見出し画像

「#艦これが復活するためには」予備役の提督に赤紙を送ろう

「#艦これが復活するためには」というハッシュタグがトレンドに登っていた。私は元提督として、全盛期の盛り上がりを取り戻して欲しいと願う一人である。

新キャラや改二実装やイベントのたびにトレンド入りし、猫に悩まされ、徹甲弾や三式弾を積み忘れ、グラ子が掘れず、キラ付けを怠り、ダメコンチェックに神経をすり減らしながらもコミケのたびに大量に発行される新作同人誌を楽しみにしていた諸兄は多いのではないだろうか。

事実コミケの二次創作の登録数ではFGOに抜かれるまで数年間のトップを走っていた。島風というドスケベコスプレ、鹿島という有明の女王、その他多数のフェチズムを米帝プレイで生み出し続けた一大ムーブメントだった。

当時の盛り上がりはいつしかFGOに移っていき、いまやウマ娘などの盛り上がりコンテンツはありつつも、ソシャゲの群雄割拠時代のなかで、埋もれていってしまったのが現状である。

しかしながら、サービス終了には至らないほどにはプレイヤー数がおり、おそらくはまだ黒字ではある艦これというゲームに関して、このハッシュタグは復活を願う提督たちの魂の叫びに似たものかもしれない。きっとラストダンスで旗艦をぶち抜いた瞬間くらいには叫びたい人もいるんじゃないだろうか。

ということで、1期ラストのレイテ沖を甲クリアする程度にはやり込んでいた元横須賀鎮守府提督として、瑞鶴大好き侍として、どうすれば復活の兆しがあるかどうかを検討してみるというのが今回のnoteの趣旨である。

ソシャゲは緩やかな死を避けられない

ソーシャルゲームはガチャによって莫大な利益をもたらす可能性がある。しかしながら、ゲームとしての寿命は「楽しめる」という観点からすれば実に短いものと思う。

なぜなら、単純作業が多いからである。艦これであれば、デイリーや遠征で資材を集め、集めた資材を装備に投資し、クリア期待値の高い組み合わせを検討して装備させ、あとは全自動である。これを5年、6年と続けていくために、キャラや音響や演出などを工夫しているわけだが、さすがに根本が同じシステムでは飽きが出てくるのはどうしようもない。

これは他のソシャゲにもいえることで、型月の強力なIP資産を持つFGOでも全盛期の売上からは下がっていくのは当たり前である。ディライトワークスの売上が昨年比で酷いことになっているのだが、そりゃ仕方ねぇって話である。

かたや、既存のゲームタイトルと違い、ガチャによってデータに投資してきたユーザーを裏切ることはできず、新規のシステムを入れ直して仕切り直しができないのだ。

まさにイノベーションのジレンマそのままの構造。カメラといえばCANONとNikonだったのに、一眼レフのユーザーを手放せなくてミラーレス化できず、SONYに敗北しているNikonの悲惨さをいつかどこかで語りたい(私はNikonユーザー)

閑話休題、ゼルダの伝説であれば、オープンワールド化して一本道謎解きクエストから転換した。無双シリーズであればキャラ一新で再出発を図っている(合わせて真田丸や先日発表の戦国無双5のようにシナリオ重視への転換姿勢も打ち出せる)。FFもコマンド式からATBになって、FF13あたりでATBを改良し、FF15になってからはアクションとコマンドのハイブリッド式にしてきた。結果的にユーザーにとって新鮮なFFは維持され続けているわけである。

だが、ソシャゲはそれができない。一度配布したアイテムの効果に対する一種の信頼性がガチャを回す、ひいては人権を手に入れるための投資を担保するわけであり、ゲームシステムの根本が変わってしまうとガチャへの信頼が揺らぐ。

あるいは、ゲームシステムを変えても強くてニューゲームの既存ユーザーを残すことによって新規が入りにくい状況を変えられない。

これは、コンシューマーゲームにクリアが存在するのに対して、クリアが存在しないコンテンツの宿命でもある。

ソシャゲで長く生き抜くためには、ゲームとしての楽しさでは苦しい。では、何があれば生きていけるか。私はキャラとストーリーと音楽であると考える。このうち、キャラに関しては数々の二次創作が示す通りユーザー需要の高いものであり、まさに資産といえる。音楽はアイマスやラブライブのようなアイドルゲームではないため、いくつかのキャラソンは出してもメインコンテンツには出来ない。よって、艦これで取り扱うべき問題はストーリーである。

ストーリーの存在しない艦これ

艦これは二次創作誘発のためにか、キャラの説明が大いに省かれる。FGOであればプロフィールをみれば細かい設定が示されているのが対極的で、艦これは艦娘の主観に基づく大雑把な説明のみである。「詳細はwikiを調べてね」「キャラの解釈は任せるよ」という姿勢だ。

