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霊性|顕神の夢 -幻視の表現者

「霊性」をテーマにした美術展。

2023年3月から翌年2月にかけて巡回開催された美術展です。
川崎市岡本太郎美術館→足利市立美術館→久留米市美術館→町立久万美術館→碧南市藤井達吉現代美術館へ巡りました。

本展は、今までモダニズムの尺度により零れ落ち、十分に評価されなかった作品、また、これから批評の機会を待つ作品に光をあてる一方、すでに評価が定まった作品を、新たな、いわば「霊性の尺度」でもって測りなおすことにより、それらがもつ豊かな力を再発見、再認識する試みです。

作品図録より 主催者「はじめに」より引用

なんだかすごい

これは、会場での見学者の言葉です。
見せようとして描いているのでなく、何処か異世界からやって来たモノを感じたまま描いたような凄みがどの作品にも滲み出ています。

個人的に惹きつけられた作品

《日輪と山》

あの宮澤賢治が描いた水彩画。複製画ですがとても不思議な「心象風景」が伝わって来ました。
たくさんの童話を生み出し、意識の中から浮かび上がるさまざまな事柄を賢治は「心象スケッチ」といいました。
賢治は物語を紡いで「霊性」を顕した人物だと思います。そしてこのような風景画も描いていたのです。

展覧会サブタイトルの「霊性」と「幻視」の違い

巡回展示された会場では展覧会サブタイトルに少し違いがありました。
足利市立美術館では、「霊性の表現者」でした。
しかし他の会場では「幻視の表現者」となっていました。

左:足利市立美術館   右:川崎市岡本太郎美術館

展覧会の企画監修は次のおふたりです。
江尻潔氏(足利市立美術館次長)と土方明司氏(川崎市岡本太郎美術館館長)。アートを「霊性」をタブー視されがちな切り口で展示構成した"挑戦者”と言えます。
筆頭企画者である江尻次長は、自館開催では「幻視」からさらに踏み込んだ「霊性」と銘打った展覧会サブタイトルにした…のかも知れません。あくまでも推測です。

図録の「論考」文に感じる違い

江尻次長の論考はズバリ「霊性」に切り込んだものです。
神ではなく得体の知れない超越的な「カミ」と相対峙し表現した人々の作品を扱ったと説明しています。

土方館長の論考は「霊性」側に寄らない岡本太郎論を展開しています。
「岡本太郎・呪術誕生」と題して、太郎の「芸術は呪術である」という言葉を引用しながら、太郎にとって呪術や呪術性は芸術の持つ力の源泉であったという判りやすい文章です。

展覧会図録「顕神の夢 -幻視の表現者」

顕神の夢展実行委員会発行 2023年

印象的な表紙は、夭逝の画家 中園孔二《無題》という2014年の作品です。
岡本太郎が自身の手のひらに目を描いた写真※にそっくりのモチーフです。

『みづゑ』708号 美術出版社  昭和39年に写真掲載



展覧会図録の巻頭には鎌田東二氏が『「顕神の夢」という「顕幽出入」の時代』という一文を書いています。
鎌田氏はスピリチュアルや霊性を長年研究している哲学者、宗教学者です。


まとめ

「霊性」をテーマに近年開催された美術展を振り返りました。



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