第百三十三回 Gt 虎|MOVIE TORAVIA「ライアン・レイノルズ」(ネタバレあり)

今回はライアン・レイノルズについて語っていきますね。
俺がこの人に対してまず思うのは、一人では売れないし引きも無いし、映画もヒットしないタイプの俳優だということ。つまり、「映えるポジションがソロの主人公ではない」ということなんです、基本的には。この人の最近の作品だと「レッド・ノーティス」にしても「ヒットマンズ・ボディガード」にしてもそうなんですけど。

「レッド・ノーティス」(2021)
「ヒットマンズ・ボディガード」(2017)

主人公だけど、パートナー、タッグを組む相手がいるんです。誰か相手がいるだけで、この人はめちゃくちゃ引き立つんですよね。コメディー俳優はこういうのがありがちなんですけど。この間、アカデミー賞の受賞式でウィル・スミスが平手打ちしたクリス・ロックも、ライアンと同じようなタイプの立ち位置にいる俳優なんですよ。彼もコメディー俳優で、いいキャラをしてるんですけど、主人公ではなくて、誰かとセットでいるとめちゃくちゃ映えるんですね。

でもライアン・レイノルズは、なんだかんだいっても彼がいるだけで映画全体が見やすくなる。そういう映画の味付けをしてくれる存在だなという印象が俺の中にはすごくあるんですよね。

さっきも言いましたけど、基本的にこの人が主人公になった映画。例えば「グリーン・ランタン」とか、自分で自虐ネタにするぐらい全然ヒットしなかったんですよ。

「グリーン・ランタン」(2011)

そうしていろいろやっていく中で「デッドプール」でようやく当たったんですよね。

「デッドプール」(2016)

誰かとではなく、ソロでやるものとして唯一ヒットした作品。それがこの「デッドプール」だったのかなと思うんですよ。たしかに、これはライアン・レイノルズに似合ってるんです。ハマり役だったんですよ。でも、これもね、実は仮面を被ってるキャラとコンビを組んでるようなものなんですよ。だから、やはり相手がいてこそのライアン・レイノルズなのかなと思っちゃいます。だから、僕の中ではバディ系のNo.1俳優という感じですかね、ライアン・レイノルズは。

ギャグマンの俳優でもいろんなタイプがいて。ライアンもいろんな作品に出てますけど。彼の場合は、どの映画を観ても、ちょくちょく画面に出てきてはギャグっぽいことを澄まし顔でいう。そのスタイルを変えないんですよ。笑顔でギャグを言うタイプではなく、澄まし顔でサラッと下品なことや酷いことを言うんですよ。ボケ顔というんですかね。ちょっとすっとぼけた雰囲気でボケ顔をする人って、あまり外人にはいないと思うんですよ。こういうボケ顔でギャグを言うところは、すごく日本人ぽいのかなと俺は思いますね。

ボケ顔でギャグを言うライアンの対極にいるのが、ジム・キャリーですよ。どの映画に出ててもむちゃくちゃ表情が豊かで、ギャグを言う時のアクションまでがデカい。アメリカ的にはこっちのタイプのお笑いのほうが分かりやすくて向いているんだろうなと思うんですよ。ライアン・レイノルズの作品がなかなかヒットに結びつかないのは、アメリカの国民性に彼の演技がマッチしてないのかなとも思ったりして。逆に、彼のあのシュールな笑いは僕ら日本人にはすごい染みついてるところだなと感じますね。

クリス・ロックも、「ビバリーヒルズ・コップ2」とか「リーサル・ウェポン4」に脇役で出てた時代から、ギャク系ばっかに出てきてるんですよね。

「ビバリーヒルズ・コップ2」(1987)
「リーサル・ウェポン4」(1998)

で、クリス・ロックもジム・キャリーと同じようにリアクションデカい系だったから。絶対にハリウッドでは、ジョークを言う時も笑顔という、こっちの演技のほうが主流なんだと思うんです。まあ、それでもアカデミー賞授賞式ではジョークみたいな感じで言ってるのに通じなくて、平手打ちをくらっちゃってましたけど(笑)。

でもライアン・レイノルズの笑いは日本人的には全然アリなので、もっと日本で人気があってもいいのになと俺は感じていて。ハリウッドはハリウッドで、この人みたいなタイプは他にいないからこそ、俺は「いい俳優だな」と思っちゃうんです。でも、ギャグをやってる演技だけがセールスポイントっていうことになってしまうと、俳優としての需要はどんどん減りかねないんですけど。でも、ライアン・レイノルズが画面に出てきてね、ギャグを一つも言ってなかったら俺は嫌ですから。

ライアンが主役で、ギャグを一つも言わない映画でね、「[リミット]」という映画があるんですけど。

「[リミット]」(2010)

最初から最後まで画面にはライアンしか出てこなくて、ギャグはゼロ。閉じ込められた棺桶の中で、ライアン・レイノルズがひたすら一人で芝居をしていくだけというヤバい映画があるんですけど。その特殊なところを評価されて賞を受賞したりしてるんだけど、俺には意味が分からない。ライアン・レイノルズの良さなんて、なんにも出てないんですよ?観てて面白くもなんともないのに、どういつもりでその賞を与えてるのかが俺には理解できなくて。この映画はツアー中にホテルでTVをつけたら、たまたまやってたから観たんだけど。主人公は棺桶にずっと閉じ込められたままだから「この先どうなるんだろう?」って普通に思うじゃないですか?棺桶の中から携帯電話で外と連絡取ったりしてるから、「この後助けにくるのかな」と思いながらずっと観てたんだけど、なかなか進展しなくて。そのまままさかのエンディングが流れるという結末だったから、「マジかよ、この映画」と思って。「こんな映画のためになんでクソみたいな時間を俺は使ってしまったんだ」って、観終わった直後にめっちゃ後悔しました。「無駄な時間を費やしてしまったわ」って。

だからね、一人でシリアスな演技をやるのではダメなんですよ。ライアン・レイノルズはギャグをやってこそなんですよ。だから、一人でやるなら「フリーガイ」みたいなのがいいんですよ。

「フリーガイ」(2021)

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