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はじめての書籍制作を経て

人生でもっとも重要なキーワードを挙げてくれと言われたら、私は「本」だと答えると思う。私にとっては、窮屈だった自分の人生を拡げてくれたものが本で、大切な人たちとの出会いを作ってくれたものが本で、悩んだときの拠り所になってくれるものが本だった。

そんな私がはじめて制作に関わった書籍『僕たちはもう帰りたい』が、昨日、3月16日(土)に全国の書店にて発売された。

大学時代では本を「売る側」、そして人生を通してはずっと「読む側」だった私が、ついに「作る側」になった。今日は、その制作秘話や、本作りを通して感じたことについて、振り返ってみたいと思う。

きっかけは、大学時代からお世話になっているライツ社の大塚さんからの一言だった。

「あかしさん、一緒に本を作りませんか?」

大塚さんとは、もうかれこれ8年ほどの長い付き合いになる。私が大学で入っていたフリーペーパー制作のサークルで、大塚さんが作る本のお手伝いをしたことが出会いのきっかけだった。当時大塚さんは、京都の「いろは出版」という出版社に所属されていて、私はまだ、今ほど本に興味がなかった。

でも当時から、大塚さんの熱い思いに漠然と惹かれていたことだけは覚えている。それから私は本屋でアルバイトするようになり、定期的に大塚さんと本の話をするようになった。おもしろかった本の話、大塚さんが作りたい本の話。大塚さんとの会話は、今でも8割がたが本の話だ(あとの2割は恋愛の話)。

出会って8年、社会人になって4年が経ち、ようやく一緒にお仕事ができたと思うと、じんわりと胸が熱くなる。

今回の書籍のテーマは「もう帰りたい」。さまざまな理由で会社から帰りたいと願う7人の登場人物が、『もう帰りたい』という名前のスナックに集まってくる……という、オムニバス形式のコミックストーリーだ。

描いてくださった漫画家さんは、『妻は他人』などのコミックエッセイが人気のさわぐちけいすけさん。さわぐちさん特有の客観的な視点が「働き方」に組み合わさると新しい化学反応が起きるのではないかという、大塚さんによる座組みだった。

私の役割は、「ストーリーの基盤となるネタ集め」「原稿の編集」「コラム執筆」だった。

書籍を作ることが決まったのが去年の1月ごろで、それからは、「もう帰りたい」と思う会社員の方々に思いを馳せる日々が続いた。私自身、「もう帰りたい」と思う日はたしかに存在して、そういう日には、その理由を即座にメモするような毎日だった。

私が普段勤めているサイボウズには働き方の情報がいろいろ集まってくるとはいえ、そこに集まってくる情報はほんの一握りだ。「サイボウズだから働き方に詳しい」というのは、驕りだと思った。だからなるべくたくさんの方々──大学時代の友達や、まったく別業界の知人、働くお母さんなど、さまざまな方にヒアリングさせてもらった。時には、1日のスケジュールを詳細に送ってもらったりもした。

キャラクターの基盤を考えるときは、できるだけリアルな人物像を思い描いた。7人の登場人物それぞれにつき、「この人に届いてくれたらいいな」と思う人が実在する。そしてその集めた情報をさわぐちさんにお渡しして、「物語化」していただいた。

さわぐちさんの物語化は、さすがだった。私が集めた情報を活かしながら、それがうまくフィクションになっていく。ただの事実の羅列だった私の情報メモに、命が吹き込まれていく。その様子を間近で見られたことは、本当に得難い経験だった。


そうやって生まれたのが、これら7人の物語だ。

✅お付き合い残業に悩む新人
✅上司とクライアントの板挟み状態に悩む若手
✅上司の無茶振りに悩む現場リーダー
✅非効率な会社で働く中堅社員
✅仕事と家庭の両立に悩む働くママ
✅プライベートを犠牲にしてしまう中堅社員
✅会社にも家庭にも居場所がない上司

普段はWebで記事を作ることが多い私にとって、書籍制作の良さとして一番感じたことが、「パッケージング」の効能だった。

一つひとつの物語の作り方としては、「できるだけ詳細に、届けたい想定読者をイメージする」という点で共通していたけれど、立場の違う7人の物語をいっしょくたにしてパッケージングすることは、Web記事ではなかなかに難しい。

Webでは、自分に関係のないコンテンツに触れる機会はあまりない。けれど、漠然としたテーマの書籍では、それが可能になる。書籍の方が、Webよりも「自分に関係ない人への想像力」が生まれやすいのかもしれないなと、完成した書籍を手に取ってみて、そう感じた。

この本が、同じ職場で働くさまざまな背景を持つ「相手」のことを想像できるきっかけになればいいな、と思う。

さて、まだまだ書きたいことはあるのですが、このあたりでひとまず筆を置きたいと思います。1年と少し、この書籍制作に関われて楽しかった。この本が「もう帰りたい」と願うたくさんの人たちに届き、そして、その心をふっと軽くできるといいな。

ぜひ、ご興味がある方、読んでみてください。


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ありがとうございます。ちょっと疲れた日にちょっといいビールを買おうと思います。

118
92年生まれ。京都からのらりくらり東京へ。フリーランスの編集者・ライターです。ほぼ日の塾2期生 / 編集ライター養成講座35期生

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コメント (1)
Twitterで拝見したときにwebマンガだと思っていましたが書籍になるんですね!Kindleでの配信が4月とのことなので楽しみにしています😊😊
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