雨宮吾子

ほそぼそと活動しています。

雨宮吾子

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マガジン

  • The Hotel Green Amber (掌編小説集)

    一千文字以内の掌編小説を収める作品集です。主に即興で書いたものを投稿していく方針です。 各々の作品には連関がないため、どこからでも好きな作品を読んで頂くことができます。

  • Cupid shoots to kill (決定版)

    一流の歌手を目指すその女性の名は、ベラドンナといった。ホテルのラウンジショウへの出演が決まり、ベラはバンドのメンバーとの練習に励む。様々な人物と交わる中で成長を見せるベラだったが、本番当日の朝、思いもよらぬ報せが舞い込む。二十二歳のベラは、ある決断を迫られるのだった。 ※全十話。尚、本来のタイトルは"Cupid shoots to kill (Definitive Edition)"ですが、字数の関係により"Cupid shoots to kill (決定版)"としております。

最近の記事

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【自己紹介】雨宮吾子について

 私、雨宮吾子と申します。  あまり得意ではない自己紹介というものをそろそろしなければならないと思えてきたので、ここにプロフィール記事を書いていきます。  以下、簡単に説明していきますと、主に小説を書いています。気まぐれに自由詩を綴ることもありますし、今後の願望としては拙いなりに短歌を詠めたらと考えていたりもします。ただ、やはりあくまでも軸となるのは小説です。自分自身の作風や作品のジャンルなどを規定することは避けたいのですが(自己紹介ともなればそうもいきませんね)、純文学で

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【自己紹介】雨宮吾子について

マガジン

  • The Hotel Green Amber (掌編小説集)
    31本
  • Cupid shoots to kill (決定版)
    10本

記事

    【詩】はなむけ

    こそあど あなたが生まれた時代の歌を聴かせてごらん どんなに明るかったか どんなに苦しかったか どんなに哀しかったか どんなに楽しかったか こんなに色んな感情が歌われているのに それよりもあなたが生まれてきたことのほうが こんなにも嬉しいのは あなたのことが好きだからなんだよ はなむけ 予定よりも早く目が覚めた朝とも言えぬ朝を 私は言祝ぎの気分で生きている 一年という区切りの死を迎えようとしているのに 人びとは知らんぷり 私はひとり立ち止まって きっと君の死を祝うよ さ

    【詩】はなむけ

    久しぶりにエッセイを書こうと考えています。 創作関連のことであなたのこういう話が聞きたい、といったようないわゆるお題を募集します。必ずリクエストに応えられるとは限りませんが、ご協力頂きますと有り難いです。もちろん創作関連以外のことでも構いません。 よろしくお願いします。

    久しぶりにエッセイを書こうと考えています。 創作関連のことであなたのこういう話が聞きたい、といったようないわゆるお題を募集します。必ずリクエストに応えられるとは限りませんが、ご協力頂きますと有り難いです。もちろん創作関連以外のことでも構いません。 よろしくお願いします。

    映画「窓ぎわのトットちゃん」を観てきました。印象に残った部分は数あれど、太平洋戦争開戦の臨時ニュースが流れる場面は、分かっていても慄然としてしまいました。鑑賞後の気分としてはトットちゃんの天真爛漫さに救われるばかりです。観て良かったと心から思える作品でした。

    映画「窓ぎわのトットちゃん」を観てきました。印象に残った部分は数あれど、太平洋戦争開戦の臨時ニュースが流れる場面は、分かっていても慄然としてしまいました。鑑賞後の気分としてはトットちゃんの天真爛漫さに救われるばかりです。観て良かったと心から思える作品でした。

    街角

     日が沈んでしばらく経った頃、私はあてもなく街中を歩いていた。人よりも自動車の往来の方が盛んで、クラクションやカーステレオから流れてくる音楽などで喧しく感じられるくらいだった。ショーウインドウを見つけるたびに立ち止まっては中を覗き込む。見知らぬ誰かの理想で着飾ったマネキンが歩道に向かってポーズを取っている。夜だというのにサングラスをしているマネキンもいて、決して見られているわけではないと分かりながらも私はそのことに安堵した。窓に映り込む私の姿は醜い。  学生服を着ていた頃は悩

