見出し画像

【連載小説】ファンタジー恋愛小説:風響の守護者と見習い賢者の妹 第二十五 簒奪政権の国王ゾディアス


前話


本文

「ふん。これが水の国王の妹、とな」
 黒ずくめの服を着た男が、長いひげを撫でながらリリアーナを見る。ヘビのように体を見られてリリアーナは虫唾が走った。
「ほう。生意気にも俺のモノにはならない、と?」
「当たり前よ! セイレンだけが私の相手よ!」
 リリアーナがきっと見据える。そこへ風の国の宮殿が揺れた。国王の椅子の背に弓が一本刺さった。
「セイレン……?」
 弓を放ったのはローレライだった。だが、リリアーナの足を縛っているヒモを解いているのはセイレン本人だった。
「ごめん。君を一人にした。私のせいだ」
 そう言って軽く片手でリリアーナを抱き寄せると顔を上げてゾディアスを見る。ゾディアスは逃げることもせず、そのまま見ている。
「一から十までしらない小僧に何ができる。そのまま死んでしまえ」
 ゾディアスが指をちょい、と動かす。それより早く、リリアーナが着ているローブをかざす。アイシャードの掛けた魔法がゾディアスの魔法をはじき返す。
「アイシャードか。うっとうしい奴め。ゼフィリス! このまま無事でいられると思うな。いずれ、お前からこの国を奪う。いや、もう奪ったのだな。もう、私の目の前に来るな。目障りだ」
「私は必ずここに戻ってくる! その時になって慌ててもしらない。首を洗って待っていろ! 行こう。リリアーナ。ここはネメシスの気が充満している。体に悪い」
 セイレンはリリアーナを抱きかかえるとそのままシルフィに乗る。シルフィの隣には厳しい目をしたレオポルトがイーカムに乗っていた。
「おにいちゃん」
「何も言うな。放っておくように言ったのは俺だ。今はリリアーナが無事なだけよかった。ゾディアス。この名前はお前が倒れるまで忘れまい。俺達を敵に回したことを後悔させる。行くぞ、イーカム。シルフィ」
 風の国は空中にある。そこから水の国の宮殿の裏庭まで戻る。
「帰ってきたんだ……」
「リリアーナ!」
 セイレンの腕の中でリリアーナが気を失う。
「熱が! あの邪気に触れたせいで。私がもっとしっかりしていれば……」
「反省するのは後でできるでしょ。アイシャードを呼んで。ローレライ」
 ユレーネがリリアーナをセイレンから奪い取るとローレライに言う。
「もう来ていらっしゃいます。こちらに」
 察しの早いカールがいる。
 リリアーナの私室にアイシャードがすでに座っていた。
「孫をみすみす死なせる気は毛頭無い。我が力のあらん限りネメシスの毒を解消しよう。リリアーナをベッドへ」
「アイシャードお願い」
 兄のレオポルトはまだ一言も言っていない。すべてユレーネとローレライの間で進んで行く。
「レオポルト様。これからの旅は私一人で……」
 決意を持ってレオポルトに言うと、レオポルトはにっこり、笑う。
「妹をこんな目に合わせたのだから敵は必ずとる。お前も一緒だ。一緒に風の国を取り戻す!」
「ですが。このようにリリアーナ様が……」
「リリアーナに対する気持ちはわかったのか?」
 へ? とセイレンはレオポルトを見る。
「リリアーナを嫌いでは無いな?」
「大事な……人です。誰よりも……」
「今はその答えで我慢してやる。そろそろ装備ができているだろう。リリアーナはあいつらにまかせてフロリアンの工房へ行くぞ」
「れ……レオポルト様」
「レオ!」
「はい。レオ!」
「お前にはリリアーナの護衛を務めてもらう。それなりの事を学んでもらうからな」
「ご……護衛!!」
 また悲鳴を上げそうになって慌てて止めるセイレンである。
「そうだ。その通りに悲鳴は自分の中に置いとけ。むやみやたらと騒ぐと今回のようになる。リリアーナが戻ればそく出立する。覚悟しておけ」
「レオポ……」
「だからレオ! 兄上でも良いぞ」
 イーカムに無理矢理乗せて会話を進める。その姿をユレーネは視線に入れておくとまたリリアーナの方に向いた。レオポルトも相当怒っている。だが、その原因が自分が泣かせてやれ、と言ったことに始まる故、表に出さないのだ。失敗もあるが、それを自分だけには許さないのがレオポルトだった。精神のバランスが崩れないと良いけれど。案外繊細な夫の心に危機感を抱くユレーネだった。
 倒す相手がわかった。ゾディアス。アドルフと同じ。
 闇の組織ネメシスに魂を売っている。
 
 早く国を戻さねば。
 
 皆、リリアーナとセイレンを心配してこれからの事を憂慮していた。


あとがき

ちょい出で悪者さんがでてしまいました。このくだりは、ChatGPTさんとの打ち合わせにはなかった出来事です。こうやってまったく道がそれた話が入るので、ほぼ自分だけで書いてるようなものです。セイレンの女性恐怖症とか芋虫にもおびえるところとかもオリジナル設定です。桐の箱で育てられたセイレン。あのスリリングな仲間達に入ったことで、とんでもなくスリリングな境遇になっているのでした。と。これやっと朝活スケジュール通り進んでいます。あとは星彩のみ。途中で設定をいじったため途中で終わってます。今日はあれを書いて(って、岡田監督のアレではないです。無論)また風響の守護者と見習い賢者の妹を増産しましょうかね。とりあえず他の話はこちらが終わってからが狙い目です。でも風響の守護者と見習い賢者の妹終わってもまだ第三部が存在するような気がします。カールくんの三つ子がどうも気になっていて。設定してもなんだかこの三人のラブコメが書きたいんですね。恋のから騒ぎ、です。では星彩を更新しますー。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?