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幸せの大輪

『見事、だ』

 最後の言葉を吐き、守護者は体が極彩色の光に化して腕輪に収束されていき、長く苦しい戦いが終わった。

 エイジェンが残してくれた弓は無残に壊れて木片になった。ヒィンとヘンドウィンも自分の存在をすべて力に変えて、必殺の矢となってくれた。唯一生き残った俺も、すべてをかけて矢を撃ち、守護者を葬った。体内から魔力は消えつつある。でも感傷に浸っている場合ではない。

 首輪を嵌めた左手を守護者が守っていた祭壇に当てる。すると蛍めいた光の粒が湧き出し、渦巻きながら巨大かつ荘厳な女性に形作った。間違いなく女神様だ。

『勇者よ、よくぞここまで参った』

 女神は目と口が閉じたままだが声が聞こえた。

『最後の試練だ。幸福とは、何か』

 最後の試練、大神官の言った通り、女神の質問に答えることだ。俺は深呼吸し、予め考えた答えを口にした。

「私にとって幸福は、ピザです」

『ほう、では説明してもらおう』

 汗が滲む。仲間たちの顔が目に浮かぶ。世界の運命は俺に掛かっている。

「今日の晩飯が18インチの野菜たっぷりとチーズ、ベーコンを乗せたピザを8切れにしたとする。もしカズン……彼は下の階で死んだ、もし彼が3切れ食べれば、私と他のメンバーが食べれるピザが少なくなり、幸福が奪われた形になった。しかし坊主のヘンドウィンは肉が食べれないのでピザを辞退した。そしてヒィンは小食で、小さい1切れだけで腹いっぱいだ。残り4切れ、私は紳士らしくエイジェンに大きい方の2切れを分けた、トマトとチーズが滴るピザを……その夜彼女とベッドで一戦できた。つまり私が言いたいのは、幸福は無限ではない、一枚のピザみたいに限られているし、時に幸福は他人に分け与え、より大きな幸福に交換できる。そして何により泣いてピザ食べる奴見たことがない。以上です」

 女神は俺の言葉吟味する観たいに頷き、初めて口を開けた。

『なんかピザ食べたくなってきたな』


(続く)

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