    ランデヴー

     そのテディベアは川上から流れてきた。茶色くて、小学校に上がりたての子供が抱きかかえて眠るのにちょうど良い大きさで、腕の付け根の縫い目が心許なくなっている。そのくたびれ方から、愛されていたのだな、というのがよく分かった。それまで川底を漁っていた私は唯一の収穫物であるテディベアを拾い上げると、その首に掛けられていたネックレスを手に取った。その反射がなければきっとテディベアにも気付かなかっただろうと思う。布に包んでポケットに収めたネックレスはそんなに上等なものではなかった。むしろ

    ランデヴー

    2023/07/16

     恩赦が沙汰止みになったとの噂が巷に溢れると、人々は何も手に付かなくなる。夕立の後の水たまりを蒸気機関の夢を抱える書生たちが行く。その足取りの拙いのを絡め取って茶屋に押し込み、風見鶏を家々に設えてしまえば、きっと下りてくるだろう盗賊への備えは朝日が昇るのを待たずして整うだろう。  ようやく終わった雪中行軍を総括するちびっこは、甘いリンゴジュースを片手に全てがラスコーの壁画に予言されていたと誣告した。

    昨日、自己紹介記事を修正しました。 https://note.com/ako_amamiya/n/n6ff306413009

    昨日、自己紹介記事を修正しました。 https://note.com/ako_amamiya/n/n6ff306413009

    【エッセイ】美しい生活

     今朝は予定していたよりもずっと早く目が覚めたので、体調を崩した少し前から溜まっていた家事を済ませた。対話する相手もなく一人で暮らしていると、自分なりに自分のことを考えなければならなくなる。そうして、私は美しい生活というものの維持が苦手であると気付いた。掃除も片付けも洗い物も、どれも美しい生活(言い換えれば清潔な生活)には不可欠なものである。もちろんそれらを放棄しているわけではないが、しかしその日その日のすべきことを先延ばしにしてしまうのだ。結果、過去の自分の所業を呪うことに

    【エッセイ】美しい生活

    雨だれ

     失恋をした。  それはもうひどい失恋で、想いを届けたかった相手には何も伝わらず、失意の帰り道で犬に吠えられた拍子に五百円玉を落とし、通り雨に降られて仕方なく逃げ込んできた喫茶店で私はようやく息を吐いた。本当は誰かに私の涙を拭ってほしいのにと思いながら曇ったメガネを拭く。三階建ての建物の二階にある喫茶店からは通りの様子が見渡せる。みんな用意が良くて、色とりどりの傘が、時折ぶつかり合いながらも大体は器用に通り過ぎていく。その様子を見ていると、何だ、ちっぽけだな、と思えてきた。で

    劇場

     照明が消されると同時に立ち上がった拍手は、次第次第に静寂へと回帰していった。その静寂の中で幕が上がっていく。舞台の奥には白砂を想わせる幕が張られていて、黒い衣装を纏った一人の女が立ちすくんでいる。まるで操り手を失った人形のようなその静止は、見る者の心を掻き立てる何かがある。不穏なる静謐さが会場に満ち満ちて、いよいよ破裂しかけた瞬間、背景の白砂がぱっと地面に落ちた。砂粒の一つ一つが散らばったかのような錯覚が観客を襲う。床の上に導かれた視線が再び女の体躯に向かうとき、そこに現れ

    昨日投稿したプロフィール記事についてですが、本日加筆修正を行いました。noteにおける活動について触れておりますので、よろしければご覧下さい。必要に応じてまた加筆修正など行う予定ですので、よろしくお願い致します。

    昨日投稿したプロフィール記事についてですが、本日加筆修正を行いました。noteにおける活動について触れておりますので、よろしければご覧下さい。必要に応じてまた加筆修正など行う予定ですので、よろしくお願い致します。

    黄色風船さようなら

     形だけは家族で食卓を囲んでいるものの、特に会話もなく、当初は掟破りとされていたテレビもいつからか沈黙を嫌って点けられている。何事においても拙速を尊ぶ父親は曲がりなりにも主食は食べ終えながらも、大皿に盛られたサラダには一切手を付けず、さっさと自室へ引き上げていった。と同時に姉がニュースからバラエティ番組へとチャンネルを変え、椅子の上で姿勢を崩して見入っている。 「静、きちんと座って食べなさい。大学生になってもそんなふうだと、外で恥をかくわよ」 「別にいいの。それにもういらない

    黄色風船さようなら