タッチボイスなり、ボス撃破時のセリフなりで、何をモチーフにしてどのような展開で作戦が進んでいるのかは理解できるようにしている。いわば読者にヒントを与えているので、キャラとして消費する分には良い設計だと思う。

しかし、直接的に訴えかけるストーリーではないため、キャラ愛でプレイできても、先の展開が気になるという観点ではプレイできない。

FGOの場合、奈須きのこの新作が読めるとか、小さなイベントでも一応のオチはつくようになっていたりとかで、ゲームシステムが変わらなくても、週刊連載の漫画を読むがごとくの”引き”があるのだ。

もちろんゲームシステムに飽きて引退しているマスター諸兄も多いと思うが、FGOアンチではない型月信者なら一生ついていきそうな感じはある。

ストーリーがないことによって、前述のソシャゲの死を先延ばすことができずに、コンテンツとしての力を失っていく状況が起きていると感じている。

キャラはいるがストーリーがない片手落ち状態である。

艦これに残されたもの

前述の「キャラクターコンテンツとしての認知度の高いIP資産」に加えて、ソシャゲ黎明期の大ブームを起こしたことによって得られた、限られた作品にしか持ち得ない資産「艦これを遊んだことのあるユーザー」が残された資産だ。

一度体験しているというのは、それがネガティブなものではない限り、購買行動を誘発できる大きなトリガーである。キャラやシステムといった楽しめる体験に必要なインプット量を大いに低減するからだ。

このハードルを下げるのは容易ではないので、どのようなゲームでもチュートリアルの力の入れようはなかなかのものである。ここが分からないとせっかく登録してくれたユーザーが離脱してしまうからだ。

ゲームではなくても、一度認識のある作品であればリブートで人気を取り戻すこともある。昨今だと「コードギアス」なり、「ひぐらし」が良い例かもしれない。

よって、艦これに残っているのは平たく言えば「キャラ」とすでに引退している「予備役の提督」である。

艦これが復活するためには

現在DMMで展開しているブラウザゲームとしての艦これにユーザー数を取り戻し、かつての盛り上がりを復活させるのは不可能だろう。ソシャゲの構造的な問題として、緩やかな死の先延ばししかできないからだ。

他方、艦これをIPとして盛り上げ直すことには希望があるように感じる。よって、私としては2つの方向性を示したい。

まず、短期的にもできそうな取り組みとしては

【ストーリーモードの追加】

どちらかというとDMMのブラウザゲーム向けの施策である。艦これには「陽炎、抜錨します!」とか「鶴翼の絆」とか「鎮守府目安箱」とかまさにキャラモノとしてストーリーを綴った資産が存在している。が、ゲームの外に転がって、いや、なぜこいつらを生かさないのか・・・。

もちろん、既存のイベント海域とは切り離して、別時空扱いでの展開で問題ない。というかそうしないと、キャラの解釈を楽しむ二次創作好き提督を裏切ることになるのでゾーニングは必須だが、きちんと切り分ければ良いだろう。むしろ、書籍関係まで手を伸ばしている人は限られるので、多くのユーザーにとっては新鮮なはずだ。

艦これはアニメ化していないので、アニメ連動施策みたいなことは難しいかもしれないが・・・。

もう一つは長期的な施策だ。

【艦これキャラを使った全く新しいゲームの開発】

どうにも、大学生のインターンなりビジコンなりでありがちな提案になってしまっているのが自分でも嫌なのだが、予備役の提督を呼び戻すには、新しい展開をする他ないと思っている。

それはスリガオ海峡をアニメ化すればいいって話ではなく、継続的に課金してくれる人たちを取り戻さなければ、コンテンツとしての展開が死んでしまうという話である。ユーザーの体験がまだ残っているうちに動かさなければ、結局すべてを失っていき、10年後には「艦これかぁ、懐かしいよねー、やってたやってたー」みたいな会話がインターネッツ老人会されていることだろう。

2021年3月時点で艦これ公式Twitterアカウントのフォロワー数は約125万人である。FGOが182万人、グラブルが93万人ということで、立派な数字である。

ユニークユーザーがこれだけの数いるとはあまり思えないので、二次創作だったりと穏やかな関係性を持ち続けているユーザーがいると推定される。

艦これが復活する日とは、既存のブラウザゲームは維持しつつ、全く新しいゲーム体験をもたらす新作ゲームを開発し、いまだに艦これと緩やかな関係性を保っている予備役の提督たちを呼び戻す、そんな赤紙が届く日に他ならないのではないだろうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?