オハリコと山の神~くつろぎファンタジータイム
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オハリコと山の神~くつろぎファンタジータイム

亜空間ファンタジー

オハリコと山の神彩度調整

弥剣 龍 著  制作 亜空間ファンタジー

 オオヤマツミは山の神
 スサノオ命が退治した、ヤマタノオロチも山の神
 大蛇の尾から現れし、草薙剣に秘められた、山神の力ぞ神器なり

 豊葦原の中つ国
 八百万(やおよろず)の神々や
 喩え様なき有象無象
 魑魅魍魎(ちみもうりょう)が跋扈する
 その各々を鎮めんと
 怖れ、崇め、奉る
 祠の数は星の数

 山は神奈備(かむなび)
 神宿る
 深山幽谷瘴気立ち
 あまたの物の怪巣食う中
 古き神はただ在りて
 隠り身にして姿なし
 怖れ惑える民草は
 ただひたすらに祈りを捧げ
 鎮め、崇め、奉る

 人間界には人族以外に、八百万の神々や、何とも形容のし難い有象無象が存在する。
 自然物にすべからく宿った神々や精霊は、魑魅魍魎(ちみもうりょう)と呼ばれる山川木石に棲む妖怪の類としばしば混同され、誤解されたまま怖れられ、崇められ、時には魔物として扱われてきた。
 数知れない神々や精霊や魑魅魍魎を、それぞれ怖れ、崇め、鎮め、奉るための神社や祠の数は、星の数ほどになった。
 中でも山の神は、人間界の至るところに祀られているのに、多様な信仰があって、実態のとらまえどころがない神のひとつである。
 大元を辿れば山の神はオオヤマツミの神––––––イザナキとイザナミが生み出した神々の一柱で、氏素性が明らかである。
 しかし、山の神をオオヤマツミと一元的にとらえられるかというと、決してそんなことはない。地方に行けば、山の神は醜い女性の姿をしているとの言い伝えもある。オオヤマツミは男神なので、明らかに話が違う。記紀においても、矛盾のある記載がある。ヤマタノオロチを退治したスサノオ命は、荒れすさぶ神なれど、木を生み出した神でもあり、木の神転じて山の神として祀られることもある。
 スサノオ命に退治されたヤマタノオロチも山に棲む怪物であり、殺されてなお、三種の神器の一つ、草薙剣を生み出している。怪物であると同時に山の神の一種ともいえる––––––山から降りてきて、やはり神であるクシナダヒメの姉達を、毎年一人ずつ喰っていたのだから、荒ぶる山の神である。ヤマタノオロチを山神として祀る社もある。
 魑魅魍魎なかでも、魑魅は山に棲む妖怪で、妖怪のくせに山の神と見做されている場合もある。魑魅とは異なるが、山中や時には里でも、背が高くて顔が赤い山人とか、山男と呼ばれる、異形の者に遭遇した言い伝えがあり、これも山の神と呼ばれることがある。
 往々にして神々と魑魅魍魎の見分けもつかない人族が、人間界の妖怪と精霊界の精霊達の違いを見分けられるはずもない。遠い昔、亜空間霊界の鬼族や龍が、亜空間通路を経て人間界にも行き来していたときの記憶も伝承されていて、鬼神、龍神と崇められることもあれば、化け物扱いされる場合もある––––––鬼退治の話しは、まことしやかな伝承や御伽噺の格好のテーマだ。
 人々の頭の中は混乱の極みであり、神から魔物まで、何もかもいっしょくたのままである。
 
