東京芸術劇場 シアターイースト イキウメ 『奇ッ怪 小泉八雲から聞いた話』

ひそひそと衣擦れの音がして、すり足の夢幻の人々が、まるで「橋がかり」を渡ってくるように、小さな白洲の周りの廊下を正しく回る。白洲には、上手に紅梅の小さな古木と、下手に三つ石を積んだ塚(左右に榊が供えてある)があり、紅梅よりも真ん中よりの、天からやっぱりひそひそと砂が一条こぼれる。

 このセットがとてもなんか、小泉八雲風でいい。小泉八雲から見た日本が、凝縮されている。塚の無名性、そして、その名もない塚を守る名もない人々への愛かな。衣ずれの音がとてもいいのに、音楽でかき消され残念だ。松岡依都美、すごくかっこいいすり足であった。

 八雲の五つの小品を組み合わせ、何かを調べに来たらしいおとこたち(安井順平、盛隆二)が旅館に泊まる、という体で芝居は始まる。旅館には一か月も滞在している作家先生(浜田信也)がいる。
いつも通りイキウメの作品は手堅く面白くできている。のだけれども前半ちょこっと引っかかる。まず、『常識』、寺の僧が普賢菩薩を見る話、どっちに力点かけてる?僧?猟師?それによって、全体の芝居の見え方が違ってくる。デザインがわからない。この話のシーン、あまり八雲っぽくない仕立てになっているね。それがヒントかな。『破られた約束』の、松岡の演じる奥さん、こわいけど、悪者なの?「二人で植えた梅の木」に言及しないのが気になった。ここを言わないと、「男に祟ればいいのに」っていうのが明確にならない。後味が悪くなる。

 初日だったせいなのか、全体のうねりがまだまだで、茶の中に男の顔も見えない。話をつなげるときにいつもだれかが大声をだすのはよくない。しかし、どの役者も着物が大変キマっていて、みていてきもちいい。牡丹燈籠のお露(生越千晴)とお米(平井珠生)、なぜ途中で日本髪になるのだろう。お米がしもじもの者っぽく、下手(しもて)に叫ぶところはよくできた。キャスト表で曖昧にしか書いてないので、配役書くのに自信が持てません。
#観劇


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