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おじさん、気づく・・・。 2話目

■彼の のぞみ・・・

彼の素の自分で居られる場所
  素の自分で居られる時間
  素の自分で居られる相手が欲しいというのぞみ。

これらが欲しい!と言われても、
それを聞いてる私としては、苦笑するしかなかった。

まぁ、素の自分で居られる場所とか時間なら、
一人旅でもすれば、得られるとは思うのだが・・・

でも、柔らかい腰に腕を回させてくれて、
そのまま膝枕で、
めちゃくちゃ甘えさせてくれる女性っていうのは・・・

あ!

そう。答えは、すぐに見つかった

のだが・・・

すぐに、思い浮かんだ!というのも恥ずかしかったので
少し、ちょっと考えてるふりをしてから、
急に思い浮かんだように
「あ、それなら、やはり・・・と言おうとした瞬間、

『風俗サービスとかいうんじゃダメなんだよな。
 なんか、あ、10分経った、二千円消えた!とか考えてたら
 心底から癒されないじゃん・・・。』

え? はぁ? 何? 何だって?

『あのさ、時間とかお金とかに、気を使いたくないんだ。
 ただ本当に何も考えずに、こう腰に腕を回して、
 膝の中に顔をうずめて眠りたいんだ。』

そ、それは、さっきも聞いたけど。
それって、まず、物理的に無理なんじゃないか?
想像してみ? 
実際できたとしても、すごく不恰好だし、窒息しそうじゃん。
ってかそれより、
時間とかお金とかに気を使いたくないって・・・、
何、訳のわかんない、わがまま言ってんの?
現代社会において、
時間とお金に気をとらわれないことなんてありえない!!

『だけどさ、僕がさ、こういうこと求めてるのと同じようにさ、
 女性でも、何か、そういうことを求めてる人が居てさ、
 その求めてるものを僕が叶えてやれるなら・・・
 ギブ&テイクってことで、僕、何でもやれると思うんだ。』

え?

うーん。考えてみると、一理あるような気はするが・・・。
だけど、そんなニーズが発露することは稀であって、
それは、たいてい男の勝手な、夢の願望でしかありえないと思う。

だいたいにおいて、
「黙って膝枕で眠らせたい」という欲望を持ってる女性なんて
何億人に一人だと思う。確率的に存在しえないと思うわw。

『居ないのかなあ、そういう女性・・・。』

だから、居ないよ、居ても何億人に一人だよ。

『でも、可能性は残ってるんだよね。』

そう言って、彼は、気の抜けたような残りのビールを煽り飲んだ。

■ところで彼は・・・

一体、何のために私を呼び出したのだろう?

『あのさ、ネットに、出会い系ってあるじゃん?やったことある?』

ないよ!

『あれって、危なくないのかな? 個人情報とか。』

知らないよ!

『やっぱ、お金もかかるよね?』

だから、お金のかからないものなんて、この世にはないよ!

『ちょっと調べてみたんだけど、
 いろいろあって、どれが良いのかわかんなくて・・・』

え? 調べた?

『ええと、マッチングとかいうのは、婚活用アプリなのかね?』

だから、そんなの知らないよ!

『別に、僕は、結婚相手を求めてるんじゃないし・・・。』

・・・・・?

『他にパパ活とかいうのもあって、おじさんでもOKみたいでさ。』

パパ活ぅ? 
それこそ、めちゃお金かかりそうじゃん。
ってか、それやってるのって、20代前後の小娘なんじゃないの?
それこそ、お宅の娘さんより、年下の連中だよ? 
お宅、ロリコンだったの?

『いや違うよ、もちろん僕はロリコンじゃないよ。
 ただ、いろいろ調べてるうちに、
 出会い系って女性の登録者も多いんだなって。
 ということは、女性にも「男性にこうして欲しい!」って
 望みがあるんじゃないかって、そう思ったんだけど。』

それは、こうして欲しい!じゃなく、お金欲しい!ってことだよ。

『えw。そうなのかな?』

そうだよ。だいたいがお金目当て。
お金だけが目的の女の子が多い!って、想像できるじゃん?

『そうなのかな、本当にお金が欲しいだけで出会い系なのかな?』

うーん。
そ、そりゃあ、中には、本当に寂しくて、相手が欲しかったり、
性的に欲求不満であったりする女性も居るには居るのだろうけど、
それは、めちゃくちゃ数が少ないんじゃないか?

『でも、居るには居るんだよね?』

え? そ、そりゃ、居ないとは言えないと思うけど。

『だったら、どうすればそういう
 つまり、お金が目的じゃない女性に出会えるのかな?』

えぇ?

