第百四十七回 Gt 虎|MOVIE TORAVIA「ブルース・ウィリス」

今回はブルース・ウィリスについて考察していこうと思います。今年の3月、失語症のために俳優業引退を発表しちゃいましたけども、ブルース・ウィリスと聞いて誰もが一番に思い浮かべるのは「ダイ・ハード」シリーズ。

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「ダイ・ハード」(1988)

「ダイ・ハード」があそこまで日本でウケたのは、日本語の吹き替えを担当していた人(作品では桶浦勉が主に担当)の影響がデカいと思うんですよ。いろんな擬音を入れながら吹き替えをしてたんですけど、それがよかったんだと思うんですよね。

ブルース・ウィリスはこの作品で有名になっちゃったからアクション俳優」として見られがちですけど、俺が一番思うのは、「この人はどの映画に出てもブルース・ウィリスだな」ということ。だからもはやどの映画に出ても、そこで演じたキャラの名前よりも“ブルース・ウィリス”と言われた方がしっくりくる。そう思わせるだけの“自分”っていうものを持ってるところが何よりもすごくて。その象徴的なキャラクターが「ダイ・ハード」シリーズの刑事/ジョン・マクレーンなんですよね。

俺が「ダイ・ハード」シリーズに出会ったのは多分小学生の頃なんだけど、そもそもなんでこのシリーズがヒットしたのかを考えていくと、これまで描かれてきた刑事像が「ダイ・ハード」で大きく変わったからじゃないかなと思うんです。以前の映画は、刑事をもっとかっこよく描いてたと思うんです。でも「ダイ・ハード」でブルース・ウィリス演じる刑事はめっちゃリアルで。本人も私生活もダメダメだし、見た目も汚らしくて、何もかもうまくいってなくてしょうもない感じの人間像なんです。そこがよかったんじゃないかなと俺は思うんですよね。バリバリのヒーロー系じゃなかったところが、みんなの心を掴んだ要因かなと思います。白い、タンクトップとも下着ともいえないシャツを着てる姿とか、汚らしいじゃないですか。身体もそこまでマッチョに鍛えるんじゃなくて、敢えて気を遣ってない感じにしてて。そういうところがリアルに響いたんじゃないかなと俺は思います。

俺は「ダイ・ハード」シリーズはもちろん全部観てます。中には何十回と観たものもあります。その中で、「ダイ・ハード」、「ダイ・ハード2」は世の中的にも人気がありますね。

「ダイ・ハード2」(1988)

周りの評価はそんなに高くなかったかもしれないけど、俺は「ダイ・ハード3」が一番印象に残ってるんですよ。

「ダイ・ハード3」(1995)

ちょうどこの頃は映画とかをめっちゃ観出した時期だったから印象深いんですよね。これは内容よりも観た時期と年齢の影響。今でも「この水とこの水を足したら何ガロンになる」とか、忘れられないレベルで憶えてますから。それぐらいのパンチ力で俺の中に残ってるんですよ。でも、あれが面白いかって聞かれると、当初のテーマからはズレていって、これは連続爆弾テロがテーマなんですよね。まぁでも、好きでしたけどね。

この後はちょっと時間が空いて「ダイ・ハード4.0」が来るんですけど。

「ダイ・ハード4.0」(2007)

ここではテーマがサイバーテロ系になって。同じ「ダイ・ハード」でも、時代に合わせてどんどんテーマも変わっていってるんですよ。それで「ダイ・ハード/ラスト・デイ」では息子が出てきて、ロシアで戦うんですけど。

「ダイ・ハード/ラスト・デイ」(2013)

俺はこの「ダイ・ハード」シリーズの回収の仕方はすごく好きでしたね。シリーズものでいうと「ターミネーター」とかもありましたけど。

「ターミネーター」(1984)

その中でも「ダイ・ハード」は夫婦が揉めてるところから始まって、「ダイ・ハード/ラスト・デイ」ではその息子が出てきて、父親と似たような運が悪い境遇に置かれてるとか、そういうところがドラマっぽくていいなと思いましたね。

シリーズとしては5作品ありますけど、「ダイ・ハード」というシリーズは多分みんなに愛されてるんですよね。制作側、周りのスタッフの愛を感じる。そこは「ワイルド・スピード」シリーズと同じ感じがします。

「ワイルド・スピード」(2001)

スタッフの愛があるだけで作り方が全然違うと思うんですよ。シリーズものでも、お金出す人がいて、監督とか照明も前とは違う人たちを集めて作る映画と、監督たちが「これを作りたい」と思って自分の好きなスタッフチームを作った上で、お金をどこかから掻き集めて来て作る映画では全然違うと思うんです。「ダイ・ハード」や「ワイスピ」シリーズは後者な気がします。「ジュラシック・パーク」も最新シリーズが公開になりましたね。

「ジュラシック・パーク」(1993)


これはシリーズ作品といっても、一番の見せ場、最大の売りはCGですから。どんどんシリーズごとにCGの恐竜や背景がリアルになっていくね、ってところですから。だから、作り手の愛というよりも技術なんですよ。ちょっと話が逸れますけど、「ジュラシック」シリーズの最新作にして完結作となる「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」は、「ジュラシック・ワールド」シリーズと「ジュラシック・パーク」シリーズ、それぞれのキャラクターが共演して前作のその後の世界を描いてるみたいです。

「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」(2022)

最近そういう映画が多いですよね。「ゴーストバスターズ」シリーズもそうでしたよね。

「ゴーストバスターズ」(1984)

最新作「ゴーストバスターズ/アフターライフ」も、昔の作品に出てたキャストを揃えて、その続きを描いてるっていう感じなんですよ。

「ゴーストバスターズ/アフターライフ」(2021)

だから、出演者はもちろん全員おじいちゃんですからダレるんだけど、それでもよかったな、あれは。過去のエピソードが無かったことになっていなかったので僕は好きでした。シリーズものはそういうところ大事ですよね。「昔からのファンを大切にしよう」というのと、「新しい人を取りにいこう」という精神。その二択がある中、シリーズものをやる時に後者を選んだらダメですよね。「昔からあるものは過去の人のために出してあげる」という精神で作らないと。

「ダイ・ハード」シリーズは、その二択をいいバランスで入れてきたから続いたんだと思います。ただ「あのシリーズは『ダイ・ハード2』までで終わってるよ」という人は、後半のシリーズは受け入れてないのかもしれないけど。俺はさっきも言ったように、自分の中に「ダイ・ハード3」が残ってるからこそ、そう思えてるのかもしれないです。

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限りなく2次元に近い2.5Dロックバンド、アリス九號.のオフィシャルnoteです。 毎週メンバーがリレー形式でオフィシャルnoteだけの…

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