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2019/3/2

‪僕が祐介と出会った年は新型の肺炎が流行った年だった。対処するワクチンがない、新しい型のウイルスが人から人へ乗り移っていったのだ。街の人たちは一様にマスクをし、また、生産の追いつかなくなったマスクを求めてドラッグストアには人が詰めかけた。おまけにティッシュペーパーやらトイレットペーパーやらもいずれ品薄になるだろうという情報がどこかから流れて、(実際にはそれらは特にウイルスの影響を受けて品薄になるような状況でもなかったのだが)みんな大して急に必要でもない白い紙まで求めて街を彷徨

    • 2019.5.5

      ものすごく汚くて長い文章だけれど、僕はそれをここに書く必要がある。そしてこれは歪な形をした文章だ。セックスシーンはないけれど、男女が抱き合うシーンはある。これはただ、自分自身の寂しさを埋めるためだけの文章である。利己的文章。自分の部屋の机の引き出しに鍵をかけてしまっておく、個人的日記の中の一ページのようなものである。 タイトルに日付を入れようとして、今日が何月何日なのかわからなくなった。それほど長い休みだった。ある者は海に行き、ある者はディズニーランドに行った。またある者は

      • 2019.4.27

        壁 という文字を見て、言葉を聞いて、例えば皆さんは何を思い浮かべるだろうか。 僕にとっての壁は壁でしかない。立ちはだかるものでも、越えなければいけないものでもない。というかそんな大役を任されても壁の方だっていささか迷惑だろう。 僕にとっての壁はただ在るものでまた、そこに無い。それは僕の頭の中で限定された形でそこに現れる。その壁はこちらとあちらを隔てるものであり、壁の向こうのあちら側にはきちんと何かがある。向こうでは誰かがその壁を壊そうとしたり、こじ開けようとしたり、ある