GOLDFISH SALVATION

 六歳の頃、私は初めてお祭りの屋台から金魚を持って帰った。父さんが屋台で金魚鉢とエサを一緒に買ってくれた。初めて動物を飼うことになった私は興奮して、なかなか眠れなかった。

 そして翌朝、金魚は腹が上に向けて水面に浮いていた。

 死んじまったね。と母さんが言った。初めて感情移入した生物の死を目の当りにして、私はショックを受けた。

 昨晩まで元気だった金魚がなぜ死んでしまったか、金魚すくい屋台を出していた商店街の眼鏡屋に問いつめた。

「そりゃ金魚から見れば巨人が上から笑いながら輪っかを突いてくる黙示録の光景だから、色々大変で疲れて死ぬだろうよ。ちなみに余った残った金魚も全部死んだよ」

 そんな!金魚がかわいそうと思わないの?

「思わないね。つーかきみも楽しげにやってたよね。僕を責める資格ないよね?」

 二重の衝撃。自分の手はすでに血に染まっていた。以降私はペット飼うことなかった。お祭りで金魚すくいを見るたびに胸が締められるような気持ちになる。このことを当時付き合っていた彼氏に打ち明けるにした。

「でも肉と魚普通に食ってたじゃん。金魚すくいの金魚かかわいそうで、食われた魚がかわいそうじゃないってか?偽善かよ」

 その晩、彼氏と別れた。

 大人になっても、金魚すくいで悩んでいた。何とかならないのか、夏の風物詩を壊さず、金魚を救済する両全の方法が……

 その時、脳裏に蓮の花を摘まむ観音菩薩が浮かべた。そうか!引導を渡せばいいんだ!

 企画書を作成して、町内会に提出した。

「面白そう。やんなさいよ」

 今や会長の眼鏡屋が快諾してくれて、祭りでの出店が決まった。位置は金魚すくいの真正面。BBQ台、フライヤー、鉄板、すべてが備えた。集客しなきゃ。

「ヘイラッシャイ!世にも珍しい、掬った金魚をお望み通り料理しますよ!」

 最初にやってきたのは、手に金魚が入った袋を提げている少年だった。

「あの、フライにできますか?」

(続く)

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