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ようこそ、ユーシャルホテルへ!

『力が制御できず恋人も抱けない?触れるだけ人が凍ってしまう?大丈夫!ここでは貴方が“普通”で居られる!』

「本当だな?」

 私は職員に尋ねた。

「本当ですよ、強力な解呪魔法が働いてますから。それでは、ゆっくり目を開けてくださいね」

 七歳の時、私は邪眼が開き、灼熱の視線が家族を町ごと燃やしてしまった。

 私は魔女の婆さんに拾われ、心で視る方法と魔法を学び、邪眼を取り除く方法を求め、25年の間旅していた。そしてどんな強力な呪いでも無力化できる場所の情報を耳にして、ここに来た。

「本当に大丈夫だな?」「信じてください」

 私は目を縫い合わせた糸を外し、20余年も閉まっていた重たい瞼を恐る恐る開けた。

 世界は最初に霧がかかったようにぼんやりとしたが、次第に色が付き、仄かな照明、職員の微笑む髭面。

「こんな……あぁ……」嬉しいような、悲しいような感情が涙と化し、目の端から湧き出た。

「ごゆっくり、普通を楽しんでください」

(続く)



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