PARCO PRODUCE 2024 『ワタシタチはモノガタリ』

 この企画、PARCOの人が立てたものでは?なんかちょっと、安易な感じがする。とくに粗筋。それに乗って横山拓也は「劇場に合わせた」作劇をするのだが、筆に戸惑いがある。
現実世界の幼馴染徳人(松尾諭)と富子(江口のり子)のやりとりは調子よく、たくさん笑いが起きていた。ただ、いかんせん富子の20万フォロワーを持つケータイ小説が、全く面白そうでない。小説の中のミコ(松岡茉優)とリヒト(千葉雄大)も、窮屈そうだ。そんな約束をした経験のある松岡には悪いが、「30歳になって、どちらも独身だったら結婚しよう」という男女は、たいていどちらかが相手に岡惚れで、傍から見ると大変ばからしいのである。
二幕になって、編集者の徳人と作家の富子、そこにミコとリヒトが加わっての、物語を書き上げるための「主動因」をさぐる長い場面が、深まらず、滞っている。
文字がはらはらと降る映像が大変美しく、セットの道具も吟味されていた。でもさ、芝居がすごく前の席で完結してる。どっと沸く笑いを外から聞く感じだった(R列)。これは演出の問題では?想定の劇場が小さいかも。
 映画監督の間野ショージ(入野自由)と女優川見丁子(松岡茉優)のシーンにリアリティがあり、だらだらしている入野と、自分から攻める芝居をする松岡を初めてみた。売れない映画監督に、ドキュメンタリーを撮れと迫る丁子は、本心なのかそれとも企画からの逃げなのだろうか。橋爪未萠里、ワンポイントの登場だが過不足なくきちんと演じる。読モだったウンピョウ(千葉雄大)が、書家になっているという一連の流れがわからない。芝居、もう少し下手でいいんじゃなかろうか。
 千葉雄大のリヒトが、安い二枚目を好演するが、とすると、このケータイ小説は、作品中の作家以外のだれにも尊敬されていないんだねえ。「売れる」、「売れている」ことがすごく大事な事実で、作品としてスグレテイルかどうかはあんまり問われないのですね。って感じで文章の冒頭に戻る、PARCOのひと、企画安易じゃないですか。
#観劇

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