小野瀬 緑 10.21

 

小野瀬緑(おのせ みどり)がおどおどして生きていることには端的な理由がある。彼女は子供が嫌いだ。それが、社会通念上は禁忌であるように思えてずっと闇を抱えていた。

泣き叫ぶのも、何をするかもわからないのも、壊れてしまいそうなのも。すべてが怖くて彼女は触れることどころかあの泣き声にすら近寄るのが苦手だった。ゆえの公共機関嫌いなのであった。

その秘密を共有できる相手は多くない。両親は自分の写真をファイリングして、子供時代からとても可愛がってくれていたのがわかるため相談はできなかった。初の相談相手が黄金太郎介(こがね たろうすけ)になる。彼は彼女のそれを「おかしい」と言った。そして「まあそんなとこ誰にでもあるから」と笑って見せた。初恋だった。