリフがよぎる
言うほど器用じゃないの
自分がもっと嫌になるよ

前項で述べたように、彼女の受賞歴は非常に華々しいものがあります。一方で、全てが図ったかのようにとんとん拍子にうまく進んでいる、デビューしたての新人VTuberらしからぬところがあるのも事実です。その中で、歌詞にあるような妬み嫉みを受けたことがあるとしても不思議ではありません。
また、それに対して言い返したりするのではなく、"自分が嫌になる"と自己嫌悪・否定してしまうところも、内向的・陰キャな彼女らしさを感じます。

MV中にも出てきているジャケットイラストもまた、この曲が式部めぐり自身であることを暗示しているように見えます。

グラスの底にいる
まだ知らない"君"に会える

まさにこの歌詞のように、グラスの底に沈む彼女が描写されています。

そうして見てみると、サビで歌われている

もう意味なんて無くていいから
ただ日々をループしたままで

も、彼女が自身を重ねている紫式部の「もののあはれ」らしさを感じることができます。

『Aqua Loop』解釈~周辺

ここからは、前項の解釈を仮定した上で、その他の部分の歌詞について見ていきます。この項は、より強く筆者の想像が働いているため、その点ご承知の上、読み進めていただければ幸いです。
(この項では、歌詞は省略して記載します)

旅に出た理由はそれほどないけど

まだ知らない私になれる

最初のサビまでの部分です。ここは、過去から現在にかけての「式部めぐり」のことを歌っているように見えます。

確固とした目的があってVTuberとしてデビューしたわけではないものの、意外とすぐに順応してしまった、ある種の器用さがここでは見えてきます。(その器用さは後で否定されるのですが)

そんな中、「一体私って誰?」という問いかけがなされます。
彼女は「多分何度だって まだ知らない私になれる」と回答しているわけですが、これはまさに哲学者サルトルの実存主義的な考え方といえるでしょう。すなわち、「式部めぐり」としてさまざまな活動をしていくことで、「式部めぐり」が形成される、という考え方です。
これは、後半に出てくる自己嫌悪に対する回答の

でも私は私でしかない

にも通じて見えてきます。
そうした考え方からすると、冒頭「旅に出る理由はそれほどない」のも特別おかしいわけではなかったように思えます。

水中都市 柔い月が照らす
フロアは今日もゆらゆらと

式部めぐりは、デビュー時からDJに興味があると公言しており、『Aqua Loop』もDJ的要素を取り込んでいると話していました。このサビ部分は、そんなDJのいるクラブが容易に想像できるような描写がされています。

一つ先の未来=淡い月が照らす

今はずっとループしていたいの

2回目のサビ部分です。ここは前述した紫式部の和歌「めぐり逢ひて 見しやそれとも わかぬ間に 雲がくれにし 夜半の月かな」がイメージされている、ということでした。
ここが他の歌詞と違って特徴的なのは、「一つ先の未来=淡い月」というある種の特別な表現となっているところです。直接的には月と太陽が入れ替わるとき、つまり明日のことが"一つ先の未来"なのかなと思いますが、この表現によって月である彼女自身の一つ先、未来の姿が暗喩されています。
ただ一方で、「今はずっとループしていたい」とも言われており、そんな未来だけではなく、現在の状況も受け入れているところに彼女らしさを感じます。願わくば、このループが少しでも長く続きますように。

終わりに

いかがでしたでしょうか。筆者の初めての記事ということもあり、後半についてはかなり散らかった内容になってしまいましたが、お伝えしたかったのは『Aqua Loop』は式部めぐりそのものである、ということです。是非この曲をLoop視聴していただき、VTuber式部めぐりの行く先を皆さまにもご覧いただければと思います。

『Aqua Loop』全歌詞

旅に出た理由はそれほどないけど
遠い場所へ向かう
不思議と一人でも 
寂しくないや

新しい街は思ったより
すぐ日常になった
たまには忘れかけの
古い曲かけてみるの

「一体私って誰?」
覚えたての言葉で伝えたよ
多分何度だって
まだ知らない私になれる

水中都市 柔い月が照らす
フロアは今日もゆらゆらと
もう意味なんか無くていいから
ただ日々をループしたままで

「いつも上手く立ち回ってさ」
誰かのセリフがよぎる
言うほど器用じゃないの
自分がもっと嫌になるよ

でも私は私でしかない
染み付いてた此の声で伝えたよ
グラスの底にいる
まだ知らない”君”に会える

一つ先の未来=淡い月が照らす
水面は今日もゆらゆら と
どうせすぐ隠れてしまうなら
今はずっとループしてたいの

水中都市 柔い月が照らす
フロアは今日もゆらゆらと
もう意味なんか無くていいから
ただ日々をループしたままで

水中都市 柔い月が照らす…
もう意味なんか無くていい…
日々をループしたままで


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