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#エッセイ

「初心者のための、リアリズム文学としての『源氏物語』」 【文学エッセイ】

「初心者のための、リアリズム文学としての『源氏物語』」 【文学エッセイ】

 《英語で「ファンタジー」と「リアリティ」というふうにしていちおうみんなが区別していることが、いっしょになっている、重なってひとつの現実として語られているというのが、あのころの物語ではないかと私は思います。》

 上記は、1995年に行われた、絵本・児童文学研究センター企画のシンポジウムのなかで、臨床心理学者の河合隼雄さんが語った言葉。

 「あのころ」とは平安時代を示している。平安時代の文学、そ

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【エッセイ】 『感性豊かな日本人は「自然」を知らなかった』

【エッセイ】 『感性豊かな日本人は「自然」を知らなかった』

 昨年の八月、noteにて『源さんと蛍』という掌編を発表した。蛍の放つ光や田舎の夜の「闇」のもつ幻想性に私なりの想いを馳せた作品だ。私は香川県の東側——讃岐の東なので「東讃」とよばれている——の、田畑と緑が繁茂する風景のなかで育った。だから、私にとって、自然の営みに授かる感受は、自分の文学の根幹といってもいいくらいだ。

 まっくら闇のなかに漂う蛍の灯は、日本人の情緒そのもののように儚く、美しい。

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『すぐに役に立つ本は、すぐに役に立たなくなる』 【エッセイ】

『すぐに役に立つ本は、すぐに役に立たなくなる』 【エッセイ】

 すぐに役に立つ本はすぐに役に立たなくなる。

 この金言との出会いは、とある「すぐには役に立たない」性格の本、言い換えるならば、僕の書棚の〝本当の意味で価値のある本〟のなかでのことだ。

 先週月曜日は成人の日だった。およそ120万人いたとされる今年の新成人のうちどれだけの人が、その日授かった激励の言葉をおもおもしく胸に刻んだことだろう。大人になることの決意をあらたにして――。僕自身はといえば、

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