ワインの味と作り方の関係

ワインを買う前、飲む前にある程度味が好みのものかを想定したい。ワインの味は、飲む場の雰囲気もあるが、テロワール(土壌、気象条件、地形、標高などブドウ畑を取り巻く自然環境)、セパージュ(品種)、そして、作り手の作り方であろう。

以下について、わかるとある程度、作り方による味の違いが想定できるらしい。テクニカルノートというものらしい。

 リュット・レゾネ(減農薬)やビオ、オーガニックは直接的にワインの味に影響を与えない。

また、純粋酵母によってワイン発酵が行われるようになり、気候による影響を受けにくくなり、ビンテージイヤーワインというものも過去のものとなった。

 

■赤ワインの工程

収穫→除梗→発酵→圧搾→熟成→瓶詰→瓶熟

 

■白ワインの工程

収穫→破砕・圧搾→発酵→熟成→瓶詰→瓶熟

 

■除梗(果梗を取り除く)と全房発酵

除梗するかしない(全房発酵)かは、赤ワインの醸造の際に選択する醸造方法。

意図的に除梗せずそのまま使用する場合や一部使用する場合もある。

 

全房発酵の方が風味の複雑さとタンニンのシルキーさが増し、ブドウの強い酸味をまろやかにし、強すぎる果実感をフレッシュにしてくれる。

 

以下の生産者は醸造に積極的に果梗を使う。
デュジャック、ルロワやドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ(DRC)、リッポン・ヴィンヤード(ニック・ミルズ)

デュジャック

一方、完全に除梗する生産者はアンリ・ジャイ。

■マセラシオン・カルボニック(MLF)

収穫したブドウを除梗も破砕(果粒をつぶす)もせず房のままタンクに入れ、そこを二酸化炭素で満たす。無酸素状態になることで、ブドウのなかで勝手に発酵が始まり、少量のアルコールが生成される。シャルドネだとバターの風味のあるワインになる。

 

100%MLF発酵


手積みで収穫後、房ごとプレス。100%フレンチオークで野生酵母により発酵させる。100%MLF発酵。11ヶ月樽熟成。

シャンパンの場合、MLFなしのものは酸が活き活きとしており、細身で繊細な印象になる。MLFをしない生産者は、クリュッグ、サロン、ランソン、ゴッセ、タルランなどがある。

 

■アマローネの製法

手摘みで収穫した厳選したブドウをアパッシメント(陰干し)し、40~45%の水分を取り除いて、糖度を高めたブドウを発酵させていく。

 

■リパッソ(元に戻す)

アマローネの搾り粕とフレッシュな赤ワインをブレンドして再発酵させて造る。

 

■熟成

樽の種類
・ステンレスタンク
→木樽よりも管理しやすく、コスト面でも優れている。
→ワインやブドウ由来の本来の味を発揮させたい際に使われる。
・木樽
木は切られた後も呼吸するため、木目から酸素が入り込む。ワインはこれによって木樽の中で呼吸し、酸が変化して、香りや色、味わいが深くなっていく。さらに、木樽のタンニン分が溶出してワインに深みを与えてくれ、樽の香りもワインに個性を与えてくれるので、より複雑な香りを楽しむことが可能。

さらに、赤ワインに多く含まれるポリフェノールの一種であるアントシアニンの化学反応によって、ワインの色も安定します。
・新樽→しっかりと樽香がつく
・古樽→繊細な樽のニュアンスを出すことができる
・アメリカンオーク(ホワイトオーク)
→バニラ香をもつバニリン香が発生しやすい木材です。
→アメリカンオークでの熟成は、スパイスのようなニュアンスがつく
・フレンチオーク
→軽いローストならバニラ、しっかりローストすればスパイスのような香り

 

樽の大きさ

小樽の方が樽の風味が大きくワインに影響し、大樽だとそれが抑えられる。

225L前後の小樽を「バリック」、2400Lの大樽のことを、ドイツでは「ドッペルシュトゥック」と呼ぶ。

 

2400Lの大樽(ドッペルシュテュック)で熟成したワイン

フリードリッヒ ベッカー シュペートブルグンダー ドッペルシュテュック

大きな樽に入れることで、ワインが樽の表面に触れる割合が下がり、樽の風味の影響が小さくなる。結果として、よりピュアな果実味が感じられるピノ・ノワールとなる。

 

樽の火入れ

樽をしっかりローストするとスモーキーな香ばしい風味が生まれ、その風味が果実味の強いワインに加わると、コーヒーのように感じることもある。

 

