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【連載小説】恋愛ファンタジー小説:最後の眠り姫(77)

前話

 カロリーネお姉様の婚礼が始まった。確かに、正式な婚礼での教皇様の話は長かった。これが私たちにも訪れるのね。クルトと二人で小さなため息をつく。すると前に座っているお母様がちらりと視線を投げかけてきた。まるで楽しんでるみたいな視線で、私たちが困るのを期待してるようだった。
”クルト。あなたのお母様もたっぷり楽しんでるわね。花嫁の母というより”
”困ったお方だ”
 心の声で会話ができるのをいいことに、私たちは上の空で儀式に臨む。そのうち、指輪がはめられ、あっという間に誓いの口づけとなった。いつの間にと思いながら。それだけ上の空だった。自分たちの時を思うと辟易する。クレメンス様が嫌いではないけれど長ーいお説教と夫と妻の心得をこれ以上長く話されるとなると開いた口も閉じるしかない。もう、左から右に通すしかない。そんな私たちにクレメンス様がちらりと見る。
 バレた。
 私たちは気を付け、の姿をしてクレメンス様の言葉に耳を傾けるしかなかった。
 こうして、カロリーネお姉様の婚礼は王女から子爵夫人にとご降下の儀式にもなった。王女の称号はあるけれど、もう侯爵家の妻として生きるつもりをカロリーネお姉様はしているようだった。あれだけ身分の違いを乗り越えられた純粋な愛に私はさぼって参加していた割には感動して最後には涙を浮かべていた。クルトが拭ってくれる。
「俺たちもこれ以上ないほど幸せな式にしようね」
「クルト。大好きよ」
「もう一声」
「クレメンス様がにらむからまた後で」
 ちぇ、とクルトが拗ねる。私は初めてちゅーと言いながら頬に軽くキスをしたのだった。
 カロリーネお姉様の婚礼パーティーはアットホームな感じで進められた。王女として最後に派手にするのかと思えば、つつましやかな生活へ移る決意の表れだった。お母様もお父様も感動なさっている。このパーティーはカロリーネお姉様とシュテファンお兄様が計画を立てたとクルトから聞いていた。そう。シュテファン様はついにお兄様となったのだ。家族がまた一人増えて私はうれしかった。にこにこと楽しんでいるとカロリーネお姉様の声がした。ふと見上げると、ぽす、と花嫁のブーケが両手に落ちた。
「次はエミーリエが幸せになる番よ。姉の愛をたっぷりこれからも受け取ってね」
 またもお人形ごっこの計画を立てているお姉様に恐怖を感じる。嫁いでもその行動だけは変わらないようだった。自分のお子様になさればいいのに。
「ほんとだ」
 隣のクルトがいう。
「なぁに。また二人の秘密の会話? 声に出して会話してよね。二人だけの世界を作って割り込むの苦労するんだから」
「お姉様はシュテファンお兄様と暖かい家庭を築くところでしょう? 割り込む時間はありませんわ」
「いーえ。小姑としてしっかり関わらせもらうわ。こんなかわいい妹を持ってるですもの。もったいないわ」
「お人形ごっこはお子様でしてください」
「あかちゃんじゃ、服が少ないわ」
 え? 
「もしや、そのおなかには」
 もう、お世継ぎが?
「いるわけないでしょう? 清い仲よ」
「カロリーネ様。エミーリエ様は妹。夫をほったらかしにしないでください」
 シュテファンお兄様がやってくる。
「あなたこそ様をとってと何度も言ってるでしょう」
「長年の癖は……。はいはい。か、カロリーネ。ウェディングケーキにナイフを入れる時間だよ」
「あら。もう、そんな時間。じゃ、エミーリエ。またね」
 不気味な笑みを浮かべてカロリーネお姉様はシュテファンお兄様に腕を絡めてケーキのある所に向かう。いいご夫婦になるわ。
「俺たちもね」
「そうね。ケーキって必ず作るの?」
「エミーリエがいらないなら作らないよ」
「あれはいらないわ。ただでさえ、式にはお金がかかってるのだもの。東にけん制の意味も込めてあげるんだもの。質素でいいわ。ウェディングドレスにうんとお金をかけたもの」
「そういうわけにもいかないけれどね」
 皇太子となれば多少の出費は致し方ない。それでも結婚パーティーは開く必要があるのかと思う。お姉様はシュテファンお兄様の親族に見せる必要があるから開かれたけれど、私たちには城下のパレードもあるのだもの。
「それも大臣への示しだよ。おもてなししないといけないんだ。そこで俺たちの力量がまず試される。権力は時としてお金を使わないといけない時があるんだよ」
「そうなのね」
 私は目の前にあるカロリーネお姉様が招待客に作ったお菓子の山の一角を崩しにかかったのだった。


あとがき
はい。今日も年末年始仕様の見出し画像です。三が日が終われば元に戻しますね。なんか、これじゃないのよねー。やっぱり質素な方が。というかAIの手にかかってない方がいい。昨日からメンバーシップの記事の小説に取り掛かってます。題名も変えることにしました。副題は変えないけれど。溺愛ものには変わりない。どうなるかはしらないけれど。一応、驚くべき趣向を持ってこようかと。結局そこですか? という。当たり前すぎる展開かも。明日は阪神タイガースのグッズ買いに行きます~。大阪まで遠征だー。あとは掃除と執筆と水槽のメンテ。一日が新しい財布の使い初めにいいので、コンビニに行ってデビットカードに入金してきます~。初参りもなにもないですよ。我が家はカトリック~。でも父が亡くなったので教会から連絡も来ず。どこお参りに行こう~。いいとこないですか? 関西?

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