少し若い男 菅田将暉演(仮) / 「切羽へ」井上荒野著 を読んで

他人の感情を、たとえばその後の行為は批評できても、その感情自体を否定する事は絶対にしてはいけないと思っている。
どんなに此方からは理解できなくても、その時感じた気持ちはその人だけのもので、外からは分かり得ないからだ。

怒ったでも、傷ついたでも、嬉しいでも、そして誰かを好きになったでも。

九州の離島で暮らす主人公の30過ぎの女性は、夫を愛していて、愛されていて、しかしある時島に新しくやって来た、自分より少し若い男に恋をする。

主人公が男に惹かれ始めた時の描写が印象的だ。

"日はようやく暮れはじめたばかりだった。夫が帰ってくるまでにまだまる一日もあるのが信じられなかった。私は自分がかつてないほど、夫を待ち焦がれている事に気がついた。"

彼を目で追ってしまうとか、彼の事ばかり考えてしまうとか、「彼」に関する事ではなく、「夫」に早く会いたいと記す事で、彼女の気持ちがもう彼に向っていて、そしてそれを否定したくても出来ていない事が分かる。

近ごろなんだか、本を読むたび登場人物を演じる役者が見えてくる。
今回の若い男は菅田将暉だ。主人公は、年齢は少しずれるけれど深津絵里。夫は伊藤英明。主人公の同僚で、本土の男の不倫相手をしている女性は小池栄子。

小池さんが凄くすごく良い演技をしてくれると思う。

#コラム #本 #井上荒野 #コンテンツ会議

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