ロンドンガイドと旅の醍醐味

ネット上には数多くの書物や雑誌が掲載されている。著作権の関係で、全ページ閲覧できるものもあれば、一部だけしか載せていないものもある。

先日、ロンドンのヴィクトリア駅周辺の街並を見ようと思って、偶然、ロンドンの旅行案内書をみつけた。「リック・スティーヴズのロンドン 2017」。

クリックして、たまたま表示されたページには、ガトウィック空港の説明があったので、ちょっと覗いてみよう。

この国で、6年間きちんと英語を勉強した人なら、だれでも分かる簡潔な文章で書かれている。

この国と極西の国を結ぶフライトは、すべてヒースロー発着なので、ガトウィック空港の情報は、知らなくても別にかまわないとも言い切れない。だれもが直行便を利用できるとは限らないからだ。

途中、別の国で乗り継ぐとき、またヨーロッパの他の都市で仕事を済ませてロンドンに向かうときは、ガトウィック着という場合も十分考えられる。最近、ガトウィック発着の便が増えていると、リックは記している。

ガイドブックの著者によると、ロンドン近郊には、全部で6つの空港があり、その中で一番南にあるのが、ガトウィックであると地図で示している。ほかの5つは、北からルートン、スタンステッド、サウスエンド、ロンドン・シティ、ヒースロー。

ロンドンの街を歩いているとき、空を仰ぐと、必ずと言ってもいいほど、旅客機が飛んでいるのに気づくことだろう。

さて、前置きが長くなったが、肝心の案内書に目を移そう。ガトウィック空港のターミナルは、北と南に分かれ、その間を無料のモノレールが24時間、運行している。所要時間は2分。

この空港からロンドン市内へ向かうとき、南のターミナルから出る快速急行を利用するのが一番いいと、リックは述べている。なぜなら、終着駅のヴィクトリアには、著者おすすめの格安ホテルが多いから。

電車の運賃は、片道20ポンド、往復35ポンド。1時間に4本、所要時間は30分、5時から24時まで運行。なお、窓口で切符を買うときは、大人3枚ないし4枚を、2人分の料金にする割引があるかどうか尋ねること。

面白いと思ったのは、次の記述である。窓口に数人が並んでいれば、相談して上記の割引料金を利用しようと呼びかけよう。うまくすれば、運賃が半額になる。

このガイドブックは、英語話者を対象にしているので、英語では、赤の他人に、このような依頼をしても普通なのだろう。お互いに、得をすることになるから。

見知らぬ人々をお互いに結びつけ、車中での時間を楽しく過ごしてもらいたいという鉄道会社の心意気なのだろうか。電車内のおしゃべりから、恋に発展することもあるだろう。

旅は道連れというから、この割引制度、この国でも採用してもらいたい。成田エクスプレスに、上記のような割引があるとして、日本語でのガイドブックは、見知らぬ他人を巻き込んで、出費を少なくする方法を伝授するだろうか。

押し付けがましい感じがして、とてもそこまでは記述できない気がする。筆者も依頼は、英語では出来ても、日本語では、それだけの勇気がない。

英語では、誰とでも気軽に会話をかわせるのなら、もう一歩踏み込んで、次の一節を加えたらどうだろう。窓口にだれも並んでいないときは、好ましいタイプの2人連れか、3人連れが来るまで根気よく待って、よく訳を話して割引を利用すること。

これからのガイドブックは、前記のような提案も加えるべきだと思う。旅は道連れといって、他人と関わることが、非日常を楽しむ秘訣である。これこそ、旅の醍醐味だといってもいい。

だから、外国を旅するときは、せめて「ありがとう」の一言だけでも、土地の言葉を覚えて出かけるのは礼儀といえよう。いや、これは義務である。いや、権利である。

そういえば、英語では、妹、弟、姉、兄にあたる一語がないので、長幼の序をあまり、気にしないのではないか。

列に並んだ二人が楽しそうにおしゃべりしているとき、赤の他人どうしということが、英語圏の国では、よく見られる。

英語のガイドブックには、見知らぬ他人と楽しみを分かち合うアイデアが、あふれているような気がする。

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