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#2 デューディリジェンスって?

前回、M&Aとは基本、お金を出してその会社の権利証(=株式)を買うシンプルな、何も難しくないものであることをお話しました。

とは言いながらも、家を買う場合でも、ちゃんと軒下を見てシロアリに食われてないか確認したり、土地建物に抵当権などついてないか調べるように、また、昔は結婚する場合も興信所などを使って相手方の素性を洗うように、それらよりももっと高額で複雑なM&Aでは、複数の専門家を交えて「デューディリジェンス」を行う必要があります。

デューディリジェンスとは、M&A用語の一つで、何やら難しい印象ですが、一言でいえば買収前に行う身体検査、会社の監査ですその会社に問題はないか、買ったあとで困らないかを調べるのみならず、その会社は成長してくれるだろうか、我々の会社と一緒になって相乗効果が発揮できるだろうか等も検討します。一つ一つの分野ごとに専門家を雇う場合も多いので、以下で、デューディリジェンスの項目と、それぞれの概要、関連する専門家を記載します。

①  ビジネスデューデリジェンス: 対象会社の事業面の分析をします。その会社の競争環境はどうか、強みは何か、成長性はどうか、代替品の脅威はどの程度か、など、SWOTや3Cや5Fなどフレームワークを使って分析します。買収する会社の事業が分かる場合は自分たちでやりますが、自分たちが分からない事業の場合は、社外の戦略コンサルタントなどを雇います。また、その会社をいくらで買うのが妥当かを判断する上での基礎となる、事業計画を作る(あるいは、売手が提示する事業計画を叩く、批判的に評価する)のもこの項目です。
② ファイナンシャルデューディリジェンス: 対象会社の経理財務面の分析をします。主に財務諸表や社内管理数値(月次PLなど)を見て、数字の変な動きはないか、同業他社と比較して異常値はないか等を探ります。実際の資産が帳簿どおりあるかの実査は、案件が公になる前は通常行いません。これらは、自社の会計財務部門の他、外部の監査法人・税理士法人等が行います。
③ 法務デューディリジェンス: 対象会社の法律面の分析をします。会社が外部と結んでいる契約書や、訴訟関連の書類、会社の約款などを見て、法的な問題はないかを見ます。従業員や役員との雇用契約もここで見ます。これらは、自社の法務総務部門の他、外部の弁護士事務所などが行います。
④ 人事デューディリジェンス: 従業員や役員との雇用契約や、残業代の支払い状況などは法務でも見ますが、人事でも見ます。更に、人事デューディリジェンスでは、買収後の役員報酬の仕組みを考えたり、自社の人事制度との整合性を見たりします。これらは、自社の人事総務部門の他、外部の人事コンサルなどが行います。
⑤ オペレーションデューディリジェンス: 以上の他、その会社の事業活動(オペレーション)全般の項目を見ます。メーカーの場合は、生産工場の現場を実際に訪れたり、工場の周辺環境や土壌汚染がないか調査をしたりします。また、研究開発における特許やノウハウの分析も行います。これらは、自社の対応する部門の他、工場関係では環境コンサル、知財関係は特許事務所などが行います。

以上のように、社内外の専門家が集まって、対象会社を多角的に分析します。そのプロセスを通じて、問題点を洗い出し、買収価格を決め、買収の是非を判断し、はたまた、買ったあとにどう経営していくかを決めていきます。限られた時間の中で、工数もお金もかかるプロセスになりますが、これをおろそかにすると、後でもっと高くつくため、非常に重要なフェーズになります。

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