来るべきイデオロギー崩壊の時代に備えて

元BCGの経営コンサルタント、鈴木貴博氏はその著書「日本経済予言の書」の中で以下のような「予言」をしている。

・CASEによって自動車産業の構造が変わり、日本の自動車メーカーは低迷。アマゾンエフェクトで多くの小売は倒産。AI、ITの進化で正社員は減少。これらによって雇用は崩壊する。

・同時に超高齢化社会を迎えて年金制度も崩壊。それにより「真面目に働いたら報われる」というこれまでのイデオロギーが崩壊、「アノミー」が起こり、世界大戦後と同様の「退廃と堕落の時代」になる。

・既に兆候は出始めているが、企業は半グレ化、官僚はアイヒマン化していく。

真面目に働いても報われないなら、今が楽しければそれでいい、と企業も庶民も享楽的、退廃的になっていくという。

では企業として、個人としてそんな時代にどう立ち向かっていけば良いのだろうか?

その問いに対して、一橋大学の野中郁次郎教授の主張は1つの指針になりうる。

同教授は「共感経営」の時代が来ると主張している。すなわち、これからの時代に生き残っていくのは、企業と顧客、トップと現場、社員同士の出会いの場からつながり、共感を生み新しい価値を生む原動力になっている「共感経営」の企業であり、同時に、自分たちはどうあるべきか存在意義を問いながら、「今、ここ」の状況において都度最適最善の判断を行い、実行し成功に至る、「物語戦略(ナラティブ・ストラテジー)」を実践する企業だという。

共感に基づく「利他主義」が生まれる集団はより多くの成果をあげられるので繁栄するが、逆に利他主義の希薄な集団は淘汰されるのが、自然界の「進化の法則」であり、だからこそ共感に基づく企業が今後生き残るのだという。

野中教授の主張に従えば、仮に鈴木氏が主張する通りにアノミーが起ころうとも、自社さえ儲かればいい企業や自分さえ楽しければいいという個人は、いずれ利他主義の企業や個人に駆逐され、淘汰されていくということになる。いわば勧善懲悪的な見方ではあるものの、少なからず我々に正しいことを貫いていく勇気を与えてくれるものではないだろうか。

野中教授は、共感経営では自分がどうありたいのか、人間の主観や価値観が重要になってくる、と述べている。

世の中はこれからますます混沌としていくかもしれないが、それに怯えることなく、社会や周囲の人々の声に耳を傾けながら、自分が何のために生きていくのか、何を願っているのか、個人としてのブレない軸を作っていく必要があるのではないだろうか。



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