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授業ですぐに使える「Good & News」のやりかた

私がデザインした多人数授業のアクティブラーニングについて、授業の展開を追いながら説明をしています。前回に引き続き「(3)Good&News」についてお話をします。


大抵、このようなアクティビティの説明は「1、2,3,以上」といった感じで書かれいるので、実際にやってみようと思っても上手にできないなんてこともあります。

ではこれを授業で活用するには、どのような手順で進めればよいのか、スクリプトと背景となった考え方を交えて説明をしておきます。

①「これから、グループで1人ひとり順番に、最近あったいいこと、新しいことを話してもらいます」 

最初に断っておきますが、「これからGood & Newsをやります」なんて、小学生のお楽しみ会みたいなセリフは言いません。これはレクリエーションの基本です。

何回かやり慣れてきたら「Good & Newsをやってください」と言いますが、初めのうちはアクティビティの名前は口にしません。

多くのGood & Newsの説明では、24時間以内にあったいいこと、新しいことを話すと説明していますが、私は初回から「24時間以内」とは言いません。そういうと「えーわからない」という気持ちが先に立ってしまい、学生が自分の思考をブロックしてしまいます。

慣れるまでは、「最近」とか「先週の○曜日から今日まで」など、すこし範囲を広くしておくと良いでしょう。学生の場合、「週末」にあったことであれば、良いことを探しやすいみたいです。

②「最初に話す人を決めましょう。最初に話す人はグループで右手の人差し指が一番長い人」

グループで話し始める前に、順番を決めなくてはなりません。お互いに初対面の場合、誰から話し始めるかは重大な決定事項です。そういった心理的負担を少なくするために、最初に話す人を指示しておきます。

順番決めはじゃんけんでもいいのですが、時間がかかります。
それよりも、「右手の人差し指が一番長い人」といったように、お互いに顔を合わせたり、触れあったりして距離を縮められるような決め方がいいでしょう。

この時の指示も「人差し指が一番長い人」だけだと、右手なのか左手なのかわかりません。そうした判断の曖昧さを排除し、ムダな決定に費やす労力を減らすために「右手」と指定しています。

例では「右手の人差し指が一番長い人」なんて言っていますが、別に左手でも、薬指でも、髪の毛の長さでも構いません。

③「最初に話す人は手を高く上げてください」

全体を見わたして、だいたい最初の人が決まった様子だったら、1番目の人に手を挙げてもらいます。

1番目を決めるのに遅れているグループは、他のグループが手を挙げているのを見ることで、決定を急ぐことになります。

「早くしなさい」と命令をして、学生のやる気を削ぐことはしません。

④「ありがとうございます。全グループ決まったようなので、手を下ろしてください。では最初の人が右回りか左回りか話す順番を決めて下さい」

相手が学生とはいえ、指示に従ってくれたことに感謝します。

そして、最初に話す人の特権として、話す順番を決めてもらいます。場の決定権を1番目に話す人に与えることで、最初に話す負担を和らげます。

⑤「これから、最近あった、いいこと、新しいことを、1人30秒話してもらいます。」

「たとえば、こんな感じ。今日、学校へ来るときバス停にいつもより1分間早く着きました。1分早く着くと人の動きも違って、いつもは見たことのない人たちが歩いていました・・・・」

学生たちに話してもらう前に、先生が率先して「いいこと、新しいこと」を話します。

いきなり「話してください」では、受け手となる学生は何を話していいのかわかりません。いいこと、新しいことといっても何を基準にすればいいのか、どのように話せばいいのかわかりません。

そこで、先生がお手本を示せば、だいたいこんな話をすればいいのかということが分かるので、安心して話せるようになります。

これをファシリテーター・ファーストといって、ファシリテーションの基本です。ファシリテーターがお手本を示すことによって、参加者の安心を作ります。

ですから、先生は学生たちに「できない」と思ってしまうような、「宝くじが当たって」とか「家を買って」とかハードルの高いことはNGです。
「バス停に早く着いたとか」「今日は晴れてきもちよかった」とか、そんな他愛もない「よかったこと」を話すようにします。

それでも、学生たちが戸惑っているようでしたら、考える時間を30秒程度とるのも良いでしょう。

私も学生が慣れるまでは、考える時間をあげていました。

⑥「では、1番目の人から、最近あった、いいこと、新しいこと、を話してください。時間は30秒。」

「話し終わっても、とにかく30秒は雑談でもいいので続けてください。30秒経ったら、私からお知らせしますので話すのをやめてください。」

「30秒」という時間を設定することで、話し手がどれくらい話せばいいのか目安をつくっておきます。
そうすることで、極端に短く話し終わることや、ムダに長話をすることを防ぐといった、タイムマネジメントができます。

時間はタイマーで測ります。タイマーについては便利なツールがありますので、いずれ紹介します。

話し始めるタイミングは、「はい、1番目の人スタート」というように、はっきりと指示します。いつ始めたらいいのか分からないような、ぼやけた指示もNGです。

また、ここでは固定机であることを忘れないで下さい。
この時点で、まだお互いに顔を向き合っていない場合があります。その時は「お互いの顔が見えるように向き合ってください」と声をかけます。それでけで、話し合う体制ができます。

⑦「時間です。1番目に話してくれた人に拍手」

30秒経ったら、全員に拍手を促します。
話し手は拍手をもうらうことで、グループから受け入れられた感覚を持つことができます。他のメンバーも、同じ行動をとることで一体感をつくることができます。

また、他のグループから拍手があがることで、1番目の人がなかなか話し終わっていないグループがあったとしても、そこで区切りをつけることができます。

⑧「2番目の人準備はいいですか。ではスタート」

拍手が終わる前に、2番目の人に話す準備を促します。
話し始める合図もはっきりと指示します。
あとは、同様に進めていきます。

⑨(全員終わったら)「全員終わりましたね。話し終わっていないグループはないですね。では、みんなで拍手」

最後に、全員が話し終わったことを確認して、アクティビティの終了を明確にするために拍手をします。

Good & Newsの説明は以上です。

小さなことでも、いまやっている活動の価値を示す

Good & Newsが終わったら、私はいつも学生に確認の言葉を投げかけています。

いま30秒間、話してもらいましたが、時間いっぱい話した人も、そうでない人がいたと思います。みなさんはいずれ就職活動をするようになります。就活の面接の時に、3分間で自己紹介をしてくださいとか、あなたの長所について話してくださいといったことを聞かれると思います。その時に、時間いっぱい話せなかったら確実に失敗します。いまは30秒だけですが、これからは将来のことを意識して、時間いっぱい話す技術を磨いていきましょう。

このように、今やっていることが、将来どのように役に立つのか、価値を明確にしてあげることで、「話す」という行為への取り組み方が大きく変わって来ます。

アクティブラーニングでは小さな活動であっても価値付けを忘れないことです。

「経営史」第1回目の授業デザイン
 (1)オープニング動画
 (2)席替え・グループ編成
  初回授業でグループ編成をするメリット
  固定机でもグループ学習はできる
  多人数授業でグループ分けをラクラクするには
  スマートな人数調整で、スムースなグループ学習
 (3)Good&News
 (4)今日のマインドセット
 (5)自己紹介
 (6)成績評価について
 (7)学習の進め方
 (8)受講のルール
 (9)マインドセット
 (10)リフレクション

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