オーク材の産地にまでこだわったシャルドネ

フォンカリユ ペイ ドック シャルドネ ブリュ

フランス産のオークの新樽で2~3ヵ月熟成される。また30%は発酵もオーク樽でおこなう。樽は個性の異なったフランス国内のいくつかの森(アリエ、ニヴェル、ヴォージュ、ブルゴーニュなど)からのものを使い、最後にブレンドする。

 

 

新樽260%のワイン

クルニ KURNI

新樽60%ステンレスタンク40%で野生酵母での発酵を行った後、新樽バリックで10か月熟成、さらに新樽バリックに移し替え10か月熟成してリリース。

60%+100%+100%=260%の新樽

 

ステンレスタンク発酵

ステンレスタンクで発酵したものは、渋味が元気よく口の中を刺激する。

ラステンバーグ カベルネ ソーヴィニヨン 

樽を使わないワインと樽を使ったワインの比較

イル ラフォルジュ アンウッディド シャルドネ

樽を使わないワイン

イル ラフォルジュ エステイト シャルドネ

エステイト・シャルドネは、1/3を新樽で、残りを古樽

 

発酵

オーク樽熟成は適度な酸素供給が可能で、赤ワインは色素が安定し、タンニンが和らぐ。オーク樽と同様の作用が起きるミクロ・オキシジェナシオンという技術がある。

タンニンやアントシアニンのない白ワインの場合は、発酵の際に多くの酸素は必要としない。むしろ酸素が少ないほうが、ワインにフレッシュな果実味を感じるようになるので、赤ワインに比べてステンレスタンクでの発酵が多い。

 

熟成

シャルドネを熟成する際、アメリカンオーク(ホワイトオーク)はオークラクトンやバニリンの含有量が多く、そのためワインはより甘くトロピカルな風味となる。

逆に、フレンチオーク、つまりヨーロッパナラやツクバネガシで熟成しても、あまりはっきりと甘い香りにはならない。その代わり、ワインの味わいの骨格がしっかりとした印象になる。

 

■コラージュ(清澄)とフィルタ濾過

・コラージュ(清澄)
清澄剤によって不純物質を結合させ、それらが沈殿してから上澄みを取る作業。

この作業は、ワインの清澄と微生物的化学的安定化を向上させる。

 

・フィルタ濾過
清澄してもなお残っている微小物を、フィルタにかけたり遠心分離機にかけたりして取り除く。

フィルタレーション(フィルタをかける)とは、葡萄の果汁を絞り、酵母をいれて発酵を行った後、澱引き(沈殿物を残し上澄みを別の樽へ移すこと)をして、瓶詰め前にもう一度、果皮などの沈殿物を濾過すること。

フィルタレーションすることによって、澱が浮遊していない澄んだワインができるが、濾過によって香り、複雑味、コクなどが目減りする。

逆にノンフィルタとは、濾過を極力抑える製法。ノンフィルタ方式でワインを造ると、澱が瓶内に残るが、旨味や香りの成分も多く残るため、複雑味があり、香りとコクが高いワインができる。

 

ノンコラージュ(ni colle)、ノンフィルタ(ni filtre)

ブルゴーニュ・ルージュ メオ・カミュゼ・フレール・エ・スール

■酸化防止剤

酸化防止剤としての亜硫酸には、酸化による劣化を防ぐ効果と殺菌効果がある。樽内で酸素とワインを触れさせることにより、色素を安定させたり、まろやかさを出したり、香りの複雑さを高めるといった効果が得られる。半面、ワイン中のアルコールと酸素と触れ合うと酢酸が生成され、酸味が強い味わいに変わったり、発酵中に発生するアセトアルデヒドと酸素が触れ合うと青臭い香りが発生する。亜硫酸はこれらを防ぐ。

ブドウの果皮には雑菌が付着しており、発酵が止まったり、不快なニオイが発生し、ワインの味わいや香りに悪影響を及ぼすので殺菌が必要。

 ワインを劣化、酸化させる成分を取り去ることができるミクロフィルタを使って酸化防止剤無添加ワインを造る生産者もいる。

 

■ドザージュ

ドザージュとは、スパークリングワインのデゴルジュマン(澱引き、瓶内二次発酵によって生じた澱を取り除く作業)の後に目減りした液量を補うとともに糖度の調整を目的として、「門出のリキュール」と呼ばれる甘いリキュール(サトウキビ糖)を加えること。

添加される糖の量が6g/l以下のワインをエクストラ・ブリュット、3g以下あるいはまったく加糖をしていないワインは 、ブリュット・ナチュール、パ・ドゼ、ドザージュ・ゼロと呼ぶ。

 

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