見出し画像

「人とのつながり方」こそがPURPOSE

私は、ものごとに対する定見というものをあまり持つことができない。
年齢を重ねれば重ねるほど、自分の知らなかった世界に色が付いていくばかりで、定見を持つどころか「もっと他人を知りたい」心ばかりが磨かれて、自分で自分なりの信念みたいなものを持つことができない。

5年前、ブログにこんな文章を書いたことがある。

自分の意思があまりなく、他人の考えをひたすら吸収することが好きだった私は、自分のその信念のなさに悩んでもいたし、そういう自分こそが自分らしいのだ、とも思っていた。

昔の自分の言葉には、「こんなこと書いたっけ?」と思わずびっくりしてしまうようなものとそうじゃないものがあるけれど、確実にこの言葉は後者だった。それはきっと、この言葉の中に今もまだ、共感するところがあるからなのだ、と思う。

だから、最近仲良くさせてもらっているTBSの池田さんに、「PURPOSE」という名前のイベントに誘っていただいたとき、正直なところ、心臓がちょっと変な方向にドクンと動いた。前述したとおり、「PURPOSE」──つまり自分が生きている目的や存在意義のようなものが、私にとってはまだ言葉にならず、胸の中に靄がかかっているものだったから、だ。

でも、人の話を聞いて、何かを感じることは好きな私である。登壇者の方々が素敵な方たちだったこともあり、そのイベントに参加させてもらうことにした。

イベントでは、タイトル通り、自分にとっての「PURPOSE」が明確にある人たちの話が続いていく。

小国士郎さんは、「自分の遠くにある価値観や景色を映す」こと。
米田惠美さんは、「目の前に生まれ続ける問いを順番に深めていく」こと。
脇雅昭さんは、「47都道府県の大人たちを仲間たちにしていく」こと。
岡村アルベルトさんは、「外国人が日本で暮らすことのハードルを下げる」こと。
加茂倫明さんは、「理系学生や研究者のさまざまな課題を解決する」こと。


こうした、みなさんそれぞれの話を聞いていて、私はぼんやりと、「PURPOSE」には2つの種類があるのかもしれないな、と思った。

その2種類とは、「行動」としてのそれと、「テーマ」としてのそれである。

小国さんや米田さんは、PURPOSEとして「行動」を大切にしている。遠くのものを映せるか、問いを深められるか。それにひもづくことであれば、どんなテーマであれ、PURPOSEに基づいていると言えるのだろう。

一方、脇さんや岡村さん、加茂さんは、PURPOSEとして「テーマ」を大切にしている。公務員、外国人、理系学生や研究者。自分自身が生きる上で切実に感じてきたテーマを達成することであれば、それがどんな行動であれ、PURPOSEに基づいていると言えるのだろう。

行動でも、テーマでも、どちらも存在意義なんだよなあ。……そう感じたとき、PURPOSEというものはとどのつまり、「どうやって、世の中と、他者とつながっていきたいと思っているのか?」という「つながりに対しての明確な考え」なのかもしれない、という思いが頭の中によぎった。

生きていくことは一人では不可能だ。人や社会とのつながりにこそ喜びは生まれ、そのつながりこそが価値になり、その価値を原動力に、私たちは生きている。

そういった「人とのつながり」を、何によって生み出したいと思っているのか。それは行動でもいいしテーマでもよくて、その考えこそが、PURPOSEなるものなのではないだろうか。

私が5年前に「自分に信念がない」と嘆いていたのは、学校や家族やバイト先など、「人や社会とのつながり」が何も考えなくても用意されていて、自分でそのつながり方を模索せずとも生きていけたからなのかもしれない。

でも、社会人になって、半分会社員、半分フリーランスとして働くようになったいま、少しずつ、自分の力で社会とつながることが増えてきた。すると、自然と「自分にとって大切にしたいつながり方」が見えてきた。

やっぱり私は、自分という媒介を通じていろんなものを感じ考え、それを文章という媒体を通じて表現し(または表現されているものを世に伝え)、その結果として人とつながっていく、その連鎖を起こしたいのである。もちろんそれは今後変わりゆくかもしれないけれど、今の私にとって、これは立派なPURPOSEと言えるのではないかな、と思う。

あるじゃないか、PURPOSE。この文章を書きながら、ぽつりと思わず呟いた。

「存在意義は?」とか「人生の目的は?」と聞かれると、なんだか難しくて言葉にしづらいように思うけれど、「どうやって社会とつながりたいのか?」という問いだったら、少しは考えやすいような気もする。もしも私がこれから迷ったときには、自分自身に「あなたは、どうやって人とつながっていきたいの?」と聞いてあげたいな、と思う。

ありがとうございます。ちょっと疲れた日にちょっといいビールを買おうと思います。