「あーっ」
 オハリコ達が深夜一斉に騒ぎ始めた。
 草木も眠る丑三つ時。花の精のオハリコ達もうとうと眠っている。ところがその夜は、みんなびっくりして目が覚めた。
 もみの木の枝に鈴なりになって眠っていたオハリコ達が、急に目覚めて色とりどりに点灯したので、森の中に突然キラキラのクリスマスツリーができた。
 霊界モモンガの巣穴で眠っていたオハリコ達は、樹の穴から飛び出してモモンガ達と一緒に滑空し、光の筋を曳いて夜空に虹をかけた。
 お花畑で花に紛れて眠っていたオハリコ達も興奮し、蛍のように発光しながらめちゃめちゃに宙に舞った。
 ひとしきり騒ぎまわったあとで、オハリコ達は全員集合した。
「ど、どうしよう?」
「あ、あれは何なんだろう?」
「な、何が起こっているのかな?」
 みんなお互いにたずね合ったが、誰も答えられず、聞きたい側ばかりだった。
 オハリコ達は昼間起きているときは夢見心地だが、夜は夢を見ない。眠ったときは限りなく花に戻り、頭の中にはお花畑のイメージしか浮かばない。
 そんなオハリコ達が夢を見るときは、何かとてつもなく異常なことが起こったか、あるいはこれから起ころうとしているときだけだ。
「これは何かのお告げだよね」
「怖いことが起こる前触れだよね」
「危険が迫っている前兆だよね」
 オハリコ達の夢に現れたものは巨大な昆虫の如き生き物で、山をも呑み込むほどの怪物だった。
「魔族でもない」
「死霊でもない」
「妖怪でもない」
 オハリコ達の知る範囲ではそんな化け物は存在しなかった。
 オハリコ達はぐっすり眠りこけている木霊を起こしてきいてみた。
「そんなの聞いたことも見たこともない。わかんないから、ズクにきいてみたら」
 木霊はオハリコほど敏感でないのか、何も異常を感じ取っておらず、寝ぼけ眼で言った。そして一言言うとまた寝入ってしまった––––––木の精もまた、草木も眠る丑三つ時には寝てしまうのだ。
 多分精霊達のお目付け役、霊界ミミズクのズクなら、鋭い霊感力で異常を感じ取っていて、その正体もわかっているかも知れなかった。でもオハリコ達は躊躇った。
「夜中にズクを起こしたら、機嫌悪いよね」
 ズクにしょっちゅう叱られているオハリコ達は、ズクに頼らずに自分達で何とかならないものかと思った。
「あの怖いものは、亜空間通路の向こう側にいるんだよね」
「亜空間通路の向こう側は人間界だよね」
「人間界にいる怪獣の一種かな」
「山を呑み込む怪獣なんてきいたことないけど」
「勝手に行ったら、またズクに叱られるよね」
「また人に見つかっちゃうとややこしいことになるし」
「でもズクを起こしたくないし」
「どうしよう」
「どうしたらいいかな」
「どうにかしようがあるだろうか」
「うーん」
 みんなが考え込んでしまったとき、ピンク色の女の子のオハリコがいい考えを思いついた。
「そうだ!みんな忍者になろう。忍者ならきっと見つからない」
 オハリコ達の誰もが、ピンクの女の子の発案は素晴らしいと思った。忍者なら誰にも見つけられずに忍んでいって、謎の怪物の正体を暴くことができるに違いないし、第一、忍者になること自体が面白そうで、楽しそうで、誰もが嬉しくて興奮した。
「はっ」
「はっ」
「はっ」
 早速みんな忍者の真似をして、とんぼ返りをうった。狭い所でやったので、お互いにぶつかり合って跳ね返って転げまわった。
「黒い忍び装束を作るのよ!」
 オハリコ達は黒い生地の反物を持ち出してきて、猛烈な勢いで鋏で布を裁断し、忍者の衣服を人数分瞬く間に縫い上げた。
 真っ黒なお揃いの装束で、黒い頭巾と覆面をすると、みんな本物の忍者になった気分になった。
「やっ」
「とうっ」
「ぬんっ」
 気合とともに各自ポーズを決めた。
「かっこいい!」
「正義の味方!」
「忍者部隊オハリコ!」
 正義の忍者になってしまったので、みんなで盛大に盛り上がった。
「でも術はどうしたらいいんだろう––––––」
 オハリコは衣服のことは専門なので忍び装束は簡単に作れたが、忍術のほうはさっぱりだった。
「火遁の術!」
「森が火事になったら大変だよね」
「水遁の術!」
「息が苦しそうだよね」
「土遁の術!」
「球根じゃないからね」
 いろいろアイデアを出したが、どれもオハリコには難しそうだった。
 みんなが押し黙ったとき、またピンクの女の子が閃いた。
「木の葉隠れの術!今回は偵察目的だから、いざというときにぱっと逃げられる木の葉隠れの術がいい」
「そうだね!」
 みんなピンクの子が、次々に素晴らしいことを思いつくので、嬉しくなって、両手を上げて振りながら、くるくる回る喜びの舞を舞った。とてもいい術が見つかったのでオハリコ達は自信が出てきた。
 一生懸命木の葉を搔き集めて懐に詰め込んだので、丸っこい体がますますま―るく膨らんだ。
 木の葉をいっぱい抱えたオハリコ忍者達は、夜陰に紛れて、精霊の森を出て、ズクに気づかれないようにこっそり亜空間通路を抜け、恐ろしい夢の震源地へと向かった。
 オハリコから見れば、人間界は不思議の国だ。珍しいものが一杯あって面白くって仕方がない。それでズクの目を盗んでよく遊びに行ってしまって叱られる羽目になる。人間界には人族以外にも、無数の妖怪や神々がひしめいている。それらの全てを知ることは不可能だし、オハリコ達も彼らに遭遇することは滅多にない。
 ただ、今回はその人間界の闇の世界の異変を、悪夢の中で感じ取ったのだ。起こっていることは人間達のなせる技ではない。そのせいで忍者になったオハリコ達は、いつもよりはずっと真剣だった。

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