「ひとり空間」を反転する~南後由和『ひとり空間の都市論』を読んで~
まず、「ひとり」について新たな議論を行う出発点を明確にするために、本書の評価点の総括をしておきたい。本書の内容で評価できる点は主に二つだ。ひとつは単純に都市に生きる人間の生態を知るための資料としての有用性だ。居住形態の歴史的な変遷や「ひとり」を可能にする都市的な条件、SNSなどのメディアが可能にする都市での新たな過ごし方など、時間・分野の両方に広がりを持っている。いまひとつの価値は「個人」をめぐる様々な先行研究のまとめとしての有用性だ。多数の文献と参照が、読者の「個人」に対す