そんなこと一度も少しも考えたことなかったから、
返答に詰まった。
そして、そんな出会いは、はるか何万分の一の確率だと思った。

『僕、真面目に言ってるんだ。』

こっちも真面目に聞いてるよ。いや、呆れて聞いてるよ。
呆れて聞いてはいるけど・・・、少し、興味もわいてきたよ。
どうすれば、お金が目的でもなく、ギブ&テイクで!ってことに。

あ、でも、このコンセプト。

もしかしたら、結婚前の「恋人探し」と同じじゃん?!

『恋人探し?』

うん、恋人が欲しくて、
恋人を探す時って、お互い、お金目的じゃないじゃん?
まぁ、デート代くらいは男が持つけど。
精神的にも肉体的にも、そういうの全て、ギブ&テイクじゃん?

『あ、そうか、新しい恋人探しって感じで行けばいいのか?』

うん、そうだよ。
ただ、君の場合、奥さんがいるから、たとえ恋人ができたとしても、
彼女は世間的に「不倫相手」という烙印を押されてしまう訳だけど。

『あ!そういうことか?不倫相手となってしまうのか・・・』

そうだ!ということになるね、一般的には。

『え、じゃあ待てよ。
 不倫!不倫!って週刊誌などで騒がれてる芸能人の場合も、
 もしかしたら、僕と同じように、ただただ純粋に
「素のままの自分で居たかった!」と言う人も居たかも知れない!
 ってことだよね?』

え? また変な方向へ・・・?

いやもう、はいはい。そうだね、もう否定はしないよ。

『そうかあ、素のままの自分で居たいって芸能人も居たんだぁ。』

いやいや、そういう芸能人が居たとか居なかったじゃなくて。
奥さんが居ながら、別な女性を恋人にするのは「不倫」であって、
通常は許されることではなく、してはいけないことだからね。

『それはそうだけどさ。
 でも、よーく考えたら、それ、おかしいような気がしてきた。
 だって、奥さんのことはずーっと愛してきて、
 ずーっと大切にしてきていて、これからも家族全員で愛していって
 大切にしていくのはまちがいない訳で。
 ただ、その奥さんに得られそうもない「僕が素でいられる相手」を
 奥さん以外の女性に求めることは違法なのかな?』

今度は、違法ときたか・・・

『だから、割り切って考えればいいんじゃないのかな?
 通常は、家でこれまで通りに家族と奥さんと過ごしつつ、
 僕が素で居たくなったら、恋人みたいな人の元へ行くという風に。』

なるほどぉ。
じゃあ奥さんに事情を話して、恋人作りの許可でも取れば?

『・・・いや、それはできないし、不可能だし。』

だろ?
だいたい、夫が他の女の元へ行くのを許す女性なんて居ないよ。
逆に考えてみなよ。奥さんに君の他にも好きな男ができたとしたら
君はどう思う?

『うーん、それは嫌だな。』

だろ?
だから、自分も嫌なことは、相手にもしちゃいけないって、
小ちゃい時から、幼稚園で習ってきた通りなんだよ。

『でもさ。相手が、ずーっと知らなきゃいいことなんじゃない?』

え?
・・・それって、ずーっと内緒にしておくっていうこと?

『うん。余計なことは知らせないのも良いことだと思うんだ。』

君には、良心の呵責というものがないのか?

『いや、奥さんのことは、これからもずーっと大切に愛して行くし、
 ただ、素のままの自分で居たい時だけ、別の女性のところへ行く。
 で、その女性に対しては、奥さん以上に愛することもなくて、
 ただ、ギブ&テイクで、お互いの欲求を満たすことだけをする。
 ・・・そういう関係ってのも有りなんじゃないかと思うんだ。』

うんうん、そうかそうか。
でも、その理想論は現実的に無理だ!ということは歴史が証明してるし、
勿論、実現した男もいるかも知れないけど、それは少数だと思うし、
その少数の実現者を目指して、君が頑張るのは一向に構わないけど、
大体において、話は戻るが、その恋人はどうやって探すんだよ?

『そう、そこなんだけど、実は今、気づいたんだけどさ・・・』

え?どんなこと?

■彼のアイデア・・・

『実は、君の奥さんにか、奥さんの友達の中にか、
 またはそのまた友達の中に、そういうニーズのある女性が居たら、
 紹介して貰いたいと思っているんだけど、どうだろ?』

はぁ?

『僕とその紹介された女性のニーズが合っていれば、
 そこに金銭的なやり取りは起きないはずだし、問題ないと思う。
 しかも君の奥さんの友達からの紹介であれば信用もできるし・・・』

こいつが、俺を呼び出したのは、こういう理由だったのか?
と呆れてしまったと同時に、自分の奥さんの友達の友達の・・・
はるか先の友達だとしても、彼の望みを叶えてくれそうな女性が
・・・いるとは思えなかった。

しかし、もしも、これが成功したら、
わらしべ長者みたいなもんだな・・・と思えて、笑えた。

そして、自分も、温くなったグラスのビールを飲み干した。


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