サントリーホール 大ホール 『The Reunion』

ちょっとテンポが遅いなと思うオケのThe Reunion Overtureから、ラミン・カリムルーとブラドレー・ジェイデンのMan Of La Manchaへ。えー?声も演奏もぜんぜん絡んでないよと客席で手に汗握るのもつかの間、ゆっくり全体の調子は上向いてゆく。

 日本のミュージカルと英米のミュージカルについて、とりわけ新妻聖子について考えながら、今日は客席に座っていた。新妻聖子。すばらしい。賢い。位置取りが自在だ。Love & Peaceという、城田優が東北の震災時に小さい妹を含めた子供たちを思って作った曲を城田とデュエットしたのだが、自分の歌を堂々と歌う城田を、新妻の声が優しく包む。決して自分の色で分厚く包むわけではなく、あくまでシフォンのように薄く、でも決して破れない。

 城田(今日、声、いっかいファルセットで終わったねえ)も新妻もソロになると、来日の人々とはくっきりと違う。良くも悪くも声の出し方が細く、日に透ける葦の葉、風に翻る稲の葉みたい、清元とかが遠い祖先だなと何となく首肯される。つまり歌謡曲に近い。ラミン・カリムルーの声は、ぎゅっと集中して伸ばすと、まるで硬質の光る筒のようなのだ。そして、ジェイデンとアメリア・マイロ(美しい声、クリスティーヌ・ダーエはこのひと!と皆が叫んだのわかる)のデュエットを聴くと、このひとたちほんとに付き合えるのかと思うほど互いに譲らない。「じぶんであること」を押し出してゆく。新妻が相手の声を聴いてから自分の声を決めているように見えるのと正反対だ。ここんとこ、若い来日の俳優ふたりは、すこし勘案してもいいと思った。
もちろん新妻聖子だって、受けてるばかりではない。ラミン相手に歌を鋭くぶつけているシーンもあった(ラミン、受けそこなっていた…)。今後の新妻の課題は、歌に載せる感情が、ありきたりにならないよう、深く感じることだと思う。あの人は私を要らないのだと、その場でまた心の裂け目を体験するのが大事では?

 アール・カーペンターをくさすイギリス風の冗談は私にはちょっときつかった。アールがファントム(Music Of The Night)を素敵に歌えたからよかったけど。後半になればなるほど、矢継ぎ早に歌われる歌はどれも素晴らしかった、観客は声にならない叫び声をあげ、拍手し続けで、空間が生き物めいてきたとおもった。
#観劇 #ミュージカル #コンサート

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