Blue Note TOKYO キャンディ・ダルファー 『WE FUNK HARDER TOUR IN JAPAN 2024』

 オランダ、アムステルダム生まれ。サックス奏者。父のハンス・ダルファーも同じくサックス奏者である。14歳でバンド『Funky Stuff』を始めた。マドンナやプリンスのバックバンドで演奏した。89年に映画のサントラの曲、『Lily Was Here』が大ヒットし、翌年ファーストアルバムを出す。『サクシュアリティ』。2022年『We Never Stop』。

これ、全部全く知らないまま、ブルーノートでしゅわしゅわする水を飲んで開演を待っていた。家の居間で、彼女の曲をほんのちょっと聞いて、はてなマークがいくつも頭上に浮かんだのだった。女性ボーカルにしては途中で男性の歌声に交代するなあ。交代するボーカル?なに?
 入口に影が差し、人が何人も何人も舞台へ向かう。そして最後にゴージャスな金髪の女の人が、快活な気配で通り過ぎた。舞台で照らされると、金色のごく薄い、頻繁に風で翻って色が変わるジャケットを着て、サックスを提げている。年季の入った、いい感じのサックスだ。ギター(ウルコ・ベッド)とベース(ザンダー・ブベロット)、サックス一人(マーク・マンジャン)、トロンボーン一人(エルフェ・アルデム)、何も手に持ってないボーカルが二人(イヴァン・ペロティ、カミロ・ロドリゲス)、ドラムス(キック・ワウダストラ)とキーボード(ジョルディ・カフスヴェル)。それを数えようとして私はいっぱいいっぱいになる、ステージ上も満員だ。ぎゅうぎゅうに人の入ったブルーノートは、期待感で充填されている。
 南無三。いきなりテンション高く、かっこいい演奏が始まる。わっと盛り上がる客席も、すでにテンション高い。
 混み合う舞台に段々秩序が生まれ、バンドは右に一歩、左に一歩とステップを踏む。
 あ、ファ、ファンキーこれ?と思って今日のライヴの題名を思い返すと、We Funk Harder Tourだった。「Funk」って的確に日本語にすることができないとネットに出てるけど、今日のお客さんを見てると何となくわかる。行儀よく聴きに来てるのではない。体験しに来てる。音をカラダに通しに来てるのだ。あとで連れの賢い若い者が、最初の方音が大きすぎて、ちょっと私には…とか言っていたが、それを聞いて少し面白くなかった。「Funky」じゃないねあんた。問答無用のこのビートがわからないのか。と、心が狭くなるくらいのすごくいい音楽だった。だれひとり、「すぐれてないひとがいない」。キャンディ・ダルファーのサックスは、盛り上がっても決して緩むことがない。ギター(泣いてる!)と合わせてしっとり演奏するときも、後半になっても、「客降り」も、常にいい音で鳴る。中盤、バンドの人がプラグ外しちゃったと言って「Funk」が中断した。一瞬、縄跳びの縄が下がるように弛緩。残念だね。でもそれもまるで演出のようだった。ファンキー。
#ライヴ

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