『宝逃』

くまのぬいぐるみは、俺の宝物だ。

小さい頃、母親に買ってもらった。その直後、

母は俺を施設に預け、行方不明となった。

父の暴力から逃げるにはそれしかなかった。

あれから20年。母に会うため探してもらった。

よく訪れるという公園に来て、すぐに判った。

親子3人で遊んでいる。あれは義理の弟か。

ボールが俺の方へ転がり、弟がやってきた。

「貰ってくれないか?」くまを差し出した。

「いらなーい。お兄ちゃん泣いてるじゃん」


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