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家族だもの

「ただいま……ん?」

 玄関に入った途端、すぐ異状に気づいた。

 血痕だ。引きずった赤黒い跡家の奥まで伸ばしている。俺は舌を打ち、懐から拳銃を取り出して安全装置を外し、サイレンサーをつけた。土足のままで玄関を上った俺は、血痕を辿って姉の部屋前にきた。痕跡はドアの下に続いた。鍵がかかっている。俺はドアの隣に立ち、ノックした。

「慧美、いるか?いるなら返事して」

 五秒、十秒経過。反応なし。勘弁してくれ。

「こうしよう、もし俺に入って欲しければ一回ノック、要らなかったら二回。はいどうぞ」

 七秒経過、ドアは向こうからトントンの二回ノックされた、そうか。

「わかった。じゃあ先に風呂入るね」

 言って傍から俺はドアの前に立ち、思いっきりドアを蹴った。パァン!すかさずに部屋に突入した俺の目に入ったのは、ダクトテープでテープルに縛られた顔中血まみれた女と透明レインコートの下に何も着ていないナイフを握った女。

「ンンンンン!」縛られた女は助けを求める視線で俺を見た。
「ヒィーッ!」レインコート女は俺を見て怯んでナイフを落とした。
「慧ぇぇぇ美ぃいいーー!」吼える俺。

 バッシュ。くぐもった銃声。縛られ女の頭側部に穴が開いた。

「ジッジャアア!?」

 レンコートは悲鳴をあげ、テーブルの前で跪いて泣き始めた。そこへ俺は近づき、そいつの顔を掴んでこっちに向かせた。ブサイクだな、俺と同じ子宮から出たか疑いたくなる。

「姉貴、俺何度も言ったよね」
「ヒッ」
「趣味を持つのはいいけど、家族に迷惑かけるなって。なのに」

 銃把で殴りつける。

「げへぇぇー!?」
「床を汚したし、部屋にシート敷いてないじゃん!掃除が大変だってぇ!」

 また銃把で殴る。

「おげぇ」
「意味がわかんねえよ!言葉使えやコラァ!」
「アアアアア!」

 姉は殺人鬼だ。理由あって俺が飼っている。

「ふぅー、すっきり。弁当買って帰ったから一緒に食べような。片付けはその後で」

(